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#僕のヒーローアカデミア夢小説
フィオナに招かれて、全員が丸太小屋に入っていく。
ガルドとふたり暮らしをしているそうだが、それにしては十分な広さがあるようだ。
「素敵なお家ですね!」
華美な大聖堂にいたせいか、素朴な感じが魅力的に映ったのだろう。
メルヴィナはあちこちを眺めながら、うきうきとしていた。
「メルちゃん、他人様の愛の巣をそんなに見るものじゃないよ」
「ぶほっ!?」
アリアの言葉に、ガルドが思い切りむせる。
「……失礼なことを言うな。オレとフィオナ様は、そんな関係ではないぞ?」
「え? フィオナさんって、若奥様って感じですけど~?」
焦るガルドに、いやらしく煽るアリア。
ザインはそんな光景を見ながら、アリアの沼に引き込まれていくガルドに同情をしていた。
「聖女ということは隠しているので、近隣の方からも夫婦だって思われているんです。
ずっとこうなのに、ガルドは全然慣れてくれなくて」
そう言いながら、フィオナはお茶を淹れた。
ずっと屋外で話していたので、その温かさが身体に染み入ってくる。
「まったく、フィオナ様は……。勘弁してください」
ガルドは仕方の無さそうに、フィオナに目を向ける。
お茶が行き渡り、食卓のテーブルに全員が着くと、改めてフィオナが話し出した。
「改めまして。私が聖女のフィオナです。皆さまは、私に何か用事が?」
アリアは自己紹介を3人分してから、フィオナの質問に答えていく。
「フィオナさんには、あたしが個人的に用事がありまして。
あと、ガルドさんの引き抜きに」
「あら。私とガルドの両方に、ですか? アリアさんは欲張りですね♪」
どこかゆるい……。どこか捉えどころのない……。
ザインはフィオナに、アリアのような性格を感じていた。
「さっきも言ったが、オレはフィオナ様の元を離れんぞ。
それに教団と関わるのも、もう嫌なんだ」
ガルドは、アリアとメルヴィナを見ながら言った。
「あたしがガルドさんを引き抜きたいのは、教団のためじゃなくて、あたしのためなんですよね。
それと――」
「私も大聖堂を辞めたの。だから、教団とはもう……無関係よ」
「そう……でしたか」
メルヴィナの言葉を聞いてから、ガルドは静かにお茶を口に運んだ。
いつもよりゆっくりと……カップを持っている間、いろいろな考えを巡らせているようだった。
「――とにかく、個人的な用事でも、教団と無関係でも……。
オレはここから、離れるわけにはいかない」
そんなガルドを見ながら、フィオナは話を変える。
「ガルドのことは少し置いておいて……。私への用事、というのは何でしょう?」
「はい。それは――」
アリアの言葉に、全員の視線が集まる。
「――その前に、夕食にしませんか? あたし、お腹が空いちゃって!」
ザインとメルヴィナはずっこけた。
「お前……。遠慮とか無いの?」
「まぁまぁ。フィオナさん、台所を貸してもらえませんか? 料理はあたしが作りますので」
「誰かの手料理が食べられるなんて嬉しいわ。ガルドは料理ができないから」
「おいおい、旦那。今の時代、男でも料理くらい作れないとなァ?」
「フィオナ様に粗末なものは出せんだろう……!」
「急には無理だが、何年もあったらできるんじゃないかなァ~?」
ザインとガルドのやり取りに、フィオナも嬉しそうだ。
「うふふ。ガルドったらあんなに楽しそうに……」
「楽しくなんてありませんッ!」
「あはは。フィオナさん、それでは一緒にお料理しましょう!」
「はい、よろしくお願いします♪」
アリアはフィオナと、ザインはガルドと話を続けている。
メルヴィナは一瞬、どちらに入るか迷ったが……とりあえず、女性陣に混ざることにした。
台所は綺麗に整えられていて、完璧な状態だった。
アリアはしきりに感動している。
「急に来たのに、綺麗にしてますね~!」
「そう言われると、お恥ずかしいです~」
……ちなみに男爵家の息女であるメルヴィナは、あまり台所に立ったことがなかった。
大聖堂でも、食事といえば誰かが作って、勝手に出てくるものだったのだ。
「私は……こういうの、苦手でして……」
「メルちゃんの苦手分野、発見~! それじゃ、少しずつ覚えていこうか!」
「は、はいっ!!」
「メルヴィナさんって、貴族の方なのに……素直なんですね?」
フィオナはメルヴィナに、優しく微笑みかけた。
メルヴィナはそれを見て、途端に照れてしまう。
「はいはい。それじゃ早速、作っていきますよー」
「はい、完璧に覚えます!」
その言葉を聞いて、アリアは少しとぼけた顔をした。
「今回はあたしの特別料理だから、全体的な流れだけ覚えようかー」
「はい! ……特別料理まで持ってるなんて、アリアさんは料理が得意なんですか?」
「ふふふ。持ってるレシピは1万を超えるからね……!」
「そうなんですかー」
「とっても研究熱心なんですね♪」
メルヴィナは話を若干流していたが、フィオナはまともに反応していた。
よくよく考えてみれば、毎日3食、違うものを作り続けても……9年以上かかるのだ。
「それで、今日作るのは何ですか?」
「今日の献立は、アマーだよ!」
「……何ですか、それ?」
「カレーって知ってるでしょ?」
「はい。家庭料理の鉄板ですね」
「アマーは、あれの甘い版だよ」
「……想像が付きません。シチューみたいな感じですか……?」
「そんなこと言ったら、シチューに怒られちゃうよ!」
いつの間にか、アリアとメルヴィナが中心になって進んでいるので、フィオナは調理器具の準備を始めた。
フィオナはずっとガルドと暮らしていたため、誰かが話しているのを見るだけで、とても楽しくなってしまうのだ。
「それでは早速~。
まずは野菜を切って~。玉ねぎを炒めて、肉も炒めて~」
「ふむふむ……」
「ジャガイモとニンジンを入れて~。水を入れて~、柔らかく煮込んで~。アクはちゃんと取ってね!」
「へぇ……。こんなことをするんですね……」
「メルヴィナさん、これはカレーの作り方と同じですよ」
「なるほど……」
フィオナはメルヴィナの横に立ち、アリアの手順を説明してくれる。
「野菜が柔らかくなったら、火を止めて~。
特製の調味料をこれでもかと入れて――……はい、完成!」
「えぇ!? そんなに白い粉を大量に入れて、大丈夫なんですか!?」
「……これは私にも、分かりませんね。何しろ、アリアさんの特別料理ですから♪」
「美味しいですよ~★」
アリアとフィオナの言葉に――
メルヴィナは、料理ってそんなものなのか……と思ってしまうのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ザインは台所の近くの柱にもたれ掛かり、ガルドと話をしていた。
台所では女性陣が楽しそうに会話をしている。
たまに、アリアが危なそうなことを言ってはいるが――
「あまり、聞き耳を立てるのは良くないと思うぞ?」
「いやぁ……。何を話しているのか、気になるから……」
ザインの言葉に、ガルドは仕方の無さそうに答える。
「職業柄、というのもあるのだろうが。
しかし……伝えるべきことは伝えてくれる、仲間なんだろう?」
「……いや、そうとも限らないんだよなぁ」
特にアリアは、未だに多くの謎を持っている。
ただ最近は、しっかりと聞けば……少しくらいは、答えてくれているような気もする。
「仲間は信じた方が良い。オレが言うのも、何だがな」
ガルドの年齢は30代であり、ザインよりもひとまわりも上だ。
そんなガルドの、確かな忠告――
「まぁ……、そういうもの、なのかもな」
「……ああ、そういうものさ」
ザインとガルドの話はそこで止まった。
しばらくすると食卓には料理が配膳されて、夕食が始まる。
「今日はあたしの特別料理、アマーです!」
「……なに、それ」
「シチューのようにも見えるが……何かが違うな」
ザインとガルドは不思議そうにしながら、ご飯とソースをすくって食べる。
「甘ぇ!! すっごくあめぇ!! ……でも、んまい!!?」
「うむ……、不思議な料理だな。アマー……というのか」
「メルちゃんも、たくさん食べてね。食べるまでが料理だよ!」
「そ、そういうものですか……? では、たくさん頂きます!」
「そうそう、その調子~♪」
思いも寄らぬ美味しさに、ザインもメルヴィナも、ガルドも次々と食べ進めていった。
反面、アリアは珍しく小食で、フィオナは味見をしたからと……やはり小食だった。
何となく不思議に感じながら――甘いものをたくさん食べたせいか、ザインたちは睡魔に襲われていった。
「……ふふふ。みんな、お疲れですねぇ」
「甘いものを食べると、眠くなりますし……ね?」
フィオナはアリアに、悪戯な笑みを浮かべた。
「あたしの、特別製……ですからね♪」
アリアも負けじと、悪戯な笑みを浮かべた。
甘いものを大量に食べると、急激に眠気が襲ってくる……。
睡眠薬などは盛っていない。単純に、甘さで全員を殴って寝かせ付けたのだ。
「――それでは、本題に入りましょうか?」
「はい、是非とも。あたしからの話は――……あなたの力。異能の譲渡、についてです」
「……何か、誓約は必要ですか?」
「はい。ここから先は、長い話になりますので」
フィオナはアリアを連れて、2階の自室に案内した。
他の3人は相変わらず、今も夢の中……だった。
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