テラーノベル
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「仕方ないのだ。天気には勝てないのだ」
「キャンセル料も結構高いしね」
皆で頷き合ったところで、川俣先輩がパチパチパチパチと拍手した。
「正解だな。アウトドア活動で、実は一番大事なのは『引き返す勇気、やめる勇気』だって言われているんだ。それが出来るようになれば、もう安心して任せられるな」
「そうですね」
先生も頷く。
「天気図の読み方も予想も、そして判断も、良く出来たと思います。どうしても出かけたいと思う気持ちもわかりますけれど、アウトドア活動は自然が相手です。だから、どうにもならない事もあります。その時に、行きたいという気持ちを堪えて撤退する事を判断出来る。もう、新しく1年生が入ってきても大丈夫でしょう」
そう、自然が相手だけに、予定通り行かない事もある。
今までは結構、天候等に恵まれていたけれど。
「さて、仕方無いから新入生歓迎の準備をするのだ」
「そうだね」
気分を切り替えて、そっちの計画を考える。
去年までは、新人歓迎キャンプは先生の自宅を使っていた。
ただ、先生の自宅はちょっと遠い。
それに新人が3人以上入ってきたら、先生の車に乗れなくなる。
本格的な合宿等の時は、学校のマイクロバスを借りればいい。
でも、新人歓迎の時までマイクロバスを借りて、先生に運転して貰うのも申し訳無い。
だから今度の新人歓迎の場所は、前にキャンプに行った青少年自然の家にした。
あそこなら歩いて行き帰りが出来るし、距離もちょうどいい。
テント泊初心者にもちょうどいい感じで、施設が整っている。
装備表も地図も計画書も作って、案内パンフも作って、と。
先生に借りる装備も、リストを作って管理。
「学校のパンフに載せる原稿って、どのファイルだっけ?」
「オリ資料という名前なのだ」
「Webの装備紹介のところ、載っていない装備の追加をしましょうか」
「お願いするのだ」
こういった文書類は、いつの間にか亜里砂さんがメインになっている。
学校内の共有フォルダに入っているので、誰でも扱えるのだけれども。
イラストを入れたり、写真を入れたり、どんどん内容が豊富になってきている。
新入生歓迎だけで無く、僕達が今までの活動を見返すのにもちょうどいい感じだ。
「悠君、暇なら、装備の写真を撮るの、手伝ってくれませんでしょうか」
美洋さんの声。
「はいはい」
隣の実験室に装備を広げて、写真を撮る作業の手伝いをする。
ちなみに美洋さんがカメラ、未亜さんが照明、僕が並べたり広げたりの雑用担当。
「装備の写真があれば、どうやって使うか、イメージも広がりますしね」
そんな事を言いながら作業。
本当は、春合宿のサイクリング、行きたかったな。
皆、そう思っているんだろうと思う。
だから、ちょっと忙しめに動いている感じ。
よく言われるけれど、山は逃げない。
今回は山じゃなくてサイクリングだけれども。
だから、また天候に恵まれた時に行けばいい。
そういう事にしておこう。