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◆ 18話 スマートリング緊急通報
朝の大学構内。
薄灰ジャケットに緑Tシャツの 三森りく(24) が、
淡水色寄りのMINAMO“ミナ坊”を整えながら歩いていた。
左手のスマートリングは
淡い緑の光を薄く放ち、
普段はアクセサリーのように存在感がない。
淡緑トップスに灰スカートの 杉野いまり(20) が
中庭で手を振る。
「りくくん! 今日のニュース見た?」
りくはスマートリングを軽く叩いて
情報を呼び出しながら近づく。
「……ああ、“脈波の異常検知で救命”ってやつ?」
ミナ坊が視界に自然な字幕を浮かべる。
『本日午前7時、スマートリングが
脈波の異常を感知し、
本人に代わって自動通報を行いました。
迅速な救命処置で命が助かったと報告されています。』
いまりは驚いたように息を飲む。
「ほんとに……“アクセサリーが命を救う時代”なんだね。」
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講義棟前の大型モニターには
ニュース番組が映っていた。
【特集:スマートリング 自動通報機能で救命】
レポーターの声が響く。
「今朝、地方の駅で突然倒れた60代男性。
周囲に人がいなくても、
スマートリングが異常脈波を検出し、
自動的に救急へ通報しました。」
画面には再現CG。
● 脈波の不規則なパターンを検知
● AIが心拍パターンを解析
● 呼吸異常を予測
● GPSを送信し即座に通報
● AirWayが“倒れた本人の肉声”を再現して通報内容を補足
アンカーが説明する。
「本人が意識を失っていても、
スマートリングとMINAMOが連動して
“代わりに話してくれる”という仕組みです。」
周囲の学生たちがざわつく。
「やば……未来すぎる。」
「普通にアクセサリーなのに。」 「もうこれ、身体の一部じゃん。」
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いまりが自分の手元を見る。
淡い緑のリングが静かに光っている。
「これって、脈波だけじゃなくて
ストレスとか呼吸の乱れも記録してるんでしょ?」
ミナ坊が控えめに文字を表示。
『はい。
心拍変動・脈波圧・血流推定データを
AIで解析しています。
異常値のときは本人へ通知し、
意識がない場合は自動で医療機関へ連絡します。』
りくは驚いたように眉を上げた。
「……もうスマホの“緊急通報”より速いじゃん。」
いまりは静かにうなずく。
「人間が気づく前にAIが察知するんだね。」
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そのとき、中庭のベンチで
年配の職員がひとり座っていた。
灰色の作業服に淡い水色MINAMO。
手には淡緑リング。
突然、りくのMINAMOが微細な通知を出す。
『近距離で
“脈波異常疑い”検知端末あり。
UMI規格に基づき、注意喚起を表示します。』
りくといまりは顔を見合わせ、
職員に駆け寄った。
りくが声を抑えて話しかける。
「大丈夫ですか? さっき警告が……」
職員は驚いたように笑った。
「ありがとう。
ちょっと息が上がってただけさ。
でも……こうして知らせてくれるのは安心だね。」
いまりは胸をなでおろす。
「ほんとだ……。
人同士で気づけないことまで補ってくれてる。」
職員は立ち上がり、手を振って去っていった。
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りくは空を見上げながらつぶやく。
「AIに監視されてるって言う人もいるけどさ……
こうやって命が助かるなら、俺は賛成だな。」
いまりも静かに頷く。
「“見守られる安心”ってこういうことなんだね。
ただのアクセサリーが、
誰かの生死を分ける時代になったんだ。」
ミナ坊が控えめに言葉を重ねる。
『技術は万能ではありませんが、
補助として働ける場面は確実に増えています。
りくといまりも、どうか健康に。』
りくは苦笑した。
「ミナ坊が健康願ってくるとか……
なんか、ありがたいけど照れるな。」
いまりも笑いながら歩き出す。
「未来って、案外こういう“優しさ”の積み重ねなのかもね。」
街には水色と緑のMINAMOが揺れ、
人々の生活に静かに寄り添っていた。
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