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コメント
1件
何で知っているんだろうね
「優子……!」
廉の呼ぶ声に振り返ると、どことなく切羽詰まったような彼に、優子は身体ごと向かい合った。
「この後…………時間……あるか?」
「え……ええ。後は帰るだけなので……」
「ならば…………君と話がしたい。いいだろうか」
突然の誘いに、優子は躊躇うけど、そういえば三年前、客と売女として廉と数年振りに再会した時も、同じような事を言われたな……と、朧気に思い出す。
「分かりました。でしたら、広場の隅にあるベンチに座って、待っててもらってもいいですか? これからマルシェの運営担当の方に挨拶してくるので」
「分かった。待ってる」
優子は彼に会釈をすると、運営事務局に向かい、挨拶に向かった。
空が紫紺に染まり、エストスクエアと周辺の建物も光の粒子を纏い始めた頃、優子と廉は、地下広場のベンチに腰を下ろしていた。
広場と、すぐ近くにある噴水は、間接照明の柔らかなライトアップに包まれている。
噴水から注がれている水の音が、清涼感を運び、三年振りに再会した二人は、言葉を交わす事もなく、黙ったままだった。
「…………いきなり電話して……驚かせてしまって、すまなかった……」
廉が沈黙を裂くように、唇を小さく緩ませた。
「ビックリしました。私、専務とメッセージアプリを教え合った事を……すっかり忘れてたので……」
優子は、スマートフォンを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。
廉のページに記されている携帯番号を見て、あれ? と思う。
優子はすぐに着信履歴で、直近の番号を確認。
彼からアプリ経由で掛かってきた番号と、その前に彼女のスマートフォンに直接掛かってきた番号と同じだった事に気付いた。
なぜ、廉が自分の携帯番号を知っているのか。
優子の新しい携帯番号を知っているのは、拓人だけのはずである。
(まさか……アイツが専務に……)
彼女は、胸の内を悟られないように、廉に尋ねる。
「もしかして……アプリ経由で電話をくれる前……私の携帯電話に…………直接電話をしてくれたのは…………専務だったんですか…………?」