テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
携帯を見ても、侑哉から遅くなるという連絡は無い。
けれど、私は明日は早番だからこれ以上待っていられない。
テレビドラマをBGMに一人ご飯を食べながら、思い出すのはあの部長とのキス。
部長は私の何処までを受け止めてくれるんだろうか。
こんなに重くてじめじめしたやつのどこを。
――あの夜を知っても軽蔑しないでくれるのかな。
「……」
ダメだ。
やっぱ一人で居ると悪いことばかり考えてしまう。
今までどんなに自分が流されて生きてきたかが思い知らされる。
あんなに部長に背中を押して貰いながら、努力せずにこのまま居たら、本当に部長は愛想尽かしてしまうかもしれない。
ちょっとお行儀悪いけど、スマホを弄りながら少し油を吸ってしんなりした海老フライに被りつく。
近くの産婦人科を調べながら、ポテトサラダに手を伸ばすと、やっと玄関でバイクの音がした。
あと10分ぐらい待ってあげてたらよかったと思いつつも玄関を開けて出迎えた。
「おかえりー! 遅かった……」
『ね』という語尾が小さくなるのを感じながら、意気消沈しているのが丸わかりの侑哉を見上げた。
泣きだしそうな、子どもみたいな拗ねた瞳をゆらゆら揺らしている。
「どうしたの? 侑哉」
「みなみ……」
尋ねたのに私の名前を呼んだだけで、
侑哉はヘルメットを投げだしてこっちに向かってくると、
ただただ無言で私に抱きついた。
「ちょっと、侑哉、重いって!」
やんわり笑いながらそう言うが、大きい侑哉に抱きつかれると身動きもとれやしない。
何も言わない侑哉は、ただただ私に抱きついたまま、少しだけ震えている。
仕方なく、軟らかい髪の毛を撫でながら、玄関から見える月を見上げた。
風でヘルメットがコロコロ揺れている。
何があったのか言えないのかもしれないけど、受け止めてあげられたら……と、思う。
あの夜、私を受け止めてくれた侑哉のことを。
「良い匂いがする」
「うん。海老フライと唐揚げだよ」
「――そっか、俺お腹空いてるのかも」
「温めてあげるよ」
「――ありがとう」
そう言うと、熊みたいな大きな体を起き上がらせ、転がって行ったヘルメットを探しに行く。
その背中も明らかにいつもみたいに元気がなかった。
大盛りご飯に、海老フライと唐揚げもてんこ盛りにして席に置くと、やっと少しだけ笑ってくれた。
――苦笑いだけど。
「俺、流石にこんな食えないよ」
「えっ? 前は食べてたよね」
「いつの話だよー。もう」
苦笑しながら、一口で唐揚げを飲み込む姿を見たら、食べれそうな気もするんだけどな。
サクッサクッ
侑哉はただ黙って平らげていくから、私も向かいの席に座って、食べはじめた。
でも侑哉の食べっぷりを見ていたら、何故かもうお腹いっぱいなるから不思議だ。
「みなみ、それ食べないの?」
ほっぺをハムスターのように膨らませながら、侑哉は私のおかずを見つめるので、お皿ごとあげた。
幸せそうに頬張るから、まあ許してやろう。
「ん? まだ仕事すんの?」
「うん。日曜日の水族館のレポートを、ね」
レポート用紙を取り出しながら、うみたまごのパンフレットを取り出す。
いつの間にか買った自分へのお土産シャーペンで書きだし始めた。
「今日」
「…ん」
「明美がこの前の合コン男とホテルに入って行った」