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猫塚ルイ

「おめでとう、穂乃果ちゃん」
「ヒューヒュー! ナオミさん男前!」
と、店内は常連たちの温かい拍手と歓声に包まれる。隣の彩美も「ちょっと待って、カッコよすぎて私が泣きそう……っ!」とハンカチで目を押さえていた。
「っ、やぁねぇ冷やかさないで頂戴! もー……アタシまで恥ずかしくなっちゃうじゃない!」
「ふふっ」
「ちょっと湊! ケーキ! ケーキ持って来てっ」
ナオミが顔を真っ赤にしておしぼりでパタパタと自分を仰ぎながら叫ぶと、店内は一層大きな笑い声に包まれた。普段はどんな時でも余裕を崩さないナオミが、本気で照れてうろたえている姿は、常連たちにとっても滅多に見られないご馳走だった。
「はいはい。たく、人遣い荒いなぁ」
湊はブツブツと文句を言いながらも、その顔には満面の笑みを浮かべ、厨房の奥へと引っ込んでいく。
彩美はまだハンカチで涙を拭いながら、「もう、最高のクリスマスだよぉ」と隣の穂乃果の肩を優しく小突いた。穂乃果もまた、胸がいっぱいで、ただただ幸福な熱さにのぼせながら、ナオミの少し落ち着かない横顔を愛おしそうに見つめていた。
「お待たせしましたー! 『BLACK CAT』特製、クリスマス特大ケーキのお通りだよ!」
やがて厨房から戻ってきた湊の手には、色鮮やかなイチゴとたっぷりの生クリーム、そして何本ものキャンドルが美しく灯った見事なホールケーキが握られていた。
「わぁ……っ、すごい!」
「相変わらず器用な奴だな。毎年腕が上がってんじゃねぇか」
穂乃果と彩美が歓声を上げ、理人も素直に感心したように声を漏らす。
「今年は僕と穂乃果ちゃんも手伝ってくれたんですよ。ほら、キャンドルを消すのは、今年の主役のお二人です。ね? 早く」
湊がカウンターの中央にケーキを置くと、瀬名が手際よく店の照明を少し落とした。ゆらゆらと揺れるキャンドルの灯りが、集まったみんなの温かい笑顔を優しく照らし出す。
「もー、湊ったら粋なことするじゃない……。ほら、穂乃果。一緒にいくわよ?」
「はい!」
ナオミと穂乃果は顔を見合わせ、せーの、と息を合わせてキャンドルの火を吹き消した。
一瞬の暗闇のあと、再びパッと明るくなった店内には、先ほどよりもさらに盛大な拍手が鳴り響く。音治も静かにグラスを傾けながら、その光景をどこか満足そうに、穏やかな目で見守っていた。
それからケーキをみんなで切り分け、美味しいお酒と共に賑やかに平らげていく。楽しかったパーティの時間も、夜が深く静まり返るにつれて、ゆっくりと穏やかな終わりの気配を纏い始めていった。
コメント
1件
## はる。の感想 ああもう最高だわ…!普段あれだけ余裕かましてるナオミが本気で照れてうろたえてるの、確かに「ご馳走」すぎる(笑)。湊の「人遣い荒い」って言いながらの満面の笑みが王道で好き。そしてキャンドルの火を一緒に吹き消す穂乃果とナオミ、尊すぎてクラクラきた。温かいクリスマスパーティの雰囲気が丁寧に描かれてて、読んでるこっちまで幸せな気持ちになったわ。長編のこの穏やかな締めくくり、沁みるなあ…。