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有栖
1,008
病院に運ばれて処置を受けた蓮は、命に別条はないとのことだった。けれど、過度の栄養失調と睡眠不足によって内臓機能にまで影響が出ているそうだ。
今は点滴を受けてぐっすり眠ってる。
連絡を受けた蓮のご家族が駆けつけて、お役御免かなと病室を出ようとした時にお母さんに呼び止められた。
「この子が起きた時、側にいてあげて欲しいの」
「え…でも」
「蓮は、佐久間くんがいないと駄目だから」
蓮のお母さんはそう言って笑うと、ケージに入って外でマネージャーと一緒に待ってたモコちゃんを引き取って一旦帰っていった。
蓮、お前さ。お母さんに俺のこと何て言ってたんだよ。
何かちょっと恥ずかしい。
点滴をして落ち着けば目が覚めると言われたから、ベッドの側に椅子を置いてずっと待ってる。
家の中で見つけた時より顔色も良くなった。
「蓮、俺さ…お前に伝えなくちゃいけないことがあるんだ。だから…早く目ぇ、覚ませよ…」
祈るような気持ちで待ち続けて数時間が経った頃。蓮の瞼がぴくりと震えて、ゆっくりと開かれた。
ぼんやりと天井を見ていた目がゆっくりと辺りを見回して、俺を見付けてぴたりと止まる。
「…さく、ま…くん…?」
「おはよ、蓮…」
水分も必要最低限しか飲んでなかったみたいだから、声がカサカサだ。
「…夢じゃ、なかったんだ…」
「うん…。合鍵勝手に使った、ごめん…」
「ううん、心配して来てくれたんでしょ…? ごめんね」
「蓮が謝ることなんてないだろ」
「自己管理出来てなかったのは、自分の責任だから…佐久間くんの手を煩わせてごめんね…?」
「そうじゃ、ないだろ…」
不思議そうに俺の顔を見た蓮が、軽く目を見張った。そんな蓮の表情もどんどん滲んでいって、頬を涙が伝っていったのが分かる。
こんな時に泣くのは卑怯だ。でも、溢れてきて止まらない。
「佐久間くん…?」
「飯は食わない、睡眠も取らない。おまけに水分補給だって最低限。こんなの自己管理以前の問題だからな…っ!」
「…そう、だね」
「…倒れてる蓮を見つけた時、すごい怖かった。蓮がいなくなっちゃうって、そう、思って…っ」
「…ごめん」
「……いなくなるつもり、少しあっただろ。蓮は覚えてないかもしれないけど、俺の顔見て『最後』って言ってた。あれ、死ぬの覚悟してなきゃ出てこないだろ」
「……っ、ごめん…」
そう言って蓮は俯いた。申し訳なさそうな、悲しそうな顔で。
やっぱりそうだった。
食事が摂れなかったのは精神的なもので故意ではないにしろ、じわじわと死に向かってるのに気が付かないはずがない。
消極的な自死とも言えるかもしれない。
そこまで蓮の精神を不安定にしたのは、俺だ。
「…まだいなくなりたいなら、そうしてもいいよ。でももし、蓮が死んだら…その後すぐ俺も死ぬから」
「…なに、言って…」
「蓮がいない世界で生きたくない。だからもし死ぬなら、俺も連れてって」
「そんなこと、出来るわけないだろ…っ」
「だったら、自分でやる。頑張って付いていくから。だから…置いていかないで…」
「佐久間くんは、俺の分まで生きてよ…」
「やだ。蓮がいないのに、無理…っ」
「……だったら何で、俺の手を離したの…っ?」
悲しそうに言った蓮の目から涙が溢れ落ちる。
真っ直ぐなその視線から逃げたくなったけど、蓮に本当の気持ちを伝えないといけない。
「…怖かった。きっと蓮は、これからもっと有名になって人気だってすごいことになる。そうなった時、変わらずに好きでいて貰える自信がなかった…」
「…それが、本当の理由…?」
「蓮の為って言ったけど、本当は…自分が怖かっただけなんだ…。ごめんな、蓮…弱くてごめん…っ」
ぼろぼろ溢れてくる涙を見せたくなくて、両腕で顔を隠す。
何より、蓮の反応を見るのも怖かった。
こんな弱くて卑怯な俺なんて、さすがに愛想を尽かしたかもしれない。
ふわり、と。髪に何かが触れた気がして顔を上げる。
視線の先には、柔らかく微笑む蓮とそっと俺の髪を撫でる指先があった。
「佐久間くん、俺のこと好き…?」
「ん、好き…蓮と心中したいくらいには」
「ふはっ…思ってたより全然重かった。俺も好きだよ。振られたら生きる気力無くなっちゃうくらいには」
「う…ごめん…」
「謝らなくていいよ。それより、もっとこっち来て」
伸ばされた手に誘われて、蓮の首に腕を回して抱きついた。片腕はまだ点滴をしてるから慎重に。
蓮の空いてる方の手が俺の背に回される。
「また俺の側にいてくれる…? 今度はもう二度と離してあげられないと思うけど…いい?」
「ん、離さないで…? 蓮がどんだけ想ってくれてたか分かったから、俺だってもう絶対離れない」
少し体を離して、蓮の顔をじっと見つめた。顔色はまだ悪い。でも、どんよりと澱んだ昏い目じゃなくなっている。
恋を雄弁に語る、柔らかくて優しい俺の大好きな蓮の目だ。
嬉しくなって目元にちゅっとキスを落とす。
くすぐったそうに笑った蓮が、俺の頬に手を添えてゆっくりと撫でた。
「そこじゃないよ。こっち…」
「ん…っ、蓮、好き…」
「愛してるよ、大介…」
何度も唇を合わせるうちに、どんどん深く激しくなっていく。
蓮が目覚めたことを知らせるナースコールがしばらく後になって、ちょっとだけ怒られたのはまた別の話だ。
俺の臆病な心が選んだ選択が、もう二度と蓮を苦しめることがないように。
これからはより深く強く、蓮を想い続けよう。
大切なものを失ってから気付くなんて、そんなのごめんだ。
愛してるよ、蓮。
だから、蓮もいつまでも深く強く俺を愛していて。
ずっと少し鬱々とした話が書きたくて、ようやく形になりました
でもハピエンじゃないと無理だし、更に長引かせると自分の精神衛生によくないし
そんなわけで少し短めのあっさりした感じで終わりましたw
そして相変わらずうちのめめもさっくんも愛が重い…!!
今回しょっぴーが当社比で活躍してますが、こうやって強めの発破をかけてくれるのはしょっぴーかなと思いました
ふっかさんだともっと優しくなっちゃうし、阿部ちゃんや舘様もさっくんの気持ちを考えてしまうかなと
今回のお話は強めの言い方で背中を押したかったので、しょっぴーの出番になりました
暗めの話は久々でしたが、大丈夫かなこれ
次は明るい話を書こうかなーと思ってます!何かのパロ系とかもいいなぁ
コメント
6件
個人的にめめは愛重めで執着が似合うと思ってるから最高ですわ(>ω<*)ਭ₹💕 でも胸痛くて涙出たぁ~(*T^T) そして反省 私も早く書き上げないとね💦 水瀬さんみたいに上手くまとめられないけど、やっぱり最後はHappyが良い もう2度と離れる事の出来ない2人に祝福を☆ミ


完成おめでとうございます🎊 今日読み始めたときは、「おお…それ系の内容かぁ。」と思ってソワソワしまくってましたよ。長引くと想像が止まらなくなってしまうので。 最後は本当に良かった!って思いました。 2人が幸せにならないなんてあり得ないが私も基本方針なので😆 毎回こちらの気持ちが右往左往していますが次回も楽しみにしています。