学校から帰って、理恵はピアノの前に座る。楽譜を開く。
音符の波が、理恵に語り掛ける。
《ねえねえ、ボクの音聞いて!》
《私の音も!》
音は、生きているんだ。
世紀を跨ぎ、受け継がれる音。
その音は、作り手が魂を削ってまで産み落とした
子供たちのように。
理恵は今、ヒシヒシと感じていた。
自然と楽譜に頭を下げる。
「素晴らしい曲を、ありがとう」
ひとつ、大きく息をする。
「亡き女王のためのパヴァーヌ」
魂を込めて、理恵は弾く。
儚く、寂しく、そして美しい曲を。
……………………………………………………
「音楽は、時間に対する祈りのようなものだ。
音が消えていく、その瞬間に“死”と“美”が同居する。」
― 坂本龍一(インタビュー『LIFE, MUSIC and SILENCE』より)
……………………………………………………
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!