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(岩本視点)
あの日、ふっかは言ってたんだ…..
~数週間前~
その日、急にふっかから連絡が来たんだ。
『ちょっと一緒に遊ばない?』
って。
「お!照~!」
「ふっか。急に呼び出すなんて…なんかあった?」
その日のふっかは、いつも通りだった。
白いTシャツに、紺の上着を羽織ってて、少しだけ楽しみにしててくれたのが服装からわかる。
それに、何よりも
「急に連絡したのに来てくれてありがとね!」
「….まぁ、暇、だったから。」
その笑顔、目を輝かせて笑ってるところを見たら、こっちまで嬉しくなる。
「とりあえずさ、ゲーセン行かない?」
ふっかは楽しそうに笑いながら、近くにあったゲーセンを指さす。
「いいね。行こうか。」
急な呼び出しではあったから、予定も行く場所も何も決まってない。
ただ、ブラブラ歩いて気になるところがあったらそこによる。
今回みたいな感じのは、いつもしっかり予定を決める俺達には珍しかった。
いつも、ふっかが行く場所とか時間とか決めてたから….
その時から、ちょっとだけ違和感は持ってたんだ。
でも、それも楽しかった。
だから、触れなかった。
最初に、何かあった?って聞いた時、はぐらかされたことも。
「うわ!!見て見て!これめっちゃ欲しい!!」
ゲーセンに入った時、ふっかはすぐにクレーンゲーム台に目を輝かせた。
「俺ね、今日は縛りでいこうかなって考えてんの!」
「縛り?」
「1000円まででどれくらい景品取れるか。テレビでやってたんだよ。1000円以内に景品をいくら取れるかって。だからさ、最高10個は行けるわけじゃん?テレビの人は8個取れてたの。だから俺はどこまで行けんのかな~って!!」
さすが、ふっか。
クレーンゲームがすごい好きで得意なふっかだ。
少し早口になりながら、興奮気味に話すふっかは、本当に可愛いと思う。
この笑顔見てたら、みんなが幸せになれると思う。
少なくとも、俺は幸せだと思うし、この笑顔を守りたいなって思う。
「やばい!!きたきた!!照!!」
クレーンゲームをやってる時のふっかは、集中してて、俺も邪魔しないようにしないとなって思って静かにしてたら急にふっかが叫びだした。
「ん?どうしたの?」
ふっかの方を向くと、感動してるのか、すごい瞳を輝かせながら震えるふっかがいた。
「….行けちゃった!!やばい!やっぱ俺天才かも!?」
すぐに俺の近くまで来て、での中にある景品を見せる。
小さいぬいぐるみから大きいぬいぐるみ、お菓子や箱のもの….
「…..8、9….え?すごいじゃん!!」
思わず俺も大きな声を出す。
「やばくない!?俺、1000円で9個も取れたんだよ!!しかもさ、戦略的に使った100円だから、実質ノーミス!!」
ふっかは楽しそうに俺に笑いかける。
この笑顔が、偽物なわけないじゃん。
この瞬間は、本物のふっかだったよ。
「うーん、次はどこ行こっかな~」
ゲーセンを出て、また俺らはブラブラ歩き始めた。
ふっかは機嫌良さそうに少し前を歩いてる。
俺は、さっきふっかが取った景品を店員さんに詰めてもらって、その大きな袋を持ってる。
店員さんも、さすがにこの量は驚いてたよ。
それに、言わなかったけど、これは1000円で取ったんだよ。
ほんとに、ふっかはすごいよ。
「!照!見て見て!!」
少し前を歩いてたふっかは、立ち止まって俺の腕をちょんちょん叩く。
「ん?」
ふっかの視線の先を見てみると、カフェが目の前にあった。
「ここさ、最近SNSで話題にってたとこだよ。可愛すぎる動物スイーツって!行こ!!」
俺が返事する前に、ふっかは俺の腕を引いてカフェの中に入ってく。
…..わりと強めの力で。
こういうとこが、すごい好き。
ふっかは、俺と2人きりになると少し我儘になる。
俺の意見を無視して自分の楽しいを優先することだってたまにある。
今みたいに、俺より先に行動する。
でも、それが全部楽しい。
ふっかと一緒にいると楽しいんだ。本当に。
「うわ….かわいい…!!」
真っ先に声が出たのは、俺だった。
ふっかの言う通りだ。
たしかに可愛すぎる動物スイーツだ。
「照~、かわいいじゃ~ん?」
前を見ると、ニヤニヤこっちを見つめてるふっか。
「照って、ほんとにたまに乙女だよね~わら」
ニヤニヤしながらそんなこと言うから、俺も少し駄々こねるみたいに
「うるさい!」
なんて、言っちゃう。
ふっかの前だと、気を張らなくて済むから、俺もちょっと幼くなるのかな?
こういうとこも、ふっかだけだよな。
信頼できてる証、なのかな?
「でも、食べるのもったいないかも….」
さすがに可愛すぎる。
俺が頼んだのは、熊のチョコアイスが乗った大きめのパフェだ。
チョコは食べたい、でも熊は食べられない。
どうしようか、頭を抱えてる俺を、ふっかは楽しそうに見つめる。
俺からしたら、ほんとに重大な問題なのに….
「ひーかる」
「なに….んむぐ」
しばらくしてふっかに名前を呼ばれたと思ったら、ふっかの持ってたスプーンを口に押し込まれた。
「….ん!おいしい!!」
「でしょ?俺のはうさぎさんのショートケーキ!」
ふっかに押し込まれたのはうさぎの耳だったみたい。
甘い生クリームの味が口に広がる。
「こんな美味しいの、食べないともったいないよ~」
ふっかはスプーンで俺のパフェを指す。
「それに、早く食べないと俺が熊さんの頭食べるから。」
「はぁ!?」
ふっかはいたずらな笑顔で言うもんだから、俺はすぐにアイスに手をつける。
あれだけ悩んだのに、結局全部食べちゃった。
ま、ふっかに食べられるよりはマシか。
ふっかは、ずっと楽しそうに俺の顔を眺めてた。
恥ずかしい….
俺は、好きな人の前ではできるだけかっこいい姿を見せたいっていうタイプではない。
でも、ふっかは俺の事をあとから少しだけからかったりするから、ちょっと恥ずかしいんだ。
でも、そういうとこも愛おしい。
カフェを出て、次に向かったところは観覧車。
ここだけは、ふっかは行こうって決めてたみたい。
珍しい。観覧車なんて、久しぶりに乗った。
「2名様ですね。どうぞ。」
笑顔で案内されて、ふっかと観覧車に乗り込む。
「観覧車なんて久しぶりに乗ったね~!」
笑顔でゴンドラの窓から景色を見渡すふっか。
その横顔は、さっきまでのはしゃいでた笑顔は消えてて、どこか、儚かった。
「あそこのビル、意外と小さいね!」
「あれって公園かな!?」
「あそこに住んでみたいな~」
なんか、無理やり言葉を繋いでるような。
話さないと、落ち着かないみたいな感じ。
おかしい。
普段の俺らは沈黙の時間が必ずある。
それも、心地いい沈黙。
でも、今日は違う。
急な誘いから始まって、沈黙の時間がない。
でも、観覧車だけは決まってた。
俺の中の違和感は、どんどん大きくなる。
「ふっか。何か、あった?」
そんなふっかが心配になって、聞いてみる。
「…..ん?何も……いや…..」
ふっかは、1回笑顔になったけど、すぐに首を横に振る。
何か言いたいことがある。
そんな気配を感じ取る。
俺は、静かにふっかが話し始めるのを待つ。
しばらくして、
「俺….みんなが強くなるのがすごい嬉しい。」
って言い出した。
突然過ぎて、何の話かわかんなかった。
でも、すぐにメンバーの話だなって、理解した。
「でも…..なんか、寂しいな…..」
「……」
次に見せた、ふっかの横顔は、すごく綺麗だった。
今にも消えてしまいそうな、切ない笑顔。
その笑顔を見ると、苦しくなる。
今すぐに、抱きしめてあげたい。
どこにも行けないように、話さないように強く。
……それが、できたら良かったのにな…..
俺らは、そこまでの関係にはなれない。
信頼してる同士だからこそ、できないんだ。
超えちゃいけない一線が、見えないけど、たしかに存在してる。
悔しい。
それがすごい、悔しい…..
俺が、言葉を出せずにいると、ふっかは俺の方に顔を向けて、苦しげな表情で、
「照…..俺、ね….」
「おかえりなさ~い!」
ふっかが何か言いかける前に、いつの間にかゴンドラは地上にたどり着いていた。
そこからは、特に会話を交わすこともなく別れた。
「今日はほんとにありがとね。楽しかった。」
そう言って背中を向けるふっか。
そんなふっかを、なんか見てられなくて…
「ふっか!!」
大きな声で、ふっかの名前を叫ぶ。
でも….
「…..また、ね…」
それしか、言えなかった。
その日、もし俺がふっかのことを抱きしめることができてたら….
ふっかに、無理やりでもいいから本音を吐かせるべきだった。
それが出来なかったのは、あの時の関係性を壊したくなかったから。
あの、幸せな時間が….壊れると思ったから。
俺が…弱かったから….
「ふっかは、ずっと俺らに助けを求めてた。壊れてる?俺らが壊した?たしかに、そうなのかもしれない….」
岩本が一呼吸置く。
全員の視線が岩本に集中している。
「でも、ふっかはずっと壊れてたわけじゃない!!少なくとも、俺と一緒にいるふっかは、本物だった!」
はっきりと、深澤はここにいなくても、深澤に届けるように。
「…….」
しばらくの沈黙。
そして、
「ふふふふふふふ…..」
男は、不気味に笑いだした。
「まさか、助けを求めてたなんて…..」
男は、視線をしっかりと”岩本”に合わせる。
「本当に救いようがないなぁ…..」
男は、静かに指を鳴らした。
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#めめなべ