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ライブ後の楽屋は、
いつものように熱気と疲労で満ちていた。
仁人は鏡の前で汗を拭きながら、
ぼんやりと自分の顔を見つめていた。
ステージでは笑顔を振りまき、
メンバーと絡み、ファンを喜ばせる。
でも、
心の奥はいつも少し冷たい。
誰かに深く触れられるのが、怖い。
「仁人、今日もキレッキレだったな。お疲れ」
勇斗が後ろから肩に手を置いてきた。
自然なタッチ。
いつものことだ。
なのに仁人は、反射的に体を少し引いた。
「……うん、ありがと」
声は平坦。
笑顔は作れるけど、
目が笑っていないのを勇斗は見逃さなかった。
二人は付き合って半年になる。
表向きは 「最年長とリーダー」の親友関係。
でも夜は、
こうして二人きりの時間を過ごす。
マンションに戻ると、
仁人はすぐにシャワーを浴びてベッドに横になった。
勇斗が隣に滑り込んでくる。
「今日、なんか疲れてる?」
「ん……普通」
仁人は目を逸らした。
本当は、ライブで何万人もの視線を浴びたあとで、勇斗の視線だけが重く感じる。
愛されているのが嬉しいのに、
「これ以上近づかれたら、壊れるかも」
と思う自分が嫌になる。
勇斗はため息をついて、仁人の腰に腕を回した。
「仁人、俺のこと好きだよな?」
「……好きだよ」
即答できた。
でもそれ以上、言葉が続かない。
勇斗は仁人の首筋に唇を寄せ、
優しくキスを落とした。
「じゃあ、もっと俺を頼ってよ。
甘えていいんだからさ」
仁人の体が、びくりと震えた。
触れられるのが心地いいのに、
胸の奥がざわつく。
“甘える=依存する=いつか捨てられる”
という古い恐怖が、頭の中で響く。
「勇斗……今日は、ちょっと……」
「ん、、、嫌?」
勇斗の声が低くなる。
指先が仁人のシャツの下に滑り込み、素肌を撫でる。
仁人は唇を噛んだ。嫌じゃない。
むしろ、もっと触れてほしい。
でも、素直に「欲しい」と言えない。
「……嫌じゃない。でも、俺……」
言葉を詰まらせる仁人の顎を、
勇斗が優しく掴んで自分の方に向けた。
「知ってるよ。仁人が、急に離れたくなるの。
俺が近づきすぎると、息苦しくなるんだろ?
でも、俺は逃げないから。
どれだけ仁人が壁作っても、俺はここにいる」
仁人の目が少し潤んだ。
そんな言葉を言われると、
胸が熱くなって、余計に怖くなる。
勇斗はゆっくりと仁人の体を仰向けにし、
上に覆い被さった。
キスは優しい。
舌を絡めながら、仁人の反応を確かめるように何度も角度を変える。
「ん……はっ……」
仁人の息が乱れ始めた。
勇斗の手が、下へ滑っていく。
パジャマのズボンを下ろし、
既に反応し始めている仁人のものを優しく握る。
「仁人、硬くなってる」
「うるさい……」
照れ隠しに睨むけど、声に力がない。
勇斗は笑って、親指で先端を撫でながらゆっくり扱き始めた。
仁人はシーツを掴んだ。
気持ちいい。頭がぼーっとする。
でも同時に、
「こんなに感じてる自分を、勇斗に見られてる」と思うと、急に恥ずかしくて逃げ出したくなる。
「や……待って、俺……ッ」
体をよじると、勇斗が腰を押さえてきた。
「こーら逃げないの仁ちゃん。
今すげー俺を欲しがってる顔してるのに」
低くて甘い声。
耳元で囁かれ、ぞくりと背筋が震える。
勇斗はローションを取り出し、
自分の指を丁寧に濡らした。
仁人の脚を開かせ、
ゆっくりと後孔に指を一本沈める。
「あ……っ!」
仁人は眉を寄せた。
痛みはない。
でも、侵入される感覚に、心がざわつく。
「繋がってしまう」「もう離れられなくなる」
という恐怖と、
「もっと深く繋がりたい」
という欲求が、せめぎ合う。
「仁人、息して。
俺の指、気持ちいい?」
「……ん……くっ……//」
二本目に移ると、腰が勝手に動いた。
勇斗はそれを優しく押さえ、
反応を見ながら前立腺を刺激する。
「はあ……っ、勇斗……そこ……ッ♡」
声が甘く溶けていく。
回避したい気持ちが、徐々に溶かされていく。
勇斗は自分のものを取り出し、
仁人の入り口に当てた。
「入れるぞ。
痛かったらすぐ言って」
仁人は小さく頷いた。
ゆっくりと、熱いものが自分の中に入ってくる。
いっぱいになる感覚に、仁人は声を上げた。
「あ……っ、深い……ッ///」
勇斗は動きを止め、
仁人の額にキスを落とす。
「仁人、俺のこと、ちゃんと見て。
俺は仁人を、絶対に離さないから」
ゆっくりと腰を動かし始める。
最初は優しく、徐々に深く、熱く。
仁人は勇斗の背中に腕を回した。
爪が食い込むほど強く抱きついてしまう。
「怖い」「嬉しい」「もっと」「逃げたい」
いろんな感情が渦巻く中で、
ただ一つ確かなのは、
この熱だけは、嘘じゃないということ。
「はゃ、、っと……すき…ッ…好きだよ……ッ♡」
言葉が零れるたび、
勇斗の動きが激しくなる。
「っ俺も、仁人が大好きだよ。
全部、受け止めるから、、ッ!」
限界が近づく。
仁人は勇斗の肩に顔を埋め、
声を抑えきれずに喘いだ。
勇斗も低く唸りながら、最奥で熱を放つ。
二人はしばらく、繋がったまま動けなかった。
やがて勇斗がゆっくりと抜き、
仁人を抱き寄せる。
「……仁人、逃げなかったな」
仁人は汗ばんだ顔を勇斗の胸に押しつけた。
まだ少し息が荒い。
「……今日は、頑張った」
「うん、えらい」
勇斗が髪を撫でる。
仁人はその手に、自分の手を重ねた。
「また、怖くなったら……言っていい?」
「もちろん。
俺は待ってるから。
仁人が、心を開けるまで」
仁人は小さく微笑んだ。
まだ完全に壁がなくなったわけじゃない。
でも、
今日も一歩、
勇斗の方へ近づけた気がした。
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