「あれ…?無い…何処にも無い…」
渡辺が何かを探している…
「おかしいなぁ…確かに今朝はちゃんとあったのに…」
鞄の中を漁ってみても、今日着ていた服を調べてみても【ソレ】は見つからない…
「?」
その時、スマホに着信があり…一旦手を止め出てみると
「もしもし、翔太?」
電話の相手は岩本だった
「何、どうしたの?」
おそらく、ちゃんと家に帰ってきているかの確認だと…気づいていたが
気づかないふりをして、話を進める…
「いや…ちょっとね…。そういえば翔太…今、家?もう帰って来たの?」
「家だけど」
【やっぱりか…】と思いながら、自分が信用されていない気がして苛ついた
「そういえばさ…照ん家に俺のピアス落ちてなかった?」
「ピアス?翔太が良く着けてる、あれ?」
「そうそう、今日着けて行ったはずなんだけど…気づいたら片方だけ無かったんだよね…」
「多分見て無いと思うけど…一回ちゃんと探してみるよ」
「悪い、よろしく…」
「見つけたら、明日一緒の仕事だし持って行くね」
「了解」
翔太が片方だけ無くしたピアスは、最近の彼のお気に入りだった…
「一応目黒にも連絡しとくか…」
LINEを打って返事を待つと、案外早く既読がついた
【探してみるね】の返答に【悪いけど、よろしく】と打ち込み、ため息を吐く…
一体何処に落としたのか…渡辺はもう一度、鞄の中を探し始めた
◇◆◇◆
本日は、今月最後の全員一緒での仕事の日
明日からは個人仕事をメインで行う為、ピアスの受け渡しには今日が最適なのだが…
「ごめん、無かった…」
岩本に謝られ、照が悪い訳じゃ無いと…宥めていると
「翔太君、ピアスあったよ!」
目黒が嬉しそうに声を掛けて来た
「マジで!良かった〜目黒ん家にあったんだ〜」
「ほら、これでしょ?」
「そう、それ!昨日、家に帰ってからずっと探してたんだ〜」
それを受け取り、耳に着ける
「良かった〜!で、何処にあったの?」
「昨日俺が着てた服の、胸ポケット。昨日、きっと抱き締めた時に外れて入ったんだと思う…」
「あぁ〜あの時か〜」
「お気に入りなんでしょ?見つかって良かったね」
「本当、助かったよ…ありがとう」
探していた物が見つかって、嬉しそうな渡辺と…そんな渡辺を見て嬉しそうな目黒
和やかな雰囲気が2人を包み、今日も平和に過ぎて行くと思われた…
「………」
しかし、渡辺の背後には不機嫌オーラを放つ岩本の姿
「翔太、ちょっと!」
仕事が始まり、休憩になると…有無を言わさず、渡辺を外に連れ出した
「痛いって!」
腕を掴まれ、人気の無い場所に連れて来られ…渡辺が岩本の手を跳ね除ける
「あれ、どうゆう事なの?」
「あれ?」
渡辺は岩本の言っている意味がわからず、聞き返す
「今朝、目黒が言ってたでしょ【抱き締めた】って…海鮮食べに行って、何で翔太が目黒に抱き締められる必要があるの?」
「………」
その事か…と渡辺は面倒くさそうな顔をする
「ねぇ、何の為?告白でもされた?」
畳み掛けてくる岩本に
「それは、俺が怪我をして…」
「怪我?何、翔太怪我したの?一体何処?」
今度は心配そうに腕を伸ばして来た為、それを躱し向き直る
「大丈夫、ちょっとだけだから…心配ないよ」
「翔太…」
触れさせてもらえないもどかしさに、苛立ちが増す
「だから、大丈夫だって」
「………」
「ねぇ照…悪いんだけど、俺達一度離れようか?このままだと2人共、駄目になると思う…」
渡辺の提案に岩本がショックを受ける
「それって、翔太は俺と別れたいって事?」
「分からない…」
「分からないって何?俺は、そんなの絶対嫌だから!」
「!」
聞き入れてくれない岩本と、辛そうな渡辺…
「悪いけど…しばらく1人にして欲しい」
そう言い残して、渡辺は岩本の前から去って行った
コメント
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え、急に?なんでなんで?😳