異世界に転生して一週間が過ぎた。
好き好んで転生したわけではない。
敵国のディオン王国の王と第一王子は捕らえ、すでに処刑した。首都を逃れ標高五千メートル級の山岳地帯に逃れ、ゲリラ戦を展開する第二王子さえ始末すれば千年の長きに及んだ魔族と人間の抗争も終結できるはずだった。
余が先頭に立って第二王子掃討作戦を開始した。辺境山岳地帯のゲリラ拠点を個別撃破して作戦も順調に推移した。余に油断があったのは否定できない。
だがまさか味方に裏切られて窮地に陥るとは夢にも思わなかった。ただ余は最強魔王ネロンパトラ・モーゼフ。モーゼフ魔王国の絶対君主にして最強の魔力の使い手。ただでは死なぬ。死ぬ直前に転生魔法を発動し、異世界に転生した。どんな形でも命さえあれば、裏切り者に復讐する機会はあるだろう。
問題は異世界に魔族が存在せず、人間に転生するしかなかったこと。人間に転生したといっても、転生前に持っていた魔力はそのまま引き継がれている。余の人間嫌いさえ表に出さず封じられればよいが、あまり自信はない。
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