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昔から人と絡むのが苦手だったクロノアさんは、完全に人との距離を置いた。
1人で行動できるタイプだったから苦になるものは特になかったけれど、辛かった思い出はたくさんあるんだとか。
どれだけ人に優しくしようが、嫌な目でこちらを見て避けてくる。
(………何が違うの? )
いつも思うことは、それだった。
人との距離を置いただけで、社会の世界はこうなってしまうのだ。
だからこそ、そう思う。みんなと何が違うんだと。
怪我人がいれば積極的に声をかけて絆創膏もあげたし、重いものを運んでいたら手伝ってもあげた。寒そうにしている子がいれば先生に窓を閉めてくださいと挙手もした。
それでも、いくら親切にしようがクロノアさんに話しかけることはなかった。
(永遠に、一人ぼっちなのかな。)
そのまま大きくなって、最初に出会ったのは僕の学校に転校生として来たトラゾーさんなんだとか________。
…………………………
「…って感じ!トラゾーとクロノアさんの会った後の話は知らないけどね…。」
「…………。」
話を聞いて、罪悪感しか込み上がってこなかった。だって、話を聞く限りクロノアさんの友達はぺいんとさんとトラゾーさんのみだ。
みんなから突き放された過去があるって言うのに、僕の勝手な偏見でクロノアさんを突き放した。
(何しちゃってんだよ、僕…!)
拳を、握りしめた。
そんな僕を見たぺいんとさんは笑顔で僕に声をかけた。
「クロノアさんの優しさはすごいから、事情を説明したら分かってくれるよ!」
「………友達に、なれますかね?」
「さぁ?」
「え”っ…」
たくさん励ましてくれたくせに、最後の最後に他人事だとでも言わんばかりの返事をした。いや、まぁ僕とぺいんとさんの関係は他人かもしれないけれど…。
「俺にはわからないよ。俺は、クロノアさんじゃないから。」
「……。」
それもそうだ、と納得してしまった。怖いくらいの説得力だと思うほどに。
「…僕、伝えてきます。今の気持ちを!」
「お〜、がんばれ〜!」
笑顔でそう言うぺいんとさんを背にして僕は屋上の扉まで走ろうとするが、一歩踏み出したところで僕はぺいんとさんの方向に振り返る。
「……僕、貴方と友達になりたいです!!」
「!!」
今の気持ちを、まずはぺいんとさんに伝えた。相手はびっくりした顔をしていたけれど、次には穏やかな顔つきになった。
「会った時から、友達!!」
ぺいんとさんはそう言って、僕を見送ってくれた。
返事を聞いた僕は、胸がドキドキして、ワクワクしていた。
……………
中学と違って、珍しく屋上がある高校にみんなはいろんな場所でいろんな友達とお弁当を食べている。
そんな中、俺_____トラゾーは教室に1人でお弁当を食べていた。ちなみにクロノアさんは部活の部長会で違う教室だ。
いや、部長会なんかあっても俺とは食ってくれないかもしれないけど。
(……冷たい。)
昼にはとっくのとうに冷え切ったご飯を食べて、そう思った。でも、全部を胃の中に詰め込んでから俺は校内を把握するために学校中を歩き回った。
ふと、廊下を歩いていると屋上の階段から俺の後ろまで走り抜ける紫髪の男子生徒が1人走り抜けた。
(……やけに笑顔だったな。)
走り抜けた彼の、高揚感のあふれる笑顔を見てそう思った。
でも、何だか違う何かを突きつけられている気がして、心がムズムズして、仕方がなかった。
ふと、胸を押さえる。
「…っ、はぁ。」
上がる息に、俺は壁に手をついて整えていた。バクバク高鳴る心臓と、熱くなる体と、クラクラする視界で、俺は意識を失った_____。
…………………………
「クロノアさんっ!!」
部長会の集まりのある部屋の扉を勢いよく開け、クロノアさんの名前を呼ぶと部長会室にはクロノアさんしかいなかった。
「……しにがみくんじゃん。中、入りなよ。」
「…………お、お邪魔…します。」
最初に会った時よりも声のトーンが低いクロノアさんにそう言われ、僕は部長会室に足を踏み出す。
そうしてクロノアさんの隣に座り、僕はクロノアさんの目を見る。
「…‥ど、どうしたの?」
困惑しているクロノアさんに、僕は1つ深呼吸をして姿勢を正してクロノアさんの方を見た。
「クロノアさん…ごめんなさいっ!!」
大声を上げた僕に、クロノアさんはびっくりしていた。でも、次の瞬間には悲しい笑顔になって、クロノアさんも僕と同じく1つ深呼吸をしてこちらを向いた。
「………俺も、謝りたかった。…ごめん。」
なぜクロノアさんが謝らなきゃいけないのかわからなくて、僕は混乱していると、クロノアさんが話し始めた。
「…俺、しにがみくんのこと______」