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とある所に双子の子供が産まれました。

しかし2人には大きな違いがありました。

片方は生まれながらのてんさい。片方はその七光りにもなれない落ちこぼれ。

本人達の気持ちとは裏腹に周囲の大人達によって彼らは離れ離れに…

てんさいの片割れは大切に大切に育てられ、

おちこぼれの片割れは虐げられ成長した。

そんな彼らは義務教育を受けるべく、同じ歳に入学する事になる。

てんさいの片割れはおちこぼれの片割れの存在を知らない。

おちこぼれの片割れはてんさいの片割れを知っている。けれど、おちこぼれがてんさいに興味を示すことは無い。

なぜなら血の繋がっただけの存在を、家族と認めていないからだ。

ただ、同じ腹から生まれ落ちただけの仲。

彼にとってはただそれだけだった。




朝の少し張りつめた空気。横から照らす太陽。そして動植物の奏でる音……爽やかな朝だ。

毎日朝の運動後は、木に登り朝の空気を感じる……私の数少ない生活の中の楽しみだ。

この木の枝は太く上部で寛ぐのに丁度いい。幹を背もたれにし片膝を曲げ枝の上に置き、反対側の足はだらんと木の枝から下ろした格好で座る。


そんな穏やかな時間も、侵略者によっていつも邪魔される。


「おーい!八光り!」

許可した覚えのないあだ名で呼ばれる。

またアイツか……全く何が面白くて絡んでくるのか……

無視すると口だけでなく手も出てくるし……はぁ……面倒臭いけど反応しとくか……


「そのあだ名…許可した覚えないんだけど…」


木の上から覗き込むと、腕組みをしてこちらを睨みにけている人物が見えた。

やや小ぶりなつり目に、茶髪のおカッパ。のっぺりとした起伏のない顔。その頬と鼻にはそばかすが散りばめられている。


「うるせぇぞ!落ちこぼれ野郎!反応してる時点で認めてるようなものだろうが!グダグダ抜かすな!」


ちゅんこらちゅんこら煩いこいつは、同じ傭兵団で働く序列13。何故かいつも俺につかかってくる。実力はそこそこだが……態度が大柄な為煙たがられている。


「おい……13番。お前また8番にそんな態度とってるのか……?」


お、この声は…丁度いい所に来てくれた!

短く切りそろえられた深緑の短髪に、切れ長の金色の瞳。肌はやや浅黒く大柄で筋肉質。いつもフード付きの丈の長い黒い服を着ている。


「おー……7番じゃん。今日は君なの?」

体の向きを7番と13番の方に向き直す。

「あぁ……いつも悪いな……」

そう言って真っ直ぐこちらを見つめる瞳。彼は裏表がないから好ましい。


木の枝から降りようとすると、7番が手を差し伸べた。その手を掴むとふわりと引っ張られその腕に収まった。


「エスコートどうも。さすが我が組織1の紳士様。」

「……?…そうか?当然だと思うが…」

コテンと首を傾げる7番。その見た目に似合わず中身は純粋な子供のようだ。

「ふはは!あぁ本当に君のそういう所は好ましいなぁ……ヨシヨシ……」

そう言って頭をもみくちゃにする。7番は黙ってされるがままだ。

短くて少し固めの毛質。ついつい触りたくなるんだよなぁ……


「……ちっ」

舌打で13番の存在を思い出す。

7番の肩越しに覗き込むと、やや俯きこちらを睨んでいた。

(おお……怖……)

覗き込むのをやめて7番の腕の中に戻る。


「保護者同伴でないと何も出来ないくせに……誰かがいないとダメなやつのクセに……」

ブツブツとそのような事を呟く13番。

バツが悪いからか、踵を返してその場からソサクサと遠のいてゆく。


「保護者……ねぇ……?」

腕を組みチラッと目線だけを動かし見上げる。

がっしりとした太い首と骨格。傍から見たら7番の方が年上に見える……だが実際は……


「ねぇ……」

7番から話しかけられ見上げる。

「姉貴……俺……姉貴を馬鹿にするアイツ……不愉快だ……」

むっとした表情で話す7番。

2人きりの時のみ私は、彼から姉貴と呼ばれる。当然彼とは血は繋がってはいない。


「あんな奴の言う事気にしなくていーの。」

そう言って頭を撫でると満更でも無い様子。

「姉貴が気にしないなら……いいか……」

納得した様子で再び目線を前に戻す7番。素直でいい子だ。


「さてと……今回はどんな厄介事を押し付けられたんだ?」


そう言うと立ち止まり、俯く7番。

おっと……これは嫌な予感……


「……表の世界……アカデミーへの入学……」

「え?」


予想外の単語にピタッと止まる。

「ア、アカデミー?!」


「うん……誰かとペアでって言われて……姉貴を指名したら……許可降りて……」

はぁぁぁぁ……あのたぬき爺……私が断ったら次は7番に押し付けやがって……


1週間ほど前、たぬき爺…まぁこの組織のトップに打診されたとある依頼があった。

だが断った。何故ならそこには私が会いたくない人物が居るからだ。

合うと確実に面倒なことになる。


「姉貴あまり目立ちたがらないし……表の世界苦手なこと知ってる……でも……」

眉を下げ、肩を落とし見るからに落ち込む7番。

あの爺……7番の頼みを私が断れないと踏んで……


「姉貴とアカデミー通うの……想像したら……楽しみで……」

うっそんな小動物のような顔で言われたら……

断れない……


それに


これもいい機会かもしれない。いつまではいけないと分かっていた。ここらが潮時なのかもしれない。


「可愛い弟の願い……お姉ちゃんが叶えよう!」


トン。と7番の胸板に軽く拳を当てる。


「!!……楽しみだ……✨️」

ぱぁ…と表情を明るくさせる7番。


「そうと決まったら…雇用主に会いに行くか……」

いろいろ・・・・言いたいこともあるしねぇ…… )


こうして私はもう通う機会はないと思っていたアカデミーへと入学する事となった。



愛は異な者変な者

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