テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
拓人の運転する車は、再び首都高速道路に乗り、最終目的地でもある、お台場へ向かっていた。
途中、渋滞に巻き込まれてしまったが、日没直後にお台場へ到着。
ライトアップされ、壮麗な輝きを放つレインボーブリッジが目の前に広がるパーキングスペースに、黒いセダンが滑り込んでいく。
夜のお台場が目当てと思われる乗用車が、随所に散らばり、拓人の車も、なるべく車がいない場所を見つけて駐車させた。
「…………え? 最後の目的地って……」
「そう。お台場」
拓人が車を降りて、助手席のドアを開けながら優子に手を差し伸べると、女は大きな手のひらに自身の手を添える。
彼は、優子をエスコートしながら、レインボーブリッジのある方向へ歩みを進めていった。
海から吹き抜ける湿った潮風が、二人の鼻腔を掠めていく。
辺りはすっかり暗くなり、青白い光を纏うレインボーブリッジと周辺のビルは、夜の装いに変貌している。
「っていうかさ、そもそも、何でお台場なの?」
女が不思議そうな顔をして、拓人に尋ねると、『恥ずかしいんだけどさ』と、彼が前置きして言葉を繋げた。
「昨日行った長野の山小屋で、瑠衣ちゃんを助け出した時、東京に向かう途中で、彼女に告白するなら、今がチャンスだって思ったんだよな」
彼は、俯きながらフゥッと短く息を吐き切ると、弾かれたように顔を上げた。
「当時、彼女には既に恋人もいた。だが、それでも俺は…………自分の想いを伝えたかった。あの時、瑠衣ちゃんとは、もう会う事もないだろうって思ってたし、気持ちを伝えないまま後悔するより、告白して玉砕した方がいいかなって思ったんだ。それに……」
拓人は、はにかむ表情を覗かせながら、長い前髪を、大雑把に掻き上げる。
「瑠衣ちゃんにまつわる場所を訪れる事で、俺自身の気持ちに、ケリを付けたかったっていうのもある」
「…………そっか。それで……」
黙って話を聞いていた優子が、彼を上目遣いに見やる。
「アンタの、瑠衣さんに対する気持ちのケジメは…………ついたの?」
「ああ。今は…………心から彼女に幸せになって欲しいって……思うよ。晴々しい気持ちって感じかな」
拓人が、唇に緩く弧を描かせる。
(ようやく…………一歩前進できたような気がするな……)
彼は、隣に佇んでいる優子の手を、そっと握りしめた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!