勇者軍の拠点都市アトスは、質量ともに圧倒するわがモーゼフ魔王国軍が猛攻を開始してたった三日であっけなく陥落した。
占領した城の内外で、
「魔王陛下万歳!」「女王陛下万歳!」
の声が轟いている。
「マコティー、現在の情勢は?」
マコティーは有能かつ忠誠心の強い部下で、モーゼフ魔王国の絶対君主である余の右腕的存在。
「アトスにもう敵兵はいません。残党狩りも終え、勇者千人を捕虜としています。捕虜の処遇はいかがされますか?」
「全員吊るせ」
「承知しました」
「魔王陛下!」
マコティーの隣に立っていた占領地統治責任者の男が声をかけてきた。
「なんだ?」
「処刑するのはいいですが、斬首刑ではいけませんか?」
「絞首刑に問題があるのか?」
「千人分の絞首台を用意するのに手間暇がかかりすぎます」
「分かった。おまえには頼まない」
ホッとしたような表情を見せた占領地統治責任者。
「マコティー、おまえに任せる。千一台の絞首台を用意し七日以内し刑を執行せよ」
「一台増えたようですが」
「おまえの隣にいる無能な統治責任者も一緒に吊るせ」
「承知しました」
「ひぃい!」
マコティーは、悲鳴を上げながら逃げようとした男を難なく捕らえ、縄でぐるぐる巻きにした。やはりマコティーは有能だ。
「皆のもの、よく聞け。敵より恐ろしいものは無能な部下だという。余の役に立たぬ人材だと自覚するなら今すぐ去れ。去る者の命までは取らぬ」
城外では魔王陛下万歳、女王陛下万歳の合唱が続いているが、城内はひっそりと静まり返り、それ以降言葉を発する者は一人もいなかった――
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