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蟹溝@プロフ必読
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theBanlandsの最果て。
ブライトアイズを縛っていた封印を解き、ハックロードの「憎悪」を「愛」へと変えようとしていた、その瞬間だった。
世界が、止まった。
先ほどまで吹き荒れていた怨念の風が、まるで何者かに命令されたかのようにピタリと消える。
「……?」
1x1x1x1が顔を上げる。
その直後。
彼が従えていた緑のゾンビたちが、次々とその場で凍りついた。
「……オオ……?」
次の瞬間。
パァンッ。
ゾンビたちの身体が無数のデータ粒子へと分解され、跡形もなく消えていった。
「なっ……!?」
1x1x1x1の赤い瞳が見開かれる。
「俺のゾンビが……一瞬で……?」
ビルダーマンも、ドゥームブリンガーも、そしてテラモンも、言葉を失った。
空が鳴った。
ゴゴゴゴゴゴ……。
暗紫色だったtheBanlandsの天空に、一本の亀裂が走る。
それは次第に広がっていき、まるで巨大なガラス細工が内側から砕かれていくように、空そのものへ無数の亀裂を刻んでいった。
そして、その隙間から。
白銀と黄金の光が溢れ出した。
眩しい。
だが、ただ眩しいだけではない。
その光を見た瞬間、誰もが本能的に理解した。
これは「光」ではない。
世界そのものだ。
無数のコード。
幾何学模様。
巨大な光輪。
そして、すべてのデータを管理する絶対的な権能。
それらによって構成された巨大な影が、天空からゆっくりと姿を現した。
『――――』
その存在が現れただけで、大地が震える。
空間が軋む。
遠くに漂っていたデータの残骸が、触れることすら許されず消滅していく。
最高神Roblox。
この世界の「システム」そのもの。
「……こ、これは……!」
ビルダーマンが膝をついた。
「身体の構造データが……勝手に書き換えられている……!」
ドゥームブリンガーも巨大な身体を震わせる。
「こ、これが……最高神……!」
テラモンもまた、歯を食いしばっていた。
神力を封印し、人間へ近づきつつある今の彼には、この世界圧はあまりにも重い。
「ぐっ……!」
膝が地面へ沈みかける。
その隣で。
1x1x1x1は、震える身体でテラモンの服を掴んだ。
「テラモン……」
「1x……」
「……怖ぇ」
珍しく。
本当に珍しく。
1x1x1x1が、恐怖を隠さなかった。
だが、それでも手だけは離さなかった。
テラモンも、その手を握り返す。
その時。
天空から、感情の欠片すら存在しない声が響き渡った。
『――告ぐ』
ズンッ。
空気そのものが震える。
『――規約違反者たちよ』
空中に、巨大な光の文字が浮かび上がった。
『抹消されたデータ「BrightEyes」の再取得は禁止されている』
ブライトアイズが眉をひそめる。
「再取得って……私は荷物じゃないんだけど?」
「ブライトアイズ、今は黙っていてくれ……」
ハックロードが小声で頼む。
「アンタが一番黙ってる場合じゃないでしょうが!」
「……はい」
即答だった。
1x1x1x1が思わず振り返る。
「……こんな状況でも尻に敷かれてんのかよ」
「夫婦というのは奥深いものだな」
テラモンが妙に納得した顔で呟く。
「納得すんな!」
1x1x1x1が小声でツッコんだ。
だが。
最高神の声は続く。
『さらに、次元を越境しBanlandsへ侵入した存在――HACKLORD、ならびにSHEDLETSKY』
『汝らは世界の規則を逸脱した重大な異常コードである』
ハックロードの赤い瞳が細くなる。
そして。
最高神の巨大な光の手が、ゆっくりと掲げられた。
その指先に、白銀の光が集束していく。
「……あれは……」
ビルダーマンが息を呑む。
『――Account Deletion』
その言葉と同時に。
theBanlands全域が震えた。
『――異物、および感染コードを永久削除する』
白銀の光が、すべてを飲み込もうと膨張していく。
「……っ!」
テラモンが身構える。
だが。
「させるかぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
轟音とともに、一つの巨影が飛び出した。
ハックロードだった。
「なっ!?」
ブライトアイズが目を見開く。
ハックロードは迷うことなく、彼女の前へ立った。
巨大な身体。
黒いマント。
緑の骸骨マスク。
胸元で脈動する緑色の肋骨。
そして、その手には黒銀の大剣。
「アンタ!」
ブライトアイズが叫ぶ。
「下がりなさい! 神相手に勝てるわけないでしょう!」
「……退かぬ」
ハックロードは振り返らない。
「絶対に、退かぬ」
黒銀の大剣を両手で構える。
「私は一度……君を失った」
その声が震える。
「私の傲慢さで」
「私の愚かさで」
「私自身の罪から逃げたことで……」
大剣の刀身が、緑色の光を帯び始める。
「そして私は、絶望の中で狂った」
ハックロードはゆっくりと顔を上げた。
「すべての世界の自分を憎み、殺し……」
「君を失った理由を、世界のせいにした」
その背後で。
ブライトアイズが静かに夫を見る。
「だが……」
ハックロードの手に力がこもる。
「もう違う」
背中の棺を繋いでいた鉄の鎖が、ジャラリと鳴った。
「私はもう、逃げぬ」
「もう、誰かを殺して罪から目を逸らすこともしない」
「私は――」
ハックロードは大剣を構え直した。
「この手で、愛する者を守る!」
その瞬間。
棺が眩い緑と銀の光を放った。
「利用規約が何だ!」
ハックロードが吠える。
「システムの理が何だ!」
声帯を失ったはずの喉から、魂そのものを震わせる咆哮が響き渡る。
「妻一人救えぬ世界に……私が従う理由などないッ!!」
ブライトアイズが目を丸くする。
「……アンタ」
「このハックロード・シェドレツキー!」
黒銀の大剣を、最高神へと向ける。
「妻を奪うというのなら――」
赤い眼光が燃え上がる。
「最高神であろうと、叩き斬るッ!!」
「ハックロード……!」
テラモンの胸が熱くなる。
そこにいたのは、かつてマルチバースを恐怖に陥れた死神ではなかった。
妻を守るためなら、世界そのものに立ち向かう。
ただの、一人の夫だった。
そして。
『――身の程を知れ、異常コードよ』
最高神の声が響いた。
白銀の光が、一気に放たれる。
「来いッ!!」
ハックロードが大剣を振り上げた。
ドゴォォォォォォンッ!!
世界が爆発した。
白銀の初期化光線と黒銀の大剣が正面から激突する。
衝撃波がtheBanlands全域を駆け抜け、地面が大きく陥没する。
ハックロードの黒いマントがズタズタに裂ける。
胸元の緑色の肋骨から激しい火花が散る。
「ぐ……ッ!」
それでも。
一歩も退かない。
「ハックロード!」
ブライトアイズが叫ぶ。
「下がれと言っているでしょう!」
「嫌だ!」
「なんですって!?」
「今度こそ……君を守ると決めたのだ!」
「……!」
ブライトアイズが言葉を失う。
その時。
ハックロードが振り返らずに叫んだ。
「1x1x1x1!」
「っ!」
「テラモン!」
「任せろ!」
「ビルダーマン!」
「分かっている!」
三人が同時に構える。
ハックロードは、さらに叫んだ。
「私の背中を預ける!」
「そして――」
大剣を押し返す。
「妻の未来を、託す!!」
テラモンの神力が爆発する。
1x1x1x1の濃緑色の炎が燃え上がる。
ビルダーマンが巨神のハンマーを地面へ叩きつける。
大地に巨大な魔法陣が広がった。
1x1x1x1がニヤリと笑う。
「……へっ」
赤い瞳が輝く。
「最高神だか何だか知らねぇけど……」
ヴェノムシャンクを握り締める。
「俺の大事な奴らに手ぇ出すなら――」
濃緑色の毒が刀身を包む。
「ぶっ壊してやるよ」
テラモンが笑った。
「それでこそ俺の1xだ」
「……うるせぇ!」
そして。
ブライトアイズも腕まくりをする。
「ちょっと待ちなさい」
「……?」
ハックロードが振り返る。
ブライトアイズは腰に手を当てた。
「私の夫を勝手に消そうとしてるんでしょう?」
「……ブライトアイズ?」
彼女の紫色の髪が、強烈な風に舞う。
「だったら私も混ぜなさい」
「いや、君は安全な場所に――」
「誰の妻だと思ってるの?」
「……私の妻です」
「よろしい」
ブライトアイズがニヤリと笑った。
「じゃあ――夫婦喧嘩の時間よ」
1x1x1x1が目を丸くする。
「……なぁテラモン」
「なんだ?」
「最高神との最終決戦だよな?」
「ああ」
「……なんで夫婦喧嘩が始まりそうなんだ?」
「愛というものは、時として神にも理解できないからな」
「分かりたくねぇよ!!」
その瞬間。
最高神Robloxの光輪が、凄まじい速度で回転を始めた。
『――反抗を確認』
『――最終削除処理へ移行』
白銀と黄金の光が、天空を覆い尽くす。
対する地上では。
テラモン。
1x1x1x1。
ビルダーマン。
ドゥームブリンガー。
ハックロード。
そしてブライトアイズ。
それぞれが、己の大切なものを守るために立ち上がった。
憎しみで始まった戦いは。
いつしか、愛を守る戦いへと変わっていた。
そして今。
最高神の「絶対の理」と。
「それでも生きたい」と願う者たちの意志が。
theBanlandsの最果てで、真正面から激突しようとしていた。