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静かなる獣、目覚めの音

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静かなる獣、目覚めの音

17 - 第十六章:檻の中の狼、解かれた鎖

2025年07月22日

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──SSクラスDom、ジョングク。彼に対し発令されたのは「強制拘束命令」。


それは国家および国際機関における、最上位クラスDomに対する「生存制限措置」。


つがいとの分離、バース抑制剤の投与、身体拘束──

そして、将来的な“研究用管理対象”としての隔離。


「……ふざけんな」


ジンが壁を叩いた。


「人をモノ扱いして、何が“安全のため”だ。

誰がこんな命令に従うと思ってんだよ」


ホソクも珍しく静かに怒りを滲ませる。


「しかも、“つがいとの同意なし”で発令? 聞いたことないですよ」


ナムジュンが資料を見ながら呟いた。


「これは……明らかに狙い撃ちですよこれ。

“つがいそのものを壊そうとしてる”」


テヒョンの声が低く響く。


「……つまり、“次”はミンジュだってことだ」



数日後。ミンジュはひとり、機関から届いた“拘束命令書”の写しを見つめていた。


《SS-Class Dom / 対象:Jeon Jungkook

拘束理由:バース反応不安定による暴走リスク。

つがいの影響下における理性喪失の可能性》


「──冗談じゃない」


思わず声が出た。


彼は、誰よりも冷静で、誰よりも繊細だった。


ミンジュが震えた日も、彼は決して手を出さず、ただ温かく包んでくれた。


「それを……“暴走リスク”って言うの?」


彼女は立ち上がる。


「私、行く。あの機関に、自分の意思で会いに行く」


「ミンジュ……!」


ジミンが止めようとする。


だがミンジュの目は、まっすぐだった。


「私は、もう“守られるだけ”じゃない。

“つがい”として──私の言葉で、彼を守る」



その日、彼女はProject Reinの施設へ足を踏み入れた。


「おひさしぶりですね、キム・ミンジュさん」


ハンリョルが現れた。


「彼の拘束は、あなたの安全のためでもある。

SSクラスの本能が暴れた時、SクラスのSubでは制御ができない」


「私は……制御するために、つがいになったんじゃありません」


彼女は静かに、でもはっきりと告げた。


「グガは“檻”に閉じ込められるために生まれてきたんじゃない。

彼は“守るために”生きてる。私を、仲間を、自分の本能さえも」


「あなたは……」


ハンリョルが言葉を失う。


そのとき、施設の非常ベルが鳴り響いた。


──爆発音。

──非常灯。

──暗転。


そして──


「……ヌナ、迎えに来たよ」


背後の影から現れたのは、

血の匂いを纏いながらも、穏やかな目をしたジョングクだった。


「誰が俺を檻に閉じ込めるって?」



施設はBTSメンバーと反Project Reinの内部協力者によって、完全に攪乱されていた。


ナムジュンとユンギがセキュリティを落とし、

テヒョンとジンが車を回し、ホソクが監視ルームを制圧する。


ジミンは最後までミンジュの背後を守りながら、言った。


「──ミンジュ。もう、こっちの後ろを見なくていいよ。

……“君の未来”は、グガと一緒に、前だけを見て」


ミンジュは泣きそうな顔で笑った。


「ありがとう、ジミナ」



ジョングクの手が、ミンジュの手を握った。


共鳴音が走る。

心と心の奥、DNAレベルで共鳴する感覚。


「ヌナが俺のものになってくれて、……本当によかった」


「私も。あなたが、私を“つがい”にしてくれて、……生きていてよかった」


その瞬間、施設全体がシャットダウン。

つがいの波動が空間を“焼いた”。


──支配ではない。

──融合でもない。


それは、“真の共鳴”。


“SSクラスDom × SクラスSub”が完全につがい化した瞬間──

すべてのセンサーがゼロ反応を記録した。


「つがいは、抑えられない」


それが、この世界に残された最強の証明だった。


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