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「ああ。電話したのは、俺だよ」
彼女の問い掛けに、廉は観念したように、微苦笑を浮かばせている。
「何で俺が、君の新しい携帯番号を知っているのか。優子は、そう思ってるだろ?」
優子は黙ったまま、コクリと肯首させると、彼は、噴水に視線を向けた。
「実は、アイツが亡くなる何日か前に、電話が掛かってきたんだ」
「……え? アイツ…………専務に連絡を取っていたんですか……?」
彼の言葉に、彼女は瞳をジワジワと見開かせていく。
拓人がいつ、廉に電話をしたというのか。
少なくとも、一緒にいた時は、誰とも連絡は取っていなかったはず。
出先で彼女が化粧室などに行っている間に、連絡を取ったのか、もしくは、自分が寝ている間に、廉と連絡を取った、としか考えられない。
「あの時、アイツは神戸にいるって言ってたな。その時に…………頼み事をされたんだ」
「頼み事……」
「ああ」
廉は一度俯きながら逡巡すると、徐に顔を上げ、淡々と話し始めた。
***
拓人から電話があった時、廉は、そろそろ就寝しようとしていた。
立川のホテルで、優子を巡るトラブルの件で、謝罪してきたという。
『廉。あんな事をした俺が言うのも、おこがましいんだが…………頼みがある』
『…………頼み?』
『…………ああ』
電話口から聞こえてきた拓人の声音に、いつになく真剣さを感じた廉。
『俺は今、以前手を染めた闇バイトの組織から追跡され、命を狙われている』
『…………何だって!?』
『立川でホテル暮らしをしていたのも、都内にいたら見つかる可能性が高いと見て、郊外でも大きめな街の立川を、潜伏先にしたんだ』
廉は、拓人が以前言っていた『ワケあって立川にいる』の意味を理解する。
『俺を追っている実行犯が、警察に捕まるのが先か、俺が実行犯に捕まって、口封じをされるのが先か。ここまで来ると、後は時間の問題と思っている。こんな状態というのもあって、俺は七月いっぱいで、女風の店を閉店して、円山町の建物を手放した。この前、東京に戻ってきた時、支配人と従業員に話を付け、諸手続きを済ませた』
『…………マジか』
まさか拓人が、自身の店を手放すとは思わなかった廉は、瞠目しながら、スマートフォンを握り直す。
『そこで、廉に頼みたい事が…………二つある』