昨日は何とか仕事をこなし、そのまま1人で帰宅した
次の日がオフだった渡辺は…しばらく1人になりたかった為、家に着いてすぐにスマホの電源を落とし…そのまま泥の様に眠ってしまった
「?」
部屋のチャイムが鳴る
岩本かと、緊張しながらモニターを見ると…そこに映っていたのは深澤だった
◇◆◇◆
「お邪魔しま〜す」
「何、タクシーで来たの?連絡くれたら迎えに行ったのに…」
「連絡なら何回かしたよ。既読全く付かなかったけど…」
そう言われて、ハッと気づく…スマホの電源を昨夜から落としていたという事を…
「ごめん、スマホの充電切れちゃってたみたいでさ…」
適当に誤魔化し、苦笑いする
とりあえず飲み物でも…と冷蔵庫を開けるが、昨日は買い物に行かずに真っ直ぐ家に直帰した為…中にあるのはコーヒーと水
「………」
どっちが良いか深澤に聞くと、すぐに帰るから気にし無くて良いと笑われた
◇◆◇◆
「それで?話って何?」
そこまで言って、ふと思い出す…彼が、岩本の相談役の様な存在だったという事実
「もしかして、照の事?」
隠しても、しょうがないと、そのものズバリ聞いてみた…
「そう」
深澤の方も、隠すつもりは無いらしく…それを素直に認めて頷いた
「何の話?」
急に漂う不穏な空気…
「照から聞いた…昨日の事…」
「………」
「本当に照と、別れるつもりなの?」
「分からない…」
「もしかして、冷却期間みたいな感じなのかな?」
先の事は分からない…
でも、お互い自分を見つめ直し…相手の気持ちを考える
2人には今、その為の時間が必要だと思った
「翔太には翔太なりの考えがあると思うけど…照があんな風になったのにも、ちゃんと理由があると思うんだ」
庇う様な口振から、深澤は岩本の隠している事情を知っている様な気がした
恋人であるはずの自分が知らない事を、深澤は何か知っている…
何度聞いても教えてくれなかった、岩本の胸の内
以前から、岩本の彼に対する信頼感には…メンバー以上の何かがある気がしていて 気になっていた…
「ねぇ、ふっか…照の事、何か知ってる?」
「何かって?」
「最近、何か様子がおかしくて…すぐ嫉妬するし、束縛するし…」
「それって、愛されてるって事じゃない?」
「信用されてないって事じゃ無くて?」
お互いに、探る様なやり取りが続く…
自分には隠している何かを、深澤には伝えているという事実と…
常に岩本を庇う様な深澤の言動に、渡辺は少々苛立ちを覚える
短気で面倒くさい俺なんかより【元恋人】の深澤の方が、岩本に合っている気さえしてきてしまう…
『もしかして…邪魔なのは俺の方?』
心の中が、ぐちゃぐちゃになり…早く自分の前から消えて欲しいと本気で思う…
「だったらさ…」
「?」
「照の事、そんなに分かってるなら…ふっかさんが、照と付き合えば良いんじゃ無いの?」
これが嫉妬なのかは分からない…
2人が信頼し合っている…その関係に、何故だか今日は凄く苛立ちを覚えた…
「………」
深澤の表情が曇り、言葉が途切れて沈黙が続く…
「俺も、出来る事ならそうしたかった…」
先程までの穏やかな表情とは全く違う、冷ややかな顔…
鋭い目付きに、息が止まる
「悪いけど、今日はもう帰らせてもらう」
深澤は、渡辺の了解も得ずに立ち上がり玄関に向かう
「………」
そして、そのまま2人は一言も交わさず深澤は部屋を後にした
コメント
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「愛されてる」と羨ましく見えるふっかさんの気持ちと、「信用されてない」と傷つくしょぴの気持ちの違いが鮮やかでため息が出ます。
こじれてく!それでもこういうの大好きなのでハフハフします😆