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◆ 19話 裸眼でお楽しみください
秋の夕暮れ。
薄灰ジャケットに緑Tシャツの 三森りく(24) が、
水色寄りのMINAMO“ミナ坊”を指で整えながら
待ち合わせ場所へ歩いていた。
淡緑トップスに灰スカートの 杉野いまり(20) が
境内前で手を振る。
淡緑のMINAMOが髪にふわりと馴染む。
「りくくん、今日のライトアップ、
“裸眼でご覧ください”って注意出てたよ。」
りくが首をかしげる。
「使えないというか……補完だけ停止って感じかな?」
ミナ坊が字幕をふわりと出す。
『このエリアでは
光演出保護のため視界補完を停止します。
裸眼に近い視界となります。』
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◆ 夜のライトアップ会場 ― MINAMO補完オフ
境内は淡い灯りに照らされ、
木々が水色に近い光を受けて揺れている。
入口には掲示があった。
《このエリアは“裸眼でお楽しみください”》
《MINAMOの視界補完は自動停止されます》
二人の視界はふっと素朴な見え方へと戻る。
いまりが息をこぼす。
「……補完なしって、なんか懐かしい。」
りくは光を見上げながら頷く。
「16Kの精密さじゃなくて、
光そのものの揺れがわかる感じだな……。」
周囲でも聞こえてくる。
「裸眼のほうが雰囲気出るね」
「たまにはいいな、この粗さ」
MINAMO普及後、
“裸眼体験そのもの”がイベント化していた。
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◆ 翌日 ― 動物園(MINAZOO公式アプリ)
翌日の朝。
りくは薄灰パーカー、
いまりは淡緑シャツに灰スカートという軽い服装で動物園へ。
入口の表示が目に入る。
《おすすめ:動物園公式アプリ MINAZOO をご利用ください》
《MINAMOと連動し展示解説を表示します》
いまりがつぶやく。
「使ってみようかな……」
「じゃあ連携してみようか」
りくは無声で指示を送った。
「……MINAZOOアプリと連携して。」
『MINAZOOと連携しました。
展示の解説を視界端に表示します。』
目の前にいるコアラの説明がメッセージとして表示された。
いまりもMINAZOOアプリを使ってコアラの説明を見ているようだった。
いまりは思わず声を弾ませた。
「コアラきゃわいい〜!!」
手で口元を隠しながらはしゃいでいる。
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◆ MINAZOOアプリでの展示体験
キリンのエリアに入ると、
ミナ坊が小さな通知を出す。
りくの視界の端に、
淡い緑の小さな文字が現れる。
『アミメキリン
年齢:12
今は朝の休憩時間です』
『好きな葉:高い位置の若葉』
いまりが解説を見て嬉しそうだった。
近くの子どもたちもMINAMOをつけ、
「見やすい!」
「説明がすぐ出てくる!」
と楽しんでいる。
MINAMOは、
“必要な情報は視界端に出し、動物園を楽しむ”
という体験を生み出していた。
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◆ 午後 ― 美術館の静かな展示
動物園の後、隣の美術館へ。
館内は暗く、
りくのMINAMOが自動で暗所モードに切り替わる。
作品の前に立つと、
ミナ坊が必要最低限だけ小さく解説を出す。
『制作年:2035
技法:紙層再構成 × 光反射』
『視線を2秒固定すると詳細を表示します』
いまりがささやく。
「これなら作品の邪魔にならないよね。
静かに必要なとこだけ教えてくれる。」
りくも頷く。
「音声じゃなくて文字なのがいいんだよな。
静けさが壊れない。」
美術館では
“MINAMOありきの鑑賞スタイル”が
当たり前になっていた。
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◆ 帰り道 ― 世界の見え方を選ぶ時代
夕方の公園。
風で木が揺れ、淡い水色の光が葉に映る。
りくがつぶやく。
「裸眼で見せたい場所と、
MINAMOで見せたい場所、
分かれてきてるよな。」
いまりは笑いながらMINAMOを外して胸にかける。
「選べるのっていいよね。
裸眼の“粗さ”も、
MINAMOの“整った視界”も、
どっちも好き。」
ミナ坊が控えめに文字を出す。
『りく、場所に応じて
裸眼モード/補完モードを自動調整します。
世界の見方は、あなたが決められます。』
りくが微笑む。
「ありがとな、ミナ坊。」
MINAMO時代の“視界選択”は、
ただの機能ではなく文化になりつつあった。
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