テラーノベル
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足の手当てを終え、風が吹いたところで私は立ち上がる。
🌸「……私は行く」
🍁「もう行っちゃうの?僕を倒したいんじゃないの?」
🌸「言ったでしょ。次会った時って…」
🍁「あっそうだったね…」
琥珀は寂しそうな笑顔を浮かべた。
🍁「また…会えるかな?」
🌸「………会えるが、次は必ず倒す」
わざと冷たく言い放ち、振り返らずに歩き出す。
🍁「またね桜ちゃん!」
後ろから名残惜しそうな声が聞こえ、私はさらに胸が締め付けられるような感じがした。
山を降り、村に戻る。辺りは真っ暗で何も見えないが、小さく松明が灯り始める。私の姿を見て村人達は次々と走って私の元に来る。
「桜さん!あの凶悪な鬼を倒せましたか!?」
恐怖と期待が混じった村人達の言葉と目は、私の方に集中し一瞬言葉が詰まる。
いつもなら、「退治した」と短く胸を張って答えるだけで終わったが、あの山吹色の髪の鬼が涙を流しながら私を崖崩れから助けてくれたことを思い出す。
🌸「……ええ。鬼は、倒したわ」
私は嘘をついた。その時の自分の声はとても冷たかった。
🌸「戦っている最中、強い雨のせいで崖崩れが起きたの。鬼は………その崖崩れに巻き込まれて下敷きにされた。だから、この村に危険は…無い」
「流石桜さん!安心しました…」
「桜さんしか出来ませんからね!」
「次もよろしくお願いしますね」
村の人たちは感謝の言葉を口にした。その中には涙を流す人もいた。
けれど、その言葉が私の胸に鋭い針のように突き刺さる。
本当は生きている…。しかも、その鬼に崖崩れから助けてくれ、応急処置をした。
🌸(私は、村のみんなを……お師匠様を裏切った…。これが誰か一人にでも知られたら………)
私は逃げるように自分の家に帰り、ピシャリと障子を閉めた。
とても静かな部屋の中で、私は座布団に座った。
🌸「もう…私どうすれば良いのッ…?分からないよ………」
私は小さく呟いた。
お師匠様は妖怪は人間を襲う悪いやつだと教えてくれた。だから私は、その言葉を信じて沢山の妖怪を倒した。
だけど、琥珀だけ違った。『君を守りたかった』という言葉は嘘に見えなかった。
私は近くにあった手鏡を見る。じっと見つめるのは私の瞳。村の人たちは赤や青などとても綺麗な瞳なのに、私は光を吸い込む闇のような真っ黒な瞳。
村の人たちからは、その瞳で嫌われ、危ない妖怪退治を任されることになってしまった。
けれど、同じ真っ黒な瞳の琥珀は違った。
🌸「とっても優しくて綺麗な瞳…か」
彼が言ってた言葉がずっと脳裏によぎる。
🌸「不吉な…闇の瞳なんかじゃないの?」
鏡の中の私に問いかける。もちろん反応しない。同じ背丈、同じ瞳、命懸けで守ってくれた優しさで分からなくなってしまう。
お師匠様が言う正義と琥珀の優しさ。二つの間でずっと揺れ動き、胸の中のもやもやは変わらなかった。私の心は、あの鬼がいる山に囚われてしまった。
To be continued
れお(1週間猫化)
320
#ギャグ時々シリアス??
꒰ঌソラ໒꒱
10
#恋愛
もな
224
コメント
3件
もう、めちゃくちゃ切ないですね…😢 桜ちゃんが自分に正直になればなるほど、村や師匠との間に嘘が増えていくのが心に刺さります。特に「次は必ず倒す」と言い放った直後の、名残惜しそうな琥珀の声に胸がギュッてなってしまいました。黒い瞳が二人をつなぐ鍵なのに、それが二人を引き裂く理由にもなるって、すごく悲しい…。続きが気になりすぎます!