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異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまで

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異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまで

21 - 【第二章】第12話 こちらでも温泉があった事に歓喜しか感じない・後編

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2025年10月03日

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朝日が部屋へ差し込み、その光が頰に当たった事で柊也の瞼が微かに動いた。


(もう朝かぁ……起きないとな)


そう柊也が思い瞼を開けると、キスでもしかねない距離にルナールの顔があり、「うわぁぁぁぁっ!」と大声をあげながらベッドの中で後ろに下がった。ベッドが広いおかげで落ちる事は無かったが、ルナールを起こすには充分過ぎる行為だったようだ。


「……あぁ。おはようございます、トウヤ様」


目を擦り、伏せていた耳をヒクヒクさせながらルナールが目を覚ました。ちょっとぼぉっとしていて、まだ眠そうな顔をしているので少し子供っぽく見える。そんな姿を見て柊也の胸がキュンッと疼いた。


(カッコイイのに可愛いって……ズルイって言ってるよね⁈)


意味不明な怒りを軽く感じながら、柊也が顔を反らしながら「おはよう」と言った。

「昨夜はよく眠れましたか?」

「んー……どうだろう?気が付いたら朝だったからって……あれ?僕いつ布団に入ったんだろう?お風呂にいたよね?」

「お風呂で倒れたのですが、覚えていないので?」

「うん。お酒飲んだあたりから……」

「ほう?」

「実はさ、あんまりお酒は飲むなって周囲から言われてて、飲んだのも久しぶりだったんだよね。っても数ヶ月とかだけど」

「何故飲むなと?」


「記憶が飛ぶんだよ。弱いのかなぁ?」


「記憶が……飛ぶ?それはつまり、お酒を飲むと記憶が無くなるという意味ですか?」

「うん、そうらしいよ。覚えてないからよくわかんないけどねぇ」

「へぇ……なるほど」

柊也の話を聞き、ルナールが場に合わぬ程いい笑顔で笑う。キツネが悪知恵を思い付いた瞬間だったのだが、柊也は気が付いていなかった。




別の村に続く道の前で、村人達が柊也とルナールの見送りに集まってくれている。観光で村に来ていて、祝いの席にたまたま居合わせただけだった人達と仕事でどうしても体が空かなかった人以外は、ほぼ村人総出で来ているのでは?という感じだ。

レーヌ村の村長やその母からの別れの挨拶から始まり、色々な人達が次々に直接礼を言ってくれる。お礼の品などをくれる人もいたが、この先の事を考えて、それらは神殿の方に送ってもらうよう村長達に頼んだ。旅の間中持ち歩くなど、とてもじゃないが出来そうに無い量だったのだ。


「トウヤ様ー、昨日はありがとうございました」

あと少しで挨拶も終わるだろうという頃。懐っこい笑顔を振りまきながら話しかけてきたのはラウルだった。ちょっと眠そうで、目の下にはクマができているが、とっても幸せそうだ。

「こちらこそ。とても新鮮な経験だったので楽しかったですよ。ところで……トラビスは?」

周囲を見渡し、柊也がトラビスの姿を探したが何処にも彼が居る気配が無い。

「あぁ、俺が無理させちゃったせいか今頃爆睡中さ。おかげでたっぷり子種を貰えたから、次にトウヤ様達に会える時は子どもの顔を見せられるかもだよぉ」

ポッと顔を染め、お腹を摩りながらラウルが言った言葉に柊也の体が固まった。何があってトラビスが来られなかったのか、理解出来てしまったからだ。

「そ、そ、そうかぁ。それは楽しみだなぁ、あはは」

空笑いする柊也に、ラウルがニコッと微笑みで返す。真っ黒い尻尾をゆらゆらとさせ、柊也から初心な反応をあえて引き出せたのをラウルは楽しんでいた。


「ラウル、もういいだろ。そろそろ俺達に変わってくれ」

そう言ってラウルの背を叩いたのはモユクだった。弟のヨモノも一緒で、その姿を見て柊也は少し驚いた顔をした。


「……あれ?えっと……」


村人の『呪い』は全て解呪出来たと思っていたので、アルビノの姿に戻っていないヨモノの姿は柊也にとって不思議でならなかったのだ。

「俺達の家は小高い丘の上にあるうえに、村の端の方なのでお力が届かなかったみたいなのですよ」

モユクはそう言うと、「な、ヨモノ」と弟の顔を見た。

「あ、うん。何か……そうみたいなんだ」

【純なる子】を騙すような発言に少し心を痛めながら、ヨモノが頷いた。

ヨモノがチラッとルナールの方を見ると、彼は口元に薄っすらと笑みを浮かべながら軽く頷く。柊也に真実を言う必要など無い。これで全てが丸く収まるのだからと、ルナールはとても満足気だ。

「……そっか。それならそれでいいね」

あからさまにホッとした顔を柊也がした。解呪出来てしまうと、いつ寿命がきてもおかしくないヨモノへの気不味い気持ちが少し薄らいだからだ。

「全てが終わったらまた会いに来て下さいね、トウヤ様」

「うん。是非そうさせてもらうよ」

ヨモノが差し出してきた手を柊也が握り、二人が握手をする。いずれはヨモノの呪いも解けてしまうと思っている柊也と、その柊也に『事実』を隠している罪悪感を隠しきれないヨモノとの握手は、とてもぎこちない笑顔で締める事になってしまった。


「では行きましょうか、トウヤ様」

「うん、そうだね」

ルナールから差し出された手を、深く考えぬまま柊也が握る。

「じゃあ、色々本当にありがとうございましたー」

見送ってくれる人達に声をかけ、柊也が海沿いの道をルナールと共に歩き始める。一夜しか滞在しなかった村ではあったが、この世界の温かさに触れられた気がして、柊也は海の方へ視線をやりながら微笑みを浮かべた。

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