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高速を使い、渋滞に巻き込まれながらも一時間半ほどで東新宿へ戻ってきた。
外はすっかり漆黒の闇に包まれ、すぐ側にある東新宿のエストスクエアは、光の粒子を纏っている。
荷物をリビングに纏めて置いたところで、侑は瑠衣に声を掛けた。
「なぁ九條。この家の周辺、全然分からないだろ? こんな時間で外は暗いが、少し歩かないか?」
「…………はい。行きたい……です」
「ならば、近所を散歩するか」
再び玄関を出て、二人は外を歩いた。
家の前の道を左折していくと、右手にはオフィス棟と住居棟の二棟が立ち並ぶエストスクエア、左手にはレンガ造りの大きなホールがあり、個人が経営しているお洒落なお店も点在している。
エストスクエアは、有名なゲーム制作会社の本社があり、その会社が運営しているカフェを兼ねたコンセプトショップが入店していて、独特の店構えと人気キャラのパンケーキが有名らしい。
他にも、多くのレストランやカフェ、スーパー、ドラッグストアも入店しており、生活するには便利そうな立地だな、と瑠衣は思う。
「色々お店があって…………生活するには……いいですね」
「ああ、店が一通り揃ってるから不自由はしないな」
他にも百均、コンビニ、ファストフード店もあり、ただ見ているだけでも楽しそう、と思う瑠衣。
昨日の深夜から今日に掛けて、侑は瑠衣を外に連れ出してくれている。
恐らく、悲痛な思いを胸に抱えている状態の自分を、少しでも気持ちが紛れるように、彼なりに気遣ってくれているのだろう、と瑠衣は思っていた。
それが有り難くも感じているのはもちろんなのだが、却って迷惑も掛けている、と感じ、侑には申し訳ない気持ちだった。
やがて大通りにぶつかり、通り沿いを更に歩いて行くと、大きな神社が見えてきた。
「先生…………あの神社……は?」
「あの神社は花森神社だな。芸事の神を祀っている神社だ。移住していた頃は行かなかったが、日本で年末年始を過ごす時、初詣は毎年ここに行っていたな」
「芸事……かぁ……」
大きな鳥居を見ながら立ち尽くしている瑠衣に、上から渋い声音が降ってきた。