しんと静まり返った部屋に、気まずさを感じた豪は、奈美に、この後どうするのか尋ねてみた。
「俺は今日、このまま宿泊するけど、奈美さんはどうする? 帰る? それとも……」
少し間を置いた後、敢えて穏やかな微笑みを向ける。
「…………俺と一緒に過ごす?」
湿り気を帯びた濃茶の髪に触れた。
「えっと…………そ……その……」
彼女は顔を伏せながら、かなり迷っているようだ。
困ったような表情が可愛い。
まだ彼女と一緒に過ごしたくて。
触れ続けたくて。
奈美が一緒にいる、と言ってくれないかと願いながら、豪は彼女の答えを待ち続ける。
黙っている彼女に、彼は、胸の内を明かす事に決めた。
「クンニだけしてさようなら、っていうのも、何かつまらないだろ? 出会いのきっかけは不純だけど、せっかくの縁だし、俺は奈美さんと話をしたいって思ってるから、一緒に過ごしてくれると嬉しい」
奈美がゆっくりと顔を上げ、嬉しそうに顔を綻ばせている。
その笑顔が可愛くて。
今日初めて会ったのに、愛おしさすら感じて、胸の奥が鷲掴みされて。
豪が奈美に、完全に堕ちた瞬間だった。
「豪さんが良ければ……私も…………一緒に過ごしたいです」
(奈美が俺と一緒に過ごしてくれる……!)
彼は嬉しくなって、破顔するのを堪えた。
そのせいで、変な笑い顔になっていたかもしれない。
「…………良かった」
安堵した豪の心の声が、ベッドの上に零れ落ちる。
彼の呟きに首を傾げて、どうかしましたか? と言う奈美の顔が、やはり可愛い。
(さっきから、アホみたいに可愛いって言葉しか出てこないじゃないか、俺……)
照れ隠しするように、豪は彼女にシャワーを浴びてくるように促し、小さな背中を見送った。
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