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【異世界】誰もが一度は想像する。並行世界、別次元、別世界。言い方は沢山あれど、どれも異なる世界である事に変わりは無い。 つまり、僕がいるこの世界は、異世界なのだろう。
少し前、いきなりだが僕は死んだ。自慢じゃないが、良い最後だった。信号無視してきたトラックに子供が引かれそうになっていたところを助けて死んだのだ。未練がない訳じゃないが、どうしようもなかった。
永遠にも思える沈黙のあと、零れた言葉はそう。
「死んだのか…」
瞬間、喉奥から出た嗚咽と共に、溢れた涙が頬を伝う。くすぐったくて拭うが、それでも止まらない涙は、まるで生きるはずだった僕の時のように輝いていた。家族や友人、今や彼らを想うことも意味をなさない。再びは訪れない。
事実を胸に突き刺し、真っ白のキャンバスのような空間で、声にならない憂いを一頻り吐き出す。
落ち着きを取り戻し、辺りを見渡す。
壁は無いようで有るようだ。
少し歩くと机を見つける。その上には手紙のような物が置いてある。封を開け、なかを見る。
要約するとするとこうだ。
選択肢を選ぶこと。一つ目、天国へ行く。二つ目、異世界に行く。
なんとも簡潔で簡単な選択肢。だけど決まってる。まだ生きたい。生きれるなら今度は後悔しないように生きたい。
そう思っていると、手紙が光だし、文字が浮かび上がってくる。文字が体に巻き付き、意識が少しづつ薄れていく。強烈な眠気のような感覚が全身に広がりやがて 僕の意識は、プツンと消え去り、暗闇の中に沈んでいく。
遠くで誰かの声が聞こえる。嬉しそうな声。暖かくて、耳のすぐ横で聞こえる、リズム良く鳴る鈍く重い音が心地良い。
「おぎゃあ!」
重い瞼を少し開けて、僕の新しいお父さんとお母さんの顔を凝視する。あぁ…僕は本当に異世界に転生したみたいだ。
–つづく–