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地獄です、よろしくお願いします


やっぱりおかしい。平坦だ。散歩道はもっと坂が激しいはず。こんなに進めるわけが無い。もう既に、ここはただの散歩道ではなくなっている、と考えた方が自然かもしれない。噂を実行した時に『三ツ目の散歩道』という同じ名前の別の道に飛ばされたのか、はたまた私の記憶違いか。それとも、私の体がおかしくなっているのか。今の有力候補は一番目だろう。もし三番目なら確かめる方法はない。確かめたくもない。おかしな人間だ。覚悟は決めたはずなのに、まだ足が震えてる。それでも止まれない、止まらない。絶対、止まらない。

震える足で進んでいくと男の子が居た。4、5歳程度だろうか。俯いていて泣いているようにも見える。出来るだけ、優しい声色で声をかけてみた。一応、子供にはそれ相応に好かれる体質を持っている。問題は無い、と思う。

「どうしたの?大丈夫?」

「う”ッ……うぅ……」

「大丈夫?お母さんとはぐれちゃった?」

「あの、あのね、人を待ってたのッ。でも全然来てくれなくて……ッ!」

「そっかそっか。大丈夫だよ、お姉さんがついてるからね。待っている人ってどんな人?」

「あのねッ、あのね……ッ」

「うん、どんな人なのかな?」





「黒髪で」












「髪の毛が長くて」














「緑色の目」

黒くて長くて、緑色。

「待って、それってわた___」


















「 お姉さん

身代わりになってよ!」

男の子の口が裂け出した。中からゆっくり黒い触手が蠢き出している。やがて男の子は薄っぺらくなって倒れた。きっとこの男の子はこの化け物の入れ物だったのだ。

「 お姉さんだって会いたくてきたんだろ?俺大好きなんだよね。

そういう奴が、夢が叶わず死んでくザマがさぁ!」

触手が大きな音で耳元で騒ぎ出した。耳元じゃない。頭の中で喋ってるみたいだ。耳を塞いでも意味は無いけれど、咄嗟の判断で塞いでしまった。どんどん触手の声は強くなっている。

きっとさっきの男性も、これで振り向いてしまったのだ。

「 お姉さん、祖母が死んだんだろ?それって、お姉さんが負担をかけたんじゃないの?」

やめて

「 お姉さんが両親を頼らずに、祖母ばっかり頼ってるから負担で死んだ!違う!?」

やめてって

「 お前が、死者と会う資格なんて、ひとつもないんだよ!!!」





















「あなたごときが祖母を語らないで!!」

自分でも驚く程の声量が出た。胸がビリビリと裂けるほどの声。家で声を出していれば、お母さんに怒られるか、お父さんに心配されていただろう。それほど私は、祖母を勝手に語られたのが許せなかったのだ。どうしてかは自分でも分からない。でも、あんなに優しかった祖母が私をそんなふうに思うわけが無い、という信頼が会ったんだと思う。

「祖母はそんな人間じゃない!両親と話せない私と、ずっと笑って喋ってくれてた!」


「一人の人間として私の意思を尊重してくれていた!」


「不得意な事を克服する時も、見本を見せてくれて、辛抱強く私を見ていてくれた!!」


あ、分かった。


「そんな祖母を……」




「あなたが穢さないで!!!!」

わたし、思い出が穢されたことが嫌だったんだ。優しくて、ぬるま湯に浸るような、そんな思い出。それに、黒いペンキを塗るように穢されたのが、この上なく嫌なんだ。

優しかったおばあちゃん。

失敗したら、もう二度と会えないおばあちゃん。

実感したら、急に涙が出てきた。触手が心底気持ち悪いものを見たような声で言ってきた。

「 何それ。そんなのお前の勝手だろ?勝手に語る人、俺嫌いなんだよね!」



















『もういいにゃ、お前は黙っていろ』

「はッ!?タマネ様!?」

高い様な、低い様な、女性のような、男性のような声がその場に響いた。触手の声が、急に小さくなった。触手の慌てようからして、相当なお偉いさんなのだろうか。タマネ様、というらしい。タマネ様は続けて言っていた。

『最近あまりに来る人数がすくにゃいから、みんにゃで会議してたら、にゃるほどそういうわけ。お前が暗躍していたわけだにゃ?』

「わ、わたくしはそんな事しておりません!元々、わたくしの仕事ではありませんか!」

『にゃに?口答えする気?』

「……ッそんなことは決して!」

『なんかもう飽きたにゃ、永遠にさようなら』

「待っ___」





触手は叫ぶ暇もなく、無数の手によって地面に引きずり込まれて行った。きっと触手の行動は許可を取らない勝手な行動だったのだ。それに対して上の立場である「タマネ様」は怒って触手に罰を与えた。会話から推察できるのはここまでだ。

しかし、あんなのが仕掛けられているなんて。予想もしていなかった。これから先もこのような事態が起こるかもしれない。警戒して進もう。

右手の甲が少し痒い。


ちなみにタマネ様は性別不詳です

???「性癖だろ???」

性癖です

あやかし町の三ツ目さん

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コメント

30

ユーザー

今回もめちゃくちゃ良かったよ!!!! うんうん…確かに1番目の説が 一番あり得るね…!!! あ〜!!!そういう事!!! そういう時は怒らないと 気が済まないと思う…!!! だって思い出が穢されるなんて 凄く嫌で回避したい事だからね… あー…それはお爺様に酷い事をしたね…? まぁ痛い目を見てるから因果応報と…(?) 次回も楽しみに待ってるね!!!!

ユーザー

神様仏様タマネ様…!! なーんか手の甲痒いの怖いなぁ 性別不詳好きだねぇ、 うちの子(ボス)も言ってたし

ユーザー

タマネ様強すぎ

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