テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
小話④ 告白のその後
side 🤍
向井先輩と、最近一緒に働く機会が増えた阿部さんと3人で飲みに行って、色んな話をした。めめも誘ったけど、先約があるからと走って先に帰ってしまった。
「めめ先約あったん残念やな〜」
「まぁ、目黒も久しぶりに日本に帰って来たんだし、色々予定詰めてるんでしょ」
「また誘いましょ!さ、ビール来ましたよ〜」
2人の仕事に対する情熱とか、考え方とかとにかく色んな話をして。
プライベートの話にもなった。酒を飲んでいたこともあり、つい根掘り葉掘り聞いてしまった。
そこで分かったことがある。
さく美さんは魔性だ。
ナチュラルに人に恋心を持たせてしまう。
本人にその気がなくても相手がその気になってしまうんだろう。
当の本人は俺たちの気持ちなんて知らずに、めめに真剣に恋をしている。
向井先輩や阿部さんの雰囲気からして、さく美さんのめめへの気持ちは気付いている様子だ。
向井先輩は1度玉砕してるものの、出会いの場ではさく美さんみたいな人を自然と探してしまうらしい。
俺も俺で、めめとさく美さんがお互い好き合ってることを知った時に胸がチクっとしたから、多少なりとも”そういう感情”を持っていたんだろう。
流石に、めめが怖いからアプローチなんて出来ないけど。
そして何よりも、阿部さんのさく美さんへの気持ちが大き過ぎて重過ぎて、少し心配になってしまった。
「そこまで好きなら、早いとこ告白したったら良かったやないですか」
「・・・出来るわけないだろ。入社したときから常に隣に居るのが当たり前で、その関係性が崩れるかもって思うと、俺には出来ない」
「もし、さく美さんが阿部さんを好きだったら恋人になれるかもしれないのに?」
阿部さんは感情を押し殺すように目を瞑って、ゆっくりと目を開いた。
「その可能性はないかなぁ・・・佐久間は俺にそういう感情は持ってない」
大きく溜め息をつきながら、諦めた様子でそう言った。
「だから、俺はこれからも佐久間の味方でそばに居たいなって思ってる」
ここまでの気持ちに持っていくの大変だったんだからな!まだ好きだけどな!と一気にビールを煽って、勢いよくジョッキを置いた。
「う”ぅ〜あべじゃ”ん”〜〜!!!」
「なんだよ、向井あつっくるしい!抱きつくなって!!」
「あんたは漢や〜〜」
阿部さんのさく美さんへの気持ちを聞いて号泣する向井先輩と、抱きつかれるのを阻止しようと抵抗する阿部さん。
もし、阿部さんがもっと早くさく美さんに告白していたら?
もし、向井先輩がもっと真剣に時間をかけてアプローチしていたら?
もし、俺がもっと早く自分の気持ちに気付いていたら?
・・・もし、目黒 蓮という男が現れなかったら?
ROY

1,392
みむら
2,434
16,706
たらればだけど、過去に別のアクションを起こしていればこの中の誰かの恋心は報われたのだろうか。
いや、そんなことは考えるだけ野暮だ。
こんなの、めめとさく美さんに失礼だ。
「3人とも失恋したってことで!!傷の舐め合いしましょー!!」
「おい、ラウール。俺は失恋したんじゃなくて自ら身を引いたんだよ!向井と一緒にするな!」
「ってかちょい待ち!3人ともってどういうことやねん!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ2人。
俺はビールを3人分追加注文して、乾杯しなおした。
-–
あの後、まぁまぁ飲んで楽しい気分で帰宅し、風呂入るのめんどいな〜なんて思いながら水を一杯飲んでいると軽快な音が聞こえた。
スマホを見ると、着信:目黒 の文字。
なんの連絡もなく電話をしてくるなんて珍しい。
「・・・はい」
『こんな時間にごめん』
「いーよ、何かあったんでしょ?」
しばしの沈黙。電話の向こうで呼吸をする音だけが聞こえる。
『おれさ、』
「・・・うん」
『佐久間さんに、告白した』
え?
早くない?
「え、早くない?」
あ、やべ。心の声がそのまま出ちゃった。
電話の向こうで、だよな・・・という声が聞こえる。
いや、まぁそりゃあ側から見たら佐久間さん、めちゃくちゃ分かりやすいよ!?
めめだって長年の片想い拗らせてたくらいだから、別にどちらかが告白してもおかしくないよ!?
俺からしたらね!?
でもさ、表向き上は”カナダから一時帰国したエース目黒に一目惚れした佐久間”しか情報もないし、さく美さんもまさかめめが自分にそんな重すぎる感情を持ってるなんて思ってもみないだろう。
「もう少し時間かけるって言ってなかったっけ?」
『言ったけど、焦って』
「焦ってって・・・」
『佐久間さんが阿部さんに取られるんじゃないかって・・・思って』
「・・・は?どういうこと?」
めめが言うには、さく美さんからの会話の節々に阿部さんの話が出てくるのが気になった。同期なのは知ってるけど、あまりにも心の距離感が近いのが気になって敢えて話題にしてみたら、阿部さんが自分の知らないところでオーバーワークになっていないか気にしていた。とのこと。
「まぁ・・・仲良いもんね、最初付き合ってるのかな?って思ったもん」
『明確に大切な人とも言ってたからさ・・・流石に焦るだろ』
大きな溜め息をつくめめ。好きな人が自分以外の男のことを矢鱈と気にしていたら、そりゃ焦るか・・・
それにしても早すぎるけどね。
「返事は・・・?」
『日曜に会うから、日曜に欲しいって言った。』
ちゃっかりデートの約束取り付けてるんだ。流石、弊社のエース。
「健闘を祈るよ」
『おう』
『ラウール、もし俺が振られたら慰めてくれ』
あなたが振られる可能性1ミリもないけどね!腹立つけど!
「分かったよ」
言わなかった俺偉くない?
『こんな夜遅くに申し訳なかった。ちょっと吐き出したかった』
「いいよー、俺くらいはめめの味方するって言ったし」
『ありがとう』
そう言ってめめからの通話が途切れた。
「はぁ〜〜、告白しちゃったかぁ〜」
ボフッとベッドに仰向けで寝転がる。
めめがどんな告白をしたのかは知らないけど、さく美さんの返事はYESで決まりだろう。
めめに恋するさく美さん、もうちょっと見たかったなぁ〜。
めめが事務所に入ってくると、白い肌が赤くなってさ、でっかい目うるうるさせて、口をきゅって結んで、めちゃくちゃ可愛かったんだよね。
そういえば、岩本社長も深澤さんも「最近佐久間がお菓子のつまみ食いしに来ないけどどうした」なんて言ってたっけ?
知らない間に仲を深めてたんだろうな、きっと。
「なんか自分の兄貴と好きな人がくっつく感じで複雑」
好きな2人が幸せになるなら、これ以上嬉しいことはない。
だからこそ、少しだけ寂しい気持ちが残った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!