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マンションを飛び出した私の足は、無意識にある場所へと向かっていた。駅の近くにある、少し古びた公園。街灯がまばらに灯る中、ベンチに座ってスマホをいじっている人影が見えた。
キララ:「(息を切らして)……ハァ、ハァ……。ミナト!」
ミナト:「(顔を上げて、驚いたように立ち上がる)キララ? お前、どうしたんだよ。さっきの彼氏は?」
キララ:「(必死に呼吸を整えながら)……別れてきた。全部、終わらせてきたよ」
ミナト:「(絶句して)……はぁ!? お前、あんなに幸せそうだったじゃねーか。あいつ、お前のこと大事にしてたんじゃないのかよ」
キララ:「(一歩近づいて)大切にしてくれたよ。完璧だった。でもね、ミナト。今日、あなたに会った瞬間にわかっちゃったの。私、完璧な場所で愛されるより、ミナトと泥だらけになって笑ってたあの日の方が、ずっと自分らしくいられたんだって」
夜風が二人の間を吹き抜ける。ミナトは少し困ったように頭をかき、それから真剣な目で私を見つめた。
ミナト:「……お前、本気で言ってんのか? 俺はあいつみたいに気の利いた店も知らねーし、高いプレゼントも買えねーぞ。また遠征で会えなくなるし、不器用だって怒らせるかもしれない」
キララ:「(涙目になりながら、でも強く頷いて)知ってる。ミナトがデリカシーなくて、自分勝手なのは10年前から知ってるよ。でも、ミナトがいない2年間は、心の中にずっと穴が開いてたみたいだった。……私、もう自分に嘘をつきたくない。私には、ミナトが必要なの!」
ミナト:「(一瞬黙ったあと、ふっと柔らかく笑って)……ったく。お前、本当にバカだな。あんなイケメン振って、俺みたいなサッカーバカのところに来るなんてよ」
ミナトが大きな一歩を踏み出し、私の肩を抱き寄せた。ユウキくんの繊細な温もりとは違う、熱くて、少し汗の匂いがして、力強いミナトの体温。
ミナト:「(私の耳元で、少し照れくさそうに)……2年前、お前を突き放してごめん。本当は、お前が遠くに行くのが怖くて、自分に自信がなかっただけなんだ。……でも、もう逃げねーよ。お前がどこにいても、俺が絶対に見つけてやる」
キララ:「(ミナトの胸に顔を埋めて、号泣しながら)……バカ。……遅すぎるよ、ミナト……」
ミナト:「ああ、悪かったよ。……これからは一生かけて埋め合わせしてやるから。覚悟しとけよ、キララ」
ミナトの腕の力が強くなる。私はその温かさの中で、ようやく「自分の居場所」に帰ってきたんだと実感した。
完璧な檻なんていらない。この不器用で、熱くて、優しい温度さえあれば、私はどこまででも走っていける。
私たちの物語は、ここからまた新しく始まるんだ。
つづく