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#普通
野々さくら
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ありあ
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朝陽が首を傾げる。
「おじろくおばさ?」
隣で茜も不思議そうな顔をした。
「なに?そのおじろくおばさって」
信愛は小さく肩をすくめる。
「いや、私にも分からないんだよね」
「なんかの呪いかな?」
誰も知らない言葉だった。
信愛が続きを口にしようとした、その瞬間。
「私にも分からな──」
「その話はするな!」
怒号が居間を震わせた。
勇は信愛の言葉を遮るように立ち上がると、拳でテーブルを力いっぱい叩きつける。
鈍い衝撃音に、全員の身体がびくりと跳ねた。
「え?」
信愛は目を丸くし、固まる。
さくらも慌てて祖父へ視線を向けた。
「お、お爺ちゃん?」
勇は険しい表情のまま、低く言い放つ。
「いいか?」
そして、念を押すようにもう一度口を開いた。
「その話はするな!」
有無を言わせぬ威圧感だった。
信愛はその気迫に飲まれ、声を震わせる。
「あ、は、はい・・す、すいませんでした」
勇はそれ以上何も言わず、一同を見回す。
その場を支配する重苦しい空気だけが残った。
やがて勇は短く告げる。
「俺は部屋に戻る」
そう言い残し、背を向けて居間を後にした。
襖が閉まる音が、静まり返った部屋に虚しく響く。
誰も口を開けない。
張り詰めた空気の中、信愛がぽつりと呟いた。
「ど、どうしたんだろ?」
さくらは困ったように目を伏せる。
「さ、さあ・・・」
秋穂は申し訳なさそうに微笑んだ。
「ごめんねみんな・・びっくりさせちゃって」
信愛は慌てて首を横に振る。
「い、いえ、良いんです」
茜は腕を組みながら考え込む。
「何であんなに怒ってたんだろうね?」
朝陽も頷き、真剣な表情になる。
「やっぱり先輩が口にした
おじろくおばさに何か原因があるんですかね?」
「それを聞いた瞬間に怒り出しましたよね?」
焔垂は低く唸る。
「だよな・・・」
少し間を置き、静かに呟いた。
「何なんだ?おじろくおばさって」
その問いに答える者はいなかった。
沈黙を破るように、美羽が穏やかな口調で信愛へ語りかける。
「その事についてはもう忘れなさい
いい?忘れるのよ?」
柔らかな笑みを浮かべながらも、その言葉には拒絶を許さない強さがあった。
信愛は戸惑いながらも、小さく頷く。
「は、はい・・・」
秋穂も優しく続ける。
「今日はもうお風呂に入って寝なさい」
「明日は朝から摘菜だから」
信愛は静かに返事をした。
「はい・・分かりました・・・」
誰もが何かを隠している。
そんな違和感だけが、信愛の胸に重く残り続けていた。
◇ ◇ ◇
夕食を終えた三人は、露天風呂で一日の疲れを癒やしていた。
夜風が頬を撫で、湯けむりがゆっくりと空へ溶けていく。
茜は湯船に肩まで浸かると、思い切り声を上げた。
「あ゛ぁぁぁぁ~~♡」
そのまま目を細め、幸せそうに笑う。
「ぎぃんもぢぃぃ~~♡」
次の瞬間、茜は両手を広げ、そのまま湯船に大の字でぷかりと浮かんだ。
その豪快な姿に、さくらは吹き出す。
「ちょ!茜(笑)」
信愛も思わず笑みをこぼした。
「もう何やってんの(笑)」
茜は気にも留めず、ぷかぷかと浮かびながら答える。
「だって気持ちいいんだもん」
笑いがひと段落すると、信愛の表情が少しだけ真剣になる。
「でも本当に、おじろくおばさって何なんだろうね」
茜も笑顔を引っ込め、小さく頷いた。
「確かに・・・あの剣幕だったもんね」
さくらは湯面を見つめながら呟く。
「お爺ちゃんが、あんな怒ってるの初めて見た」
信愛も今日の出来事を思い返す。
「あれだけ怒るって事は」
少し間を置いて続けた。
「相当聞かれたくないって事なのかな」
「どうなんだろ・・・」
さくらも首を傾げる。
しばらく沈黙が流れたあと、茜がぽつりと口を開いた。
「でもさ?お爺ちゃんだけじゃなくて
さくらのお母さんとか
美羽さんの表情も変わってなかった?」
信愛ははっとしたように顔を上げる。
「確かに・・・何かありそうだよね」
茜は苦笑しながら肩をすくめた。
「でも忘れろ!って言われちゃったら
無理に聞き出す事も出来ないよね・・・」
信愛は静かに頷く。
「そうだよね・・・」
そう呟くと、信愛は湯船へゆっくりと首まで浸かり、ぶくぶくと小さな泡を吐き出しながら、目を閉じる。
頭の中を巡るのは、勇の怒号と、あの場にいた全員が見せた張り詰めた表情。
おじろくおばさ。
その正体だけが、霧のように信愛の心へ深く残り続けていた。
(なんなんだろ・・おじろくおばさって・・)
コメント
1件
×××さん、最新話読んだよ〜!😭💦 えっ、おじろくおばさって何!?おじいちゃんがあんなに怒るの初めてでビビった…。普段あんな温厚な人が「するな!」って拳叩きつけるシーン、めっちゃ重くてドキドキした。しかも美羽さんも「忘れなさい」って…なにその空気、気になりすぎる!! でも最後の露天風呂での茜の「ぎぃんもぢぃぃ〜♡」でちょっと和んだ(笑)そのギャップがまたいいんだよね…。続き早く読みたいです!