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奈美がバスルームから出ると、豪はベッドの上で、ヘッドレストに寄りかかりながらスマホを操作している。
ガウンを羽織った彼女に気付き、顔を向けると、俺の隣においで、と言うように、隣の枕をポンポンと軽く叩いた。
「お邪魔します……」
彼女は、おずおずとベッドに入り、彼の隣に並ぶ。
ヘッドレストにスマホを置いた豪に、艶やかな眼差しを送られた。
「身体、暖まったか?」
「はい」
再び訪れる静寂。
こんな時、気の利いた話ができない自分を、歯がゆいと奈美は思う。
「で、奈美さん。さっそくだけど、何でクンニだけの関係を望んだの? ああいうSNSって、大概求めるのはセフレが相場だと思うんだけど」
唐突に質問されて、自分の性に関する考えを、正直に言おうかどうか迷ってしまい、彼女は口を閉ざしたままになる。
「まさか奈美さん、処女ではないだろ?」
俯きながら頷いた彼女。
何だか悪い事をして、咎められている気分になってしまう。
「あ……いや、責めてるような言い方になってしまったな。すまなかった。話したくなければ、無理に話さなくていい」
豪と過ごした事で、この人なら、自分の性に関する考えを理解してくれるかもしれない、と、心が動く自分がいる。
それとは裏腹に、話した事で豪に嫌われ、今日限りの関係になるかもしれない、と考える奈美もいた。
だったら、いっその事、話してしまおう。
簡単に終わるのなら、その程度の縁だから。
心を落ち着かせようと、大きなため息をつくが、心なしか震えている。
奈美は勇気を出して、誰にも言えなかった自身の性について、ポツリ、ポツリと彼に話し始めた。
「実は私、セックスでイッた事がないんです。過去に付き合った彼が一人だけ、というのもあると思うけど……」
何に驚いたのか、豪は微かに瞠目した。
「それに元彼は、クンニするのが苦手だったようで、一度もされた事がないんです。だから、彼とセックスしても、満たされるのは彼だけで、私が満たされる事はありませんでした」
「…………」
「満たされない疼きを、私は自慰行為で紛らわせてました。最初は、ただ陰核に触っているだけで満足してたけど……」
豪は、黙ったまま、真剣な表情で奈美の話を聞いてくれている。
ただ、次の言葉に、彼はドン引きしないだろうか。
奈美は不安を抱えながら、俯いたまま、途切れとぎれに言葉を置いていった。