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世界は再び闇に包まれつつあった。
相模トラフの地震から数年が経ち、倭の国は徐々に復興を遂げていた。しかし、長く続かなかった。世界中で領土拡大を目指す国々の対立が深まり、ついに人類史上最も破壊的な戦争が幕を開けることになる――核戦争。
「倭は引かないぞ…」
伊吹丸は戦争の兆候を読み取り、各国の動きを冷静に見つめていた。特に、核保有国が互いを威嚇し合い、世界を破滅の瀬戸際へと押しやる構図が鮮明だった。
倭もまた、核技術を手に入れていたが、伊吹丸の手によって厳しく制限されていた。彼は異能の力で核兵器を無効化できるが、それは対策として十分ではなかった。もし世界が一斉に核兵器を発射すれば、彼一人ではすべてを止めることはできない。
そして、その時が来た。
世界中の空が、一瞬にして赤く染まった。幾つもの国が核ミサイルを発射した瞬間、世界は一斉に崩壊へのカウントダウンを始めた。
ロシアの広大な平原に核が炸裂し、アメリカの都市部に放射能の嵐が巻き起こる。ヨーロッパでも核が炸裂し、大陸全体が一瞬で火の海に包まれた。南米、アフリカ、そしてアジアの諸国も無差別に核兵器を使用し始め、人類はかつてない規模の終末を迎えていた。
伊吹丸は、倭の首都・ソウルからこの惨状を見下ろしていた。
「人類は…ここまで愚かだったのか。」
核の閃光が大地を焼き、破壊の波が世界中を飲み込んでいく様子を目にしながら、彼はただ黙っていた。人間の選んだ結末に対する嘆きが、彼の胸に深く響いていた。
だが、伊吹丸は無力ではなかった。彼の持つ異能「無」の力は、どれほど強力なものであっても、核兵器を無に帰すことができる。ただし、その力を使えば、彼の命もまた削られる危険性があった。
「これが…最後の戦いか。」
伊吹丸はついに決断した。倭を、そしてわずかに残った人類を救うため、彼は自らの命を懸けて核戦争を止めることを選んだ。
空を見上げ、彼は異能を発動する。
大地に降り注ぐ核ミサイルの一つ一つが、彼の力によって消滅していく。爆発寸前の核兵器は次々と消え去り、放射能の恐怖が抑えられていく。しかし、彼が全世界の核兵器を消し去るためには、すべての力を使い果たさねばならなかった。
「これで…終わりだ。」
伊吹丸の身体は光に包まれ、彼の存在そのものが消えようとしていた。世界中の核が一瞬にして無効化されると、静寂が訪れた。しかし、それは長い戦争の終わりではなく、まだ序章に過ぎなかった。
伊吹丸の犠牲により、核戦争は最悪の事態を避けた。しかし、戦争の傷跡は深く、世界は再び平和を取り戻すために大きな変革を必要としていた。伊吹丸がいなくなった後、彼の意志を継ぐ者たちが立ち上がり、壊れた世界を再び再建しようとする。
だが、その先にはまだ多くの試練が待ち受けていた。