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※フィクションです
遠い昔、吉原遊郭には月雪 陽菜乃という花魁が居た。
吉原の中でも3大花魁に入る最高峰の美貌を持ち金持ちは月雪花魁にお金をかけ貢いでいた
私はあまり店の外へ歩く事はない、何たって外は何かと危険なのだ、自身の容姿を売っているのに傷が付いてしまったら不良品になってしまうから極力危険は取り除いていた
今朝窓の外に広がる世界に焦がれ眺めていた際人だかりの中に長い髪をハーフアップのお団子にまとめこちらを見つめる侍と目があった。これも売りなのだからと口角を上げ微笑みかけ見つめる目に答えた
その侍は、それが花魁なりの返事なのだと分かっていたが月雪花魁の微笑みに目を奪われた
『あの花魁、まさか…』
そうぽつりと侍は呟いた
今日の客は傲慢な客だった、大抵の客は顔見知りで長い付き合いであるのだが今回は初めてという事で少々手荒だったのだろう
「わっちは月雪 陽菜乃でありんす、主さんの名前はなんざんす?」
「あ?俺?壮でいいよ壮で」
「格好良い名前でありんすね」
それから30分このお客は酒を飲み干しかなり酔っていて話も合わなくなってきた状態だったが延長を強いられ接待をしなければいけなかった
「陽菜乃の夜の代は無いのか!!」
「この吉原での店は花魁だけ夜代は高いでありんすよ」
そう、この吉原では遊女の夜の遊びでは高い金額が生じる、中でも花魁となれば別格だ。けれど花魁は夜の遊びが少ないのではない
ここ、吉原では花魁になる前にそういう教育をしてからこそ完璧な花魁になれるのだ
だから陽菜乃も例外ではなくそういう経験は豊富であり名声があった、だがファーストキスはまだなのは隠し話
「いくらだよ?払ってやる」
「今のところ500万札でありんす」
「ちっ!高けぇなぁ!無料にしてくれよ」
「わっちも商売でありんすから」
「黙れよ!女なんて力で!」
客が勢い良く立ち上がり陽菜乃を押し倒し、覆いかぶさる
「うるさい口は塞いでやる!」
ファーストキスは絶対にやらないと誓ったのにその名前が取られてしまいそうになる手前、今日ここで…気を抜いてしまったのが悪い、あぁ最悪だ
その時、カランと鈴の音がした
「あれ?お邪魔だったか?」
「誰だ!」
その人は先程見たあの侍であった。よく見たら珍しいエメラルド色をした瞳で輝いていた
「まぁ、花魁指名しようと思ったんだけど…先客が居たっぽいなぁ」
「助けてください!侍さん!」
「なっ!」
「お安い御用」
瞬時に先客の後ろへ周りトンッと首元を叩けばドサッと床に倒れ込んでしまったのだ
「ありがとうございます、主さん」
「まぁ大体の経緯は分かるぜ、俺には夜の何とか付き合ってくれへん?」
「サービスで半額に出来ますが…」
「それなら行こーや」
少し先程のあれが脳裏に焼き付き冷や汗をかきながら札置きを用意しお金を徴収する
そして手続きが終わり、いつもの手順でゆっくりと上着を脱いでいこうとしたその時
「いや、上着は脱がなくていい」
そういう事が好きなのかと疑問に思いながら履き直し目線を絡ませる
「手繋ごか、迷子にならんように」
「え?」
次の瞬間、ふわっと身体が軽くなり窓の外へ飛び出した。落ちると思ったが宇宙空間のようにふわりと別の店の屋根に飛び立ち名もしれぬ侍と歩幅を合わせながら歩いた
「何でありんす!?」
「タメで話そうやまぁほら夜の遊びと言えば火遊びやもんな」
「あの取引は身体の!」
「たまには息抜きもええで」
それから侍と花魁は夜の街の屋根を華麗に飛び越え先に進んだそして街外れまで来た瞬間、陽菜乃は身隠し用の布を上から被せられ人力車に乗せられた
そして、数分で着いた先に足を運ぶとそこには青の花が咲き誇り敷き詰められたような海が見えた、それを見た陽菜乃は感動し涙を溜めた
「花魁って自由がないって聞いたからよ…、嫌だった?」
「いえ….初めてこんなことをしたものですから感動して…何でここまで私のためにしたんですか?」
「あんたの顔、感情が隠れてたんや。だから今の顔が見たくてな」
にこっと微笑むような顔を見せる通りすがりの侍さんは陽菜乃の中で1番格好よく見えた
その笑顔に見惚れているとビービーと冷たい機械音の音が陽菜乃の手首から聞こえてきた
「これ何?」
「簡単に言えばGPSというものです、花魁道中やお客の見送り以外でお店の外に勝手に出てしまったら音が鳴るんですよ」
すると、侍は陽菜乃の手首を掴み力強くその機械を握り潰すかのようにしようとしたが陽菜乃の手首は簡単に折れてしまうほど弱かったのでその行為は当然しなかった
「ごめんなさい、帰らないと..」
「俺が付き纏わせたんだ、送る」
「ありがとうございます」
そして、あっという間にお店の前に着くと侍はぎゅっと陽菜乃の手を握り真剣な眼差しで陽菜乃を見て、陽菜乃はそれに応えるように侍の顔を見上げる
「佐伯涼太郎だ、俺の名前」
「月雪陽菜乃です」
「また来る」
そんな一言を残しパッと瞬きをした間に侍はどこかに消えてしまった
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