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久しぶりに雫ちゃんに会える。
もう、俺達は大人だから……
「雫ちゃん」って呼ぶのはおかしいかな。
でも、俺にとってはいくつになっても「雫ちゃん」だから仕方ない。
正孝君の結婚式で会った以来だから、そんなには経ってないけど……
いつだって彼女に会える時はドキドキする。
今日は、あんこさんの誕生日。
「久しぶりに遊びに来て」って、あんこさんが雫ちゃんを誘った。
自宅で営むパン屋も忙しいみたいだったけど、何とか都合をつけてお嫁さんの真美ちゃんと2人で来てくれることになった。
榊さんと正孝君は仕事で忙しいみたいで、残念ながら一緒には来れなかった。
お孫さんの誠君は、雫ちゃんのご両親が見てくれるらしい。
「自分はいつも周りに助けられてる」って、雫ちゃんはいつも感謝している。
あんこさん……最近、よく言うんだ。
どうしても雫ちゃんに会いたいって。
彼女に会うと元気が出るからって。
それは……俺も同じ。
50歳も半ばを過ぎたのに、それでも、この恋心は、あの時のまま色褪せることはない。
北海道に来て何度も告白されて、でも、1度だってこの人ならって思える人に出会えなかった。
周りは心配して、いつしか「一生あいつは結婚できない」とか「変わり者」なんて言われて……
全く、余計なお世話だ。
俺の中には昔から、彼女しかいないんだから。
みんなが言うように、確かに俺は死ぬまで独身だろう。
不器用で、ただ一途に想うことしかできなかったからそれも仕方ない。
『杏』の店の前。
あんこさんの車が帰ってきた。
「いらっしゃい。雫ちゃん、真美ちゃん」
「こんにちは。お邪魔します」
2人が車から降りて挨拶してくれた。
「よく来てくれたね」
「慧君、久しぶりだね。本当に元気そうで良かった」
雫ちゃん……
会う度に、そんな風に美しさが増すのはどうして?
肌も綺麗で、髪もツヤツヤで……
そんなに輝いていられるのって、やっぱり……榊さんのおかげなの?
いつだって彼女は満開の幸せオーラに包まれている。
「久しぶりに2人に会えてほんまに嬉しいわぁ~」
たまに出る関西弁と共に、あんこさんの笑みがこぼれた。
いつも笑顔を絶やさない人だけど、今日は特別幸せそうだ。
ずっと会いたかった人に会えたんだから、嬉しいに決まってる。
俺も……そうだから。
「あんこさんの誕生日をみんなで祝えるなんて、すごく楽しみです」
「この歳になったらおめでたくはないけどね。でも、雫ちゃん達に会えるなら歳を重ねるのも大歓迎だよ。本当に、2人とも元気そうで良かった」
私達は『杏』のカフェで、テーブルを囲んで4人でお茶を飲み、しばらく話をした。
「慧君、会社はどう? やっぱり……社長さんは大変でしょ?」