TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

ソ連→日帝です

前のイギリスの話を読んでもらった方がもっと楽しめるかも……

因みに前のイギリスの話より時系列は前です



◇◆◇◆◇



「ねむ……」


目の下に少々隈をつくった不機嫌な顔でソ連は廊下を歩いていた。今日は世界会議が行われる為、二度寝だって出来なかったのだ。

しかもするのは何の進展も起こりそうのない、極めて面倒で生産性のない会議だ。しかもメンツが何かとウマの合わないアメリカと紳士を装う皮肉屋のイギリス、何を企んでいるのか分からない中国、すぐストライキで会議をすっぽかすフランスだ。自然と気分も急降下していく。

しかも、フランスが今日の会議を例のストライキでサボりやがった。自分は眠気と戦いながら必死に来たというのに。今日のウォッカ代はフランスの奴に請求してやる。


「…ウォッカ……あ?空かよ…!」


予め持っていた手元のウォッカ瓶にはもう水滴一つ残ってはいなかった。腹が立って瓶を床に投げてやろうとも思ったが、もしイギリスとかに見られたら揶揄われるし、何よりウォッカの瓶だったので辞めておく。


「…はぁー…最悪だ……ん?」


ふと、中庭の噴水に人影があるのを見つける。その人物は緑色の軍服を身につけていた。

なんだか背格好や着用している服が愛しい人と被り、そうだと良いなと淡い希望を抱きながら近寄った。


「ソ連?」

「に、日帝!」


緑色の軍服に純白の額、そしてその純白を覆うかのような紅の旭日。それはソ連の愛しい人。日帝だった。


「き、奇遇だな!こんな所で会うとは」

「嗚呼、資料を頼まれていてな。ソ連の方は会議か?」

「あ、ああ!会議があって…それで…」


久々に好きな人に会えて、顔に熱が篭もる。相手は極めて冷静な対応をしてくれるのに、当の自分はいつもと違い思うように話せない。

そうか、と優しい表情で返してくれる日帝の顔をマトモに見ることが出来ず、ついつい目線を下にしてしまう。

何か話さないと、会話を続けないと、日帝に意識されない。熱に浮く脳を頑張って回し、どうにか話題を探す。


「に、日帝は誰に資料頼まれてたんだ?」

「アメリカだ」

「え」

「はあ…アイツ、何故か会議の資料を私に頼んできやがったんだ。自分ですれば良いものを」


心底面倒臭いと言いたげな表情で語る日帝に対し、俺は青ざめ硬直していた。

アメリカ。

鎖国していた日帝もとい日本を開国へと引きずり出し、日本という国を世に知らしめた張本人。だからか、日帝とアメリカはよく一緒に居るのを見たことがある。俺は日露戦争での事からあまり表立って絡んだことはなく、いつも遠目で見ていただけだったのに。


「日帝、アメリカと仲良いんだな…」

「アイツと私が!?どこがだ!?」

「ハハ……」


日帝とアメリカの関係が仲良くないとしたら、俺と日帝の関係はどうなっているんだろうな。乾いた笑い声が喉から出る。気分は全く良くなかった。


「ハハ…ハ」

「全く…む?ソ連、お前」

「えぁ!?な、何!?」


先程まで腕を組んでいた日帝が、唐突にソ連の顔を両手で包み込むようにして覗き込んできた。良くなかった気分が急上昇してくる。


「お前……隈が出来ているぞ。寝ろ」

「え」

「そういえば彼処にベンチがあるな。彼処で仮眠でもとれ」


彼処の、と木でできた清潔感のあるベンチを指す日帝。確かに近頃寝不足で隈が出来ている。ソ連としても寝たいことは山々だが、ここは数多ある国々が交差するところだ。そんな所でグーグー眠っていたらいつ寝首を掻かれるかわかったものでは無い。

折角の日帝のご好意だが、これは断った方が良いだろう。


「えと…日帝……」

「ん?どうした?寝ないのか?」

「寝ます」


ダメだった。ソ連は頭は良いが日帝の前でそれは発揮されなかった。

本当にどうするか。寝ますと言った手前今更やっぱり辞めるは絶対言いたくない。あ、待てよ?枕が無いと眠られないと言えばいいのでは?よし、そうだ。そう言ってしまえばいい。


「あ、あの日帝……お、俺枕が無いと寝れないから…」

「嗚呼、それは心配ないぞ」


心配ないとはどういう事だ?日帝は枕を常備しているのか?え、何それ可愛い。

そんなくだらない事を考えている間にベンチに着き、日帝の膝を枕に横にされた。



もう一度言う。日帝の膝を枕に横にされた。


「に、ににに日帝!?」

「どうした?」

「あ、あの!こ、これは!?」

「膝枕だが?」


HI ZA MA KU RA!?!?!?!?いやそんな言は知っている!!どうして日帝は平然としているんだ!?日本ではこれが普通なのか!?


「前にアメリカにやったら普通に寝たから外国では普通だと思ったんだが……」


あの野郎…!!!!!ギリィと歯が嫌な音を立てる。アメリカへの殺意で目の前が真っ赤に染る。


「ソ連、嫌だったら辞めるか?」

「あ!だ、大丈夫だ!」


そんな赤も日帝の言葉で簡単に霧散してしまう。日帝は多分魔法使いだ。いや祈祷師と言うやつかもしれない。

なんだが日帝と話していたら、怒りとか悲しみとかそんなのがまるで無かったかのような気持ちになる。心の穢れを祓い、相手に安らぎを与えてくれる。とても心地よくて辞められない。ずっと話していたい。

でもそんな思いとは裏腹に、更に折角日帝と2人きりだと言うのに、どんどん意識は薄れていく。


「ん……」

「ソ連、眠れそうか?」

「……寝たくない」

「ダメだ。眠れそうなら、このまま寝てしまえ」


日帝の声が鼓膜を震わせ、思考と共に脳を溶かす。中庭を柔らかく照らす日光がポカポカ暖かく、布団の代わりと言っても過言では無い。

油断すると眠ってしまいそうだ。

それを見かねてか、日帝は子供にやるようにソ連の頭を優しく撫で始める。そうしながら『寝てしまえ』と悪魔のような甘い囁きをしてくる。

いやだ。まだ起きていたい。まだ話していたい。

のに、


「……スー…」

「……寝たか。ふふ、子供のようだな」

「にってー!」

「…フランス、少し声量を落としてくれ」

「そう言われると…ってソ連寝てるの?」


嗚呼、と眠っているソ連の頭を撫でる。フランスはよっぽど驚いているのか、お得意の天ノ弱が発動していない。


「というかフランス。お前今日はストライキせずに来たんだな」

「いや?会議をストライキしたから資料だけ貰いに来たの」

「そうか……」


なんでもない様な顔で言う彼女に、連合の気苦労を考え軽く同情する。今頃昔からの喧嘩仲間であるイギリスが小言を言われているのだろう。不憫だ。


「というか、ソ連寝ちゃってるんだ。珍しー」

「……なあフランス」

「なあに?」

「ソ連は私の事が怖いのだろうか…」

「え?何で?」

「私と喋る時、ソ連は目も合わせないし、若干焦っているような感じがする。会議中でも視線を感じるし…」

「ふーん………ん?それって……」


愛と美の国を自称するだけの事はあるのか、フランスはそのソ連の意図をすぐに見破った。恋の予感…女の勘と言うべきか。


「…コイツ可愛いとこあんじゃん」

「フランス?」

「何でもなーいよ。あ、もう私行かないと」

「もうそんな刻か?」


イギリスが来ちゃうかもでしょ!?とフランスは急ぎ足で去っていった。日帝はそんなフランスに小さく手を振り、見送った。



◇◆◇◆◇



「フンフフンフフーン♪」


鼻歌を歌いながら軽やかな足取りでフランスは歩いていた。別にイギリスから逃げてはいないし、もし会ってもアイツのお説教なんか適当に流してやれば良い。それよりも……


「アイツが日帝にねぇ…フフッ」


あまりの不器用さとそれによる子供じみた可愛さに、思わず笑みが溢れる。いつもはクールで毒突く癖に、好きな子の前でだけ不器用な子供になるなんて…何て可愛らしいんだろう!


「しょうが無いから、恋のキューピットになっちゃお!」


イギリス野郎より幸せにしてあげられそうだもん。軽やかな…どころかスキップして、フランスは2人の幸せを心の奥で願った。









このX年後、フランスはイギリスのお茶会に参加した。

そして知った。自分は愛と美の国でありながら、あの2人のキューピットになる事も、なる資格さえ無いことも。


「ブリカスが……」


フランスは後悔した。



◇◆◇◆◇



こんにちは由珠でっす!

ソ連と日帝がくっつかなかったのでバッドエンド!

次はロシアとアメリカを地獄へ落とす!!

loading

この作品はいかがでしたか?

1,070

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚