いつもお茶は自分で淹(い)れているので、用意するのにそんなに時間は掛(か)からなかった。
果(は)たして王族の口に合うのかは分からないが、上手く淹れれたと思う。
淹れたお茶を二人分持って行き、お菓子を食べながらお喋りをする。
「リースは上級魔法が使えるのか!?しかもほぼ完璧に調整出来ているなんて……学園にもまだ通っていないのに凄過ぎるじゃないか……!」
「いや、そんな凄いことではないよ。僕自身、魔法以外は努力してやっと出来たものだが、魔法だけは感覚でやっていて…こればかりは才能に恵まれただけで、僕自身は凄くないよ」
「いいや!リースは凄いよ!それにリースなら魔法の才能が無くても、沢山(たくさん)努力をして上級魔法だって使いこなせるようになってたと思うし」
「う、」
図星だ。
何故こういうことは分かるのだ。
確かに才能が無くても、上級魔法が使えなくても、きっと他同様、血が滲む程頑張っただろう。
男として生きるために。
「そういえばリースはなんの魔法が使えるのだ?」
「えっと、火と水だね。後は、修行をして氷と重力、血魔法も使いこなせるようになったな」
「修行で使えるようなものなのか……?」
「さあね?よく分からないけど、元々人間には全ての能力の元がある。
だけど、それが形にならず、そのまま消滅してしまうんだ。
でも、消える期限は決まっていて、それぞれの条件を満たすことが出来たら、能力が解放される。
その能力の練習を積んで、初めて魔法となり、使えるようになる。
それを越えると魔術としてさらに能力の幅が広がるんらしい」
「なるほど……それと、期限って?」
「まあ、個人差もあるが大体の人間は18歳になるまでは練習を積んで努力を沢山すれば、能力は使えるようになるらしい。
だから、18歳まで学園に通うみたい」
「なるほど……リースはその修行で能力の幅が広かったのか…」
「まあ、そうだね」
「じゃあ俺もその修行に参加してみたい!」
「…え、え!?ルティーサ様それは辞めといた方が……」
「良いだろう?俺も能力を極めてみたいのだ。足手(あしで)まといにならないよう努力する」
「い、いや、辞めといた方が君のためだ!」
「な、何故だ!!!」
「僕の受けていた修行は君にとっては想像を越える程の恐ろしさだ…地獄だ……世の中には知らなくて良いこともある」
「いや、どれだけ厳しいんだ…」
「おまけに師匠はこの国でトップクラスの実力者だ。王族だからといって加減するような人じゃない」
※なお、子供には手加減する模様。
「ますます興味が出るじゃないか!!」
「なんでだよ!!!」
何故そうなる。
マゾヒストか何かなのか!?
脳とか正常に動いてるのかこいつ…!
おっと、王族をこいつ呼ばわりは無礼だな。失礼。
……ん?待てよ?
ここでルティーサ様に修行に参加してもらって、そこで修行の厳しさに折れてもらうか、戦闘時で少し威圧して僕に恐怖心を抱いてもらえれば僕にもう近ずいてくることはなるのでは……?
天才か?
向こうから距離を置いてもらえば今後関わる機会はグンと減るし、性別がバレることに怯え無くていい……!
そうなりゃ話は簡単だ。
僕を視界に入れたくない程怯えさせるだなんて軽いものだ。やってみる価値はあるな。
そして、僕は少し考えた素振りをして、やがて諦めたように振る舞って言う。
「はぁ、分かったよ。覚悟しといてよ?」
「おお!ありがとう!楽しみにしている」
御願いを承諾(しょうだく)すると嬉しそうに僕の手を掴んで上下にブンブン振り回している。
そのキラキラとした笑顔にこれからしようと思っていることに気が引けてしまう……。
いや!僕はやるんだ!今後平穏な日々を送るために嫌われ、怖がられる存在になるんだ!
………まぁでも、罪悪感が無いわけではないので、ルティーサ様が僕を嫌い怯えるまでは一応、友人として居ようかな……護衛は勘弁だけど()
たった一日でどっと疲れてしまった。
ルティーサ様が帰った後、お父様にあらいざらい舞踏会での事を話す羽目(はめ)になり、さっきのお茶会での専属護衛や友人にないたいと言われたことを話し、2時間程説教をされてしまった。
はぁ、今日はとことんついていないな。
気分転換に久々に明日騎士さん達に手合わせを願おうかな。
そう思って眠り、明日を迎えた。
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