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二〇十九年 四月
私立桜ヶ丘高校に通い始めること一週間が経った。
私の名前は加藤ネネ、四月から高校に入学し念願のJKになった。
私はアニメや漫画を見て育った生粋のオタクだったが、外見的には無事高校デビューを果たすことに成功し、憧れだった高校生活にもようやく慣れてきた。
初日にとにかく話しかけたことが功を奏したのか、インスタグラムや連絡先を交換できた人も男女別に何人かいて友達ができたので、ほっとしていた。
しかし、そんな高校生活の中で一つ気になることができた。
それは、私のクラスを受け持つことになった担任のことだった。
彼の名前は齋藤達也、年齢は20代後半、身長は178cmくらいで痩せ型の体格をしている。
眼鏡をかけていていかにもエリートサラリーマンといった感じだが、イケメンと表すに相応しい顔のパーツやルックスの持ち主で、カッコよくて当たり前だがまだ若々しい。
それでいて面白さも兼ね備えている彼は男生徒女生徒どちらからも人気を確立していた。かくいう私もそのひとりだ。
担当教科は数学で、私は気がつけば齋藤先生に目を奪われていた。
時々こちらの方をハッと振り向いたり、私をチラッと見つめて「ほーらそこ集中しろよー?」と言うから、胸がドキドキして授業どころではなかった。
聞くところによれば、この高校で勤務してもう5年になるらしいが、先生についての悪い評判は未だに誰も聞いたことがないようだ。
恋に落ちてしまったのかと気付く頃にはもう遅く、常に齋藤先生のことを目で追うようになってしまっていた。
他の生徒が齋藤先生に触れていたり笑顔で話すだけでも嫉妬心に駆られてしまう自分がいた。
そんなある日のこと
ぼっちな私がぽつんと一人で教室の隅っこで弁当を食べているのに気を遣ってくれたのか、先生は私の隣の空席に座ると私に話しかけてきた。
「ネネ、だよな?一緒に食べてもいいか?」
「は、はい。」
「いつもここで食べてるの?」
「はい……」
「そっか……ネネはいつも一人でいるからなんか気になってな。」
先生はそう言って優しく微笑んだ。
瞬間、ふと思った、お願いすればまた一緒に食べてくれるのかなっと。
そう思うと、私は思い切って先生に話しかけた。
「先生、あの……私……」
「ん?どうした?」
「……ぁ、いえ、やっぱりなんでもないです……」
しかし人気者の先生にそんなことをお願いする勇気なんて私にはなく、ただ黙って俯くことしかできなかった。
「そうか?なんか困ったことあったらいつでも言ってな。」
先生は弁当箱を片付け始め、席を立った。
教室を出て行こうとしていたが、不意に私の方に振り返り
「そうだ、ネネさえ良ければまた今日みたいに一緒に飯食べても大丈夫か?」
と聞いてきた。
「え、はい……!」
咄嗟にそう答えると先生は嬉しそうに笑った。
「そりゃ良かった、じゃっ授業がんばれよ~」
扉はガラッと閉められ、1人取り残された私はそれはもう舞い上がっていた。
(これって、また一緒にお昼たべられるってこと、だよね…?)
それからというもの、私は先生によく話しかけるようになった。
先生はいつも笑顔で接してくれて、その優しい笑顔を見るだけで幸せだった。
あるとき、齋藤先生と廊下ですれ違い、
「あの……齋藤先生」
私が声をかけると先生は、んっ?と言って私の顔を見た。
私は緊張しながらもなんとか言葉を振り絞って口を開く。
「数学の宿題で聞きたいところがあるんですけど…」
すると先生は「勉強の相談とは関心だな…そうだな、放課後でもいいなら別教室で待っててくれるか?」と言ってくれた。
「は、はい……!」
放課後、私は言われた通りに別教室で待つことにした。
適当にいつも座っている廊下側の1番後ろの席に着くと、机にシャープペンシルと買ったばかりでありながら角が鼠色に滲んだ白い消しゴム、宿題のプリントを広げて齋藤先生を待っていた。
齋藤先生の優しい顔が脳裏に浮かび、口が緩む。
インスタやLINEを交換した友達はいても、みんな部活動などで忙しなかったりして部員と話す機会の方が増え、特に一緒に弁当を食べることも無く放課後も一人で帰ることが多かった。
別にいじめを受けているわけでもないけど、1人で弁当を食べたり、一人で帰ったりするのはすごく寂しかった。
周りの明るい子たちは放課後は友達とスターバックスに行ったりゲームセンターに行っては男女一緒にプリクラを撮ったりするのだろう
毎日がバラ色の高校生活、そんなみんなが羨ましかった。
でもネガティブで人見知りな私にとっては誰かに話しかけるなんてできっこない。
だから学校に行くのも嫌だった、楽しいこともないし授業も面白くない、学校に行く意味なんてないと思ってた。
だけど、そんな私に優しく話しかけてくれた齋藤先生は、救いだった。
高校生になって初めて、恋というものを知った。これが恋なのかなって
恋愛相談する相手なんていないけど、目が合っただけでキュンとして
同時に照れてしまって目を逸らしてしまうとか