💛side
俺はもともと勉強も球技も落ちこぼれで、学年でたった1人だけ選ばれて、高等部へ進むように言われた時も、周りのみんなにどうしてあんなやつが、と後ろ指を差されたのを忘れることができない。
目立つのは、この身長くらい。
頭は悪いし、口下手だし、得意なのは子供の頃から大好きだったダンスだけ。
ダンスは課外授業の必須科目だったから、それだけは得意だったけど、他はほとんど人並み以下。特にアクロバットが壊滅的にできない。
ふっか先輩にはいつも馬鹿にされてきた。
佐久間先輩は何も言わないけど、きっと呆れていて何も言わないんだろうなと思っている。
表面上2人とも仲良くはしてくれている。俺は人付き合いが上手い方じゃないから、それでもいつも心のどこかで寂しい思いをしていた。
全寮制で親元を離れたのもきつかった。
俺は家族が大好きだったから。寮の部屋には、家族写真を飾り、妹や弟から貰った手紙も引き出しに大切にしまってある。
💙「よし、もう一回だけやろう。次でダメだったら今日は終わり。でも照」
渡辺先輩は、その可愛らしい顔を少しキリッとさせて、両手で俺の顔を包んだ。
驚いて、涙が、止まった。
💙「この一回は、後悔のない一回にしよう。怪我なんか絶対にあたしがさせないから。信じて、思いっきり飛べ」
包まれた頬が熱い。
唾をごくりと呑み込む。
初めて女子とこんなに接近した。
俺の周りはいつも男の友達ばかり。
母や妹以外で、こんなに近くで話す初めての異性は、俺の予想に反して、すごく優しかった。
💛「俺、やります。翔子先輩、見ててください」
💙「照、お前ならできる!!!」
タンッ
俺は、初めて、空中で自分の身体が一回転するのを見た。
コメント
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やっぱいわなべ推すわ…✨✨✨