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🧡Side
俺の恋人は、良くも悪くも大人っぽい。歳だって、俺と二つしか変わらんのに。
俺がなにか言っても可愛い笑顔で「はいはい」って受け流してばっかりで、色んな人がいる飲み会に行こうとするのを俺が嫌がっても「どこにも行かないから」って困った顔で優しく頭を撫でてくる。
嫉妬も心配もしてこないってことは、俺のことを信頼してくれてるってことやって分かってるけど。
もうちょっと、してくれてもええよな……?
俺やって舘さんがずっとこんな放任主義やったら寂しいもん。
てなわけで、俺は舘さんを嫉妬させる作戦を実行しようと思う。
❤Side
日々が満たされていると感じるようになったのは、康二と関係を持ち始めてからのことだった。
今までも沢山のファンの方々に囲まれて、グループが沢山の人達に愛されて。
心無いことを言われることもあるけど、長年デビューを待ち望んでいた俺にとってこの日々は幸せでしかなかった。
でも、不特定多数のファンの方から向けられる好意と、素の俺個人に向けられる好意は、全然違うことに気がついてしまった。康二のせいで。
康「舘さーん」
舘「なに」
康「今日なぁ、前に一緒に仕事したXXさんから飲み誘われたんよー」
舘「へぇ、よかったじゃん」
康「いやー最近モテモテやなぁー、おれぇ」
舘「ふーん、よかったじゃん」
この健気で純粋な犬のような男が俺の恋人、向井康二だ。
今日は午前だけ仕事があったらしく、スタイリング剤でふわふわとさせてある髪の毛が余計にそう思わせる。
しかし「飲みに誘われた」って、康二メンバー以外の飲み会あんまり得意じゃないじゃん。しかも女性となんて、絶対行かないでしょ。
プロとして基本ではあるが、康二はいつも女性との距離を一定に保っている。ドラマの演出となれば違うけれど、バラエティではいつもそうだ。そんな抜かりないところを俺は密かに尊敬している。
そんな彼が二人きりで飲み会なんて、あり得ない。確信を持ってそう思ってしまったが故に、適当な返事を返してしまった。
やばい、拗ねるかな。
康「聞いとらんやん!もー。やから舘さん、これから飲み行ってくるなぁ」
舘「……は?」
こいつ今なんて言った?え、行くの? いや、いつもの気を引きたいだけの嘘か。
犬が飼い主の手を甘噛みするように、康二はよくこういう軽い嘘をつく。その度に「冗談やんか」とか「ごめん舘さん、うそ」だとか愛おしい笑顔を見せながら言ってくる。
今日は珍しく引っかかってしまったな、なんて思っているとソファに座り込んでいた康二は立ち上がって荷物をまとめ始めた。
え、え??マジで??
舘「え、、こ、うじ?」
康「ん?なんやぁ舘さん」
舘「嘘だよね?」
康「嘘やないよぉ、俺ほんとにモテてるんやって。……ほら!」
そういって康二が真面目な顔で見せてきたのは、康二がワンクール前のドラマで共演してた女優さんとのメッセージだった。
○ 『康二くん、XX日ふたりで飲もうよ』
🧡「午後からオフなんで、ええですよ」
○ 『そしたら場所は…………』
そんな会話が何ターンか続いていて、飲みに行くのはどうやら本当のようだった。でもそれを確認した今もまだ信じられない。
そんなに仲がいいとか?相手が既婚者とか??いや、まさか、俺捨てられる???
ぐるぐると思考が絡まり始めた俺を置き去りに、康二は「行ってくるね。お邪魔しましたー」と玄関へと足を進めていた。
待って、なんでそんなことするんだよ。
いつもはこんな強引なこともしないし、どちらかというと俺が飲み会に行くのを康二が嫌がってるだろ。
おい、なんで、俺なんかしたか?
そう聞きたくても、その言葉は俺が必死になって康二を求めてるように感じられて、プライドが邪魔をして聞けなかった。
舘「康二っ」
康「ん、なーに舘さん」
舘「明日、オフだろ?飲み会終わったら、俺の家戻ってこいよ」
康二はどうやらいつも俺と一緒にいたいらしく、こう言うと振り切れそうな尻尾が見えそうなほど喜ぶ。全く、どれだけ俺のことが好きなんだか。
ほら、明日がオフだってことは全部できるだろ。喜べよ、康二。
康「あー、帰り何時になるかわからんし、今日はええや」
舘「……は、?」
唖然とした俺に康二は元気よく別れを告げて、呆気なく扉は閉まった。
オートロックがカチャリとかかる音が、静かな部屋に響く。ドクドクと脈打つ感覚がなぜか浮き彫りになったように分かりやすく伝わってきた。
は?え、なんで??
想定していた返答とは真逆のことを言われて、俺は数秒間身動きが取れなくなった。
何が起きているのか分からない。俺の知ってる康二じゃない。
なんで、どうして。「別れよう」とか、言い出さないよな?あぁくそ、今日なんで康二の家じゃないんだよ。
不安が募りはじめた心がざわついて、思
考には重たげな不快感が纏わりついた。あたたかかったはずの体温が徐々に冷めていく。
最初から康二はここに戻ってくる予定がなかったのだろう。リビングには何もあいつの私物は残されていなかった。どこにもあいつの影が見当たらない。それだけでこんなに心が荒むことなんて無かったのに。
「……康二」
弱々しい声で名前を呼んでも、笑顔を咲かせた恋人はやってこない。
俺が置いていかれたという事実だけが、静かな部屋に残っている。
🧡Side
肌を撫でる空気が冷たくて、俺は舘さんが「いつも寒そうだから」って買ってくれたマフラーに顔を埋めた。舘さんらしいお洒落な柄が目に入って、心がいっぱいになった。
優しくて、可愛くて、強くて。そんな人間いないって分かってても、舘さんは無敵に思えてしまう。
大通りでタクシーを拾い、行き先を告げてから俺はスマホを取り出して、さっき舘さんに見せつけた画面を開いた。そしてスタンプとともにメッセージを送信した。
🧡「ご協力ありがとうございますっ!」
○ 『やりたいことは分かってるけど、あんまりいじめても可哀想だからね?』
🧡「あと数回だけ、お願いします」
○ 『恋人って舘様でしょ?嫉妬させるって、相当難しいんじゃないの』
「(ですよねー)」
流れていく外の景色を眺めながら、舘さんが今何を思ってるか気になって仕方がなくなった。でもここで連絡したら意味がないからぐっと堪える。
ありがたいことにお芝居のお仕事が増えて、演技力は昔よりもあがっていると思う。でも、表情でバレるのが怖くて家を出るとき舘さんの顔を見れなかった。不自然だったかな。
今頃呆れてるのか、心配してくれてるのか。どうせ前者だろうなー。舘さんいつもそうだし。
愛されてないと思っているわけではないけど、なんだか俺だけ求めてるみたいで寂しいんよなぁ。
「(上手くいってるとええんやけど)」
協力してくれた女優さんにお礼のメッセージを送って、舘さんがくれたマフラーの端っこを意味もなく見つめた。
計画を実行し始めてから、もう数週間が経った。 その間に本当の飲み会も含めたら三回、俺は一人で出かけた。
だんだん演技に慣れて顔を見れるようになったものの、舘さんの反応は相変わらずクールで、全く気にしてなさそうだった。
今日は計四回目、二回目の嘘の飲み会をセットしてある。今日は俺と同じくオフの舘さんが俺の家に来ていて、今は番組の書類を読んでる。
セットしてない黒髪がちょっとあどけなく見えて、めっちゃかわいい。本人に「かわいい」とか言ったら怒られるけど。
そういえば、最初に仕掛けた日から俺の家に来たがるようになったんよなぁ。なんでやろ。そういう気分なだけか。
時計に目をやると嘘の約束の時間が迫っていて、俺はいつも通り舘さんの名前を呼んだ。不自然にならないように、言葉を頭のなかで紡いでいく。
康「なぁなぁ、舘さん」
舘「…………なに」
名前を呼んだだけなのに、なぜか舘さんは書類を読んでいた顔を上げて、わざわざダイニングチェアから立ち上がってこっちへ向かってきた。
なんでか気になるけど、要件を先に言ってしまうことにした。
康「あのなぁ、前に話したXさんおるやん?あの人と今日もふたりで会う約束してんねん」
舘「……だ」
康「やから今から行ってくんなぁ、家おっていいかr」
気がついた頃には手首を強すぎる力で握り締められて、そのままキスをされていた。
柔らかくぶつかりあった唇の隙間から無理やり押し込むように舘さんが舌を絡めてくる。
え、あ、えぇ、急やんな??そういう気分やった???
驚くままに反射で閉じていた目を開けると、なぜか舘さんはポロポロ涙をこぼしていた。
応えるように舘さんの口内を味わいながらも、珍しすぎる恋人の泣き顔に驚きが止まらない。
やがてどちらからともなく唇が離れて自由になった瞬間、点と点がつながったように俺は現状を理解した。やばい、これ、ばっちり成功しとるやろ。
喜びで顔が歪んでしまわないようにポーカーフェイスを貫きながら、舘さんに優しく問いかけた。
康「舘さん、どうしたん急に」
舘「いいから、早く抱けよ」
愛おしすぎる恋人に欲が高ぶりそうになるものの、手首を握る力がどんどん強くなってそれどころではなかった。
そうやんこの人握力めっちゃあるんやった。あー、やばい折れる。
康「……ごめんなぁ舘さん、今から飲み行かないといけないんよ」
舘「っ!!…………やだっ」
康「え?」
舘「やだっ!!なんでいつも、っ置いてくなよ!!なんでなんだよ……」
泣いてるだけでも珍しいのに、それでいて声を荒げて怒ってる。だんだんと弱々しくなっていく言葉とともに、手の力は抜けていった。
これ痣になるかな。でも、舘さんが付けてくれたものなら、それでええや。
舘「おいてかない゛でっ、なあ゛っ、おれっやだ、こうじっ、おれのこと、すきじゃないの、かよっ」
康「舘さん、嫉妬してるん?」
舘「してるよ、してるから、なぁ、こうじ、もうどこもいかないでっ、ねぇ、こうじ」
お酒飲んでたっけ、ってくらいに感情が乱れきった舘さんを見て、俺はもう堪えられんかった。
あのいつもクールで大人な舘さんが、必死に俺に縋り付いとる。現実とは思えない光景に、頭がふわふわした。
かわいい、舘さんかわいすぎるやろ。ほんまにかわええ。嫉妬するとこんなんなるんやなぁ。この爆発の仕方からして、寂しいの我慢しとったんや。
康「わかった、ええよ舘さん。しよっか」
こんな傍から見たらくだらなすぎる計画を始めてから、そういえば一回もしてなかった。だから、ちゃんと解さないけんと思ってたのに、指を沈ませたソコはなんでか柔らかかった。
康「舘さん、ひとりでしてたん?」
舘「っふ、ぁ、っ寂しかった、から、っあ゛っは、ぅ゛」
康「あれ、玩具なんて持っとったっけ」
舘「う゛っ、ぁっい、んっ、買っ、た」
元々舘さんも俺も、男の人が好きってわけやなかった。だから、俺とするまでココは使ったこと無かったらしい舘さんが、今や寂しさを埋めるために玩具に手出しとるって。
やばい、理性切れそう。でも俺がわざと寂しくさせたんやし、優しくせんと。
抜き差ししていた指を途中で折り曲げると、舘さんは背中を浮かせて甘ったるく悦がった。
かわいい。俺のせいで全部めちゃくちゃやな、舘さん。
舘「あ゛っは゛、やばっ、ぃ、んぅっ、っはぁ、だっ、あ゛っ」
康「かわええなぁ。舘さん、このまま中だけでイこか」
舘「っぐ、あっ、あっ、まっで、こ、っじ、っん゛ん゛っ、む゛い゛っ」
康「俺の指、ずっと欲しかったんやろ?せやったらイけるって」
舘「あっ、だっ、っう゛、あ゛、まっで、まで、い゛っちゃ゛っい゛く、ぅ〜〜っっ゛」
身体を丸めて果てた恋人のソレからは、白濁が出てこなかった。
指先が触れたあたたかな内壁は、何度もきゅうきゅうと締め付けては痙攣している。
濡れた唇から吐き出る息は熱に浮かされていて、色に塗れていた。白い肌がじんわりと赤く染まっている。
こんな身体になってまって、大変やなー。ほんまに、どうしようもなくかわええ。
舘「っはやく、っこい、よ、、こう、っじ」
康「分かっとるから。ちゃんと息、吐いてな」
ゴムを被せた自身のソレは痛々しいほどに膨張しきっていて、目の前の恋人に欲をあてられたのは明白だった。
煽られても懸命に理性の糸を繋ぎ止めて、優しく抱く。舘さんのこと傷つけたくないし、痛い思いもなるべくさせたくない。ちょっとだけ、いじめちゃったけど。
ゆっくりと熱を沈ませた後、馴染むまで腰の動きを止めて、俺は言わなければいけないことを伝えた。
康「舘さん、ほんまにごめん」
舘「んっ、っ?な、に、こうじ」
康「俺なぁ、舘さんに嫉妬してほしくて色々嘘ついとった」
舘「……ぁっ、ぇ?」
康「あの女優さんとふたりで飲みには行っとらん。あれ以外の飲み会は本当やったけど」
舘「んぅっ、っは、ほんと、に、行ってない?」
康「うん。ほんと」
舘「そう、っなら、よかった」
そう微笑んだ恋人の顔が愛おしくて、俺は思わずマットレスに沈んだその身体をやさしく抱きしめた。
こんなに大好きなのに、あんな哀しそうな顔をさせてしまった。
正直に言えばあの泣き顔で唆られる部分もあったけど、そんなの俺の勝手やし、舘さんが嬉しくないことなら、きっと俺は上手に喜べない。
康「泣かせてごめんなぁ、寂しかったやろ」
舘「別にいい……は違うけど、そんな、おこってないよ」
康「えぇ、なんで」
舘「わかんない、なんでだろ」
重なり合った肌があたたかくて、全身で幸せを感じた。
やがて俺の身体に巻き付いてきた彼の腕の微かに重みを感じて、この幸せが現実の本物であると理解させられる。
もうこれ以上、愛情を確かめる必要はないな。言わないだけでちゃんと寂しがってるし、嫉妬もしてるってちゃんと分かったし。これが舘さんの愛し方で、俺の愛し方はまた別やもんな。
康「おれ、やっぱちゃんと愛されとったな」
舘「ばか。あたりまえだろ」