テラーノベル
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名前を呼ばれただけで胸が熱くなるとか、その人以外見えなくなるとか
ずっとそばに居てくれたらいいのになんて思ってしまったり、もうこれは恋なんじゃないかと
自分でそう思ったのだから、好きを直感で感じてしまったのだから、これは恋以外のなにものでもない。
そんなことを考えながら、先生もうそろそろ来るかな?と気分は舞い上がっていた。
(私…また齋藤先生のことばっか考えてる…はあ、好きだなぁ……)
そのときだった。
「ネネ」
ガラガラと扉の開く音がした後に、突然名前を呼ばれて、顔を上げるとそこには齋藤先生がいた。
「あっ先生…!」
「ごめんごめん待たせちゃって。」
いつものようにスーツをピシッと決めた先生は私に近づくなり私の席の机に手をかけ
「それで、問2の部分でわからないところがあるんだよな?」と一気に距離を縮ませて訊いてきた。
「あ、はい……ここなんですけど……」
私はプリントを先生に見せようと体を少し動かしたときだった、机の端に置いていた消しゴムが床にぽとっと落ちてしまった。
「あ……っ」
慌てて席から立ち上がり拾おうとしゃがみ込むと、私が手を伸ばすと私よりも大きな手が伸びてきて先に消しゴムを拾い上げた。
そしてそのまま先生は私に手渡ししてくる
「ほらよ」
「あ、ありがとうございます……」
取ってもらった消しゴムを掴むと、不意に指が触れ合う。
(先生の手に触れちゃった……!)
先生が触れた手が、熱を帯びたかのように熱い。
浮かれてしまう自分を必死に抑えて、平常心平常心!と言い聞かせて
気を取り直して机に向かって、プリントを穴が空くほど見つめながら教えて欲しい場所に指を指すと、
先生は「ああ、ここか」と言いながら丁寧に解き方を教えてくれた。
そして一通り教えて貰ってから、私はプリントを鞄に仕舞い込むと椅子を引いて立ち上がった。
「今日は、ありがとうございました…!」
ぺこりと頭を下げてお礼を言う。
すると先生も立ち上がって私の頭を優しく撫でてきた。
「……っ!」
(せ、先生……!?)
突然のことに頭が真っ白になる。
齋藤先生はそのまま何も言わずただ微笑みながら私を見つめていた。
そしてしばらく経ってから口を開いた。
「…ネネは勉強熱心でいい子だな」
そう言ってまた私の頭を撫でてくる。
「あ、あの……っ」
私は思わず声を荒らげてしまった。
先生の手が触れただけでこんなにドキドキしてしまうのに、頭なんて撫でられたらもう頭がパンクしてしまいそうになるから。
先生はそんな私を見て少し驚いたような顔をしていたけどすぐにまた優しく微笑んで
「おっと、すまんすまん!兄貴の娘にするからついクセが抜けくてな…」
苦笑いしながらそう謝ってきた。
むしろもっとして欲しいくらいだし…と思うも、兄貴の娘にするクセで、という言葉が頭に入ってきた瞬間、先生自身は奥さんとかいるのかが気になってしまい仕方がなかった。
「い、いえ!あ…ご兄弟の…?」
「ああ、今兄貴んとこ1歳の娘がいるんだよ。」
「そ、そうなんですか……あの……齋藤先生はご結婚とかされてないんですか?」
聞いてしまった。
でも聞かずにはいられなかった。
すると先生は少し照れくさそうに頭を搔いた後に口を開いた。
「……そうだなあ、今は仕事に集中したいしな。マッチングアプリとかもやる気ないし」
「……ふふっ、仕事人間なんですね」
(じゃあ奥さんとかもいないんだ……!)
私は思わずにやけてしまう。
そしてそんな私を見た先生は
「まあ、俺ってイケメンとは程遠いもんなぁ…」
なんて返してくるから、慌てて訂正する。
「いや、そういう意味じゃなくて!今のは言葉の綾、っていうか……!先生は…か、かっこいいです、よ?」
そう言うと先生は少し驚いた顔をした後に、ははっと笑い出した。「いやあ、お世辞でも嬉しいよ」
「お……お世辞なんかじゃないです……!」
私は思わず大きな声を出してしまった。
すると先生はまた笑って「ありがとうな」と言ってくれた。
その笑顔にドキッとすると同時に胸の奥がきゅーっと締め付けられるような感覚に陥る。
(ああもう、心臓うるさい……!)
先生といると心臓がいくつあっても足りない気がするほどドキドキさせられてしまうから本当に困る。
「……あ、あの!私そろそろ帰らないとなので……っ」
私はこれ以上一緒にいたらどうにかなってしまいそうだったから、帰ることにした。
すると先生は「ああ、気をつけて帰れよ」と言って手を振ってくれた。
(もう……娘にするクセで頭ポンポンするとか…先生ってばすぐそうやって私のこと子供扱いするんだから……!)
でもそんな扱いでも、先生と話せるなら悪くないと思ってしまう自分がいるのも事実だった。
私は齋藤先生にペコリと頭を下げてから教室を出て廊下を歩く。
そして昇降口に辿り着くと下駄箱を開けて靴を取り出し、つま先から靴に足を入れて、踵まで押し込む。
──校門を後にし帰路につくと、最寄り駅の自動ドアを潜って改札に近づきながら、定期をスカートのポケットから取り出して改札を通る。
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