風呂でされたことは癪に触ったが、頼まれもののペンダントを持って、俺は佐久間の部屋のドアをノックした。
🩷「はーい」
ガチャ。
中から、すっぴんの佐久間が出て来た。ギャルメイクしていない佐久間の顔をまじまじと見るのはこれが初めてだ。
佐久間は素顔も可愛い顔をしていた。
ホクロが左右ほぼ対照の位置にあって、特徴的で愛らしい。目も大きくてクリクリしている。口元も柔らかそうだ。生徒の中で唯一俺よりも身長が低いので、気持ち目線が下なのも可愛らしかった。
🩷「何見てんだ。……俺に惚れるなよ?」
💙「ばっ!!っかじゃねえの?」
佐久間は胸元を押さえて、警戒するように俺を睨んだ。胸とか、ないくせに。
俺は生粋のストレートだ。中学時代は彼女もいたし…すぐ振られたけど。
悲しい思い出を想起させられて、ぼんやりしていたら、佐久間はそのまま何も言わず中に引っ込んでしまった。
付いて中に入ると、部屋は、ピンクに統一されていた。レースが付いた淡い色のピンクのカーテン、ベッドカバーも家具も軒並みピンク色。でかいテディベアもピンクのドレスを着せられて置いてあるし、これを見た誰もが、部屋の主が男だなんて絶対にわからないと思う。
このまま中にいてもそわそわして落ち着かないので、俺はさっさと用事を済ませることにした。
💙「これ持って来た。めめとか使って悪趣味なことすんな」
🩷「あー、さんきゅ。バレなかったぁ?」
💙「危なかったよ!」
佐久間がおかしそうにケラケラ笑う。ペンダントを受け取ると、メガネを掛けて、テレビをつけながら、もう一言。
🩷「中、見た?」
ああ。写真のことか。
💙「見てない。見られたら嫌かなと思って」
佐久間は初めて、興味を唆られたようにこちらを見た。
🩷「優しいじゃん」
💙「俺は別に…」
🩷「お礼のキスくらいなら、してあげてもいいよ?」
佐久間はリモコンで見ていたテレビを一時停止して、こちらに寄って来た。
💙「は?意味わかんね」
ちゅっ。
佐久間の唇が、俺の頬に触れた瞬間、甘い花のような香りがした。
佐久間はすぐに俺から離れ、手で追い払うような仕草をした。あまりのことに俺が固まって動けないでいると、今度は俺の背中を強引に押して追い出した。
🩷「はい。帰った帰った。俺、続き見たいから」
は???俺、今、キスされたんだけど????
頭の中が完全に混乱して、理解がまったく追いつかない。俺は佐久間の部屋を出て、逃げるように自分の部屋に戻った。
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