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──「保護」か、「抹消」か。
その言葉を最後に、研究機関の男は姿を消した。
部屋の空気が異様なほど重く、冷えていた。
ミンジュはまだその言葉が耳から離れない。
「私たちが、“対象”として見られてる」
「……ヌナ」
ジョングクが彼女の手をとった。
「もう、守るとかの次元じゃない。
“共に在る”ために、俺たちは闘うしかないんだ」
⸻
翌日、ジミンは極秘裏にナムジュンとテヒョンを呼び出していた。
「……Project Rein。奴らはバースの階級を“生物兵器”として見てる。
特に、希少バースのつがいは“研究対象”としてマークされる」
ナムジュンは眉をひそめ、テヒョンは無言で拳を握った。
「ジョングガとミンジュがこのままじゃ、“どこか”に連れていかれる。──消されるかもしれない」
「俺らが黙ってるわけないだろ」
と、テヒョンが低く呟く。
「仲間を、つがいを、そんな理由で失うくらいなら──俺たちが動く」
⸻
その夜、ジョングクはスタジオにミンジュを呼び寄せた。
無音の部屋。天井のライトだけが白く照らしていた。
「……ヌナ」
彼が差し出したのは、一枚のパスポートと小さなUSB。
「もし何かあったら……これを持って、ここを出て」
「グガ……!」
「でも、俺は逃げない。
ヌナが“俺と一緒に残る”って決めてくれるなら、俺は……ここで全部、終わらせる」
ミンジュの目が潤む。
「逃げるつもりなんかないよ。……だって、私の“大切な人”はここにいる」
⸻
一方その頃。
郊外の古い研究施設の一角で、ユリは静かに装備を身に着けていた。
「彼女は“ただのマネージャー”だったのに。
なんでグクは、あんな女に……」
監視カメラに映るミンジュの姿を見て、ユリはぎり、と奥歯を噛む。
──ユリは、“Project Rein”の協力者となる代わりに、
“つがいの排除権限”を一時的に与えられていた。
「“対象の精神・身体機能に影響を及ぼすなら、排除も容認”──だっけ」
その手に握られた、一本の注射器。
それは、SクラスSubを一時的に昏睡させる神経抑制剤だった。
⸻
三日後。現場は仕組まれていた。
BTSのスタジオ収録。控え室。わずか15分の“休憩”。
「ヌナ、ちょっとだけ俺、機材チェックしてくるね」
「うん、いってらっしゃい」
ジョングクが出ていった直後──
扉が静かに開く。
「……久しぶり」
ユリだった。
ミンジュの表情が凍る。
「……なんで、あんたがここに」
「ちゃんと話しに来たの。最後の、ね」
彼女の手には、見慣れない注射器。
「貴女さえいなければ──」
「……まさか」
ミンジュが立ち上がったその瞬間、
「そこまでだ」
低く、鋭い声。
現れたのは──ジミンだった。
彼の目は怒りと悲しみに揺れていた。
「ユリ……俺は、君がここまで堕ちる人間だとは思ってなかった」
「ジミンさん……っ」
「ジョングギの“つがい”を壊すことは、グクを壊すってことだ。
そして、ジョングギを壊すってことは──俺たちの絆を壊すことなんだ」
ユリの手から注射器が滑り落ちた。
「やめて……そんな目で、見ないでよ……」
彼女の体が崩れ落ちるように床に膝をついた。
ジミンは静かに一歩前へ。
「君は、ジョングギの隣に立てなかった。それは、バースのせいじゃない。
“心の在り方”の差だ」
⸻
数時間後。ユリは拘束され、機関からの強制協力契約も破棄された。
だが──事態はそこで終わらなかった。
Project Reinは、次なる一手として、
ジョングクの強制拘束命令を正式に発令したのだ。
「SS-Class Dom / 対象:Jungkook
リスクレベル上昇のため、収容対象に指定する」
つがいを守るため、つがいが引き裂かれる──
そんな矛盾が、ついに動き出す。