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そして、月英は、微笑みながら、渋い顔をする孔明を出迎えている。
後ろでは、徐庶《じょしょ》が、早く紹介しろと、孔明を、こずいていた。
「あら、旦那様、そちらの方は?」
「あっ、同じ門下生の徐庶という者で、あっ、なかなか気の良いやつで……その、突然ではありますが……家を訪ねたいと言われて……」
「まあまあ、そうでしたか」
月英は、笑顔を絶やさない。
「いやあ、すまんなあ、突然押し掛けてきて。今日は先生がご不在の為、それならばと、諸葛亮の家へ邪魔しようと思いついたのだ。奥方に、上手く、取りついでくれるか?どうも、諸葛亮《こいつ》では、頼りない」
はははと、徐庶が笑った。と、同時に、カツンと、鋼の音がした。
「わっ、こ、これは、失礼しました。兄のご友人でしたか。あ、あ、畑仕事から、戻って来たばかりで、兄が客人など連れて来るのは、珍しく、つい、鍬《くわ》を落としてしまいまして、申し訳ありません!!」
「ああ、これは、私の弟で、諸葛均、家のもろもろを手伝ってもらっていて……」
しどろもどろになっている、孔明と均の姿に、徐庶は、
「しまったなぁ、こりゃあ、奥方に、土産の一つでも、持ってくればよかった」
と、呟いていた。
「あら、なんて気が効くお方でしょう。でも、構いませんよ。奥様は、お昼寝中ですから、お客人が来ていることもわからないでしょう。いつもの事ですわよねぇ、旦那様?」
月英が、孔明へ意味深な視線を送る。
「あ、ああ、そうだ。つ、妻は、昼寝が大好きで……」
「ははは、門下生の中でも、一二を争う秀才、諸葛亮も、嫁御には頭が上がらんか!」
「そうなんですよ、徐庶様。もう少し、旦那様も、しっかりなさって頂かないと、奥様ったら、どんどん、つけあがるばかりで、本当に!」
はあっ、困ったものだと、息つく月英の姿に、徐庶は、釘付けになっていた。