「わあ……!おとうさん、すごいっ!」
僕が五歳頃だった。
僕のお父さんは、物作りの仕事をしていた。
想像力が豊かで創造力もあった。
「お、ありがとう、ミア。」
お父さんは僕をミアと呼んで、頭を撫でてくれる。
お父さんが作っていたのは、船の物置だった。
その船はまるで海に浮かんでいるようなリアリティがあった。
それだけではない。
その船は、お父さんのオリジナリティもあった。
木の選び方、色の付け方、船の内装、そして細かな小道具など、空想にありそうな船がそのまま物置として出てきたかのような魅力があった。
「ぼくもつくりたいっ!」
僕がそういうとお父さんはにっこりと嬉しそうに笑って、僕の頭を撫でながら言う。
「ミアも作れるよ。ミアはお父さんみたいに、物を作るのが大好きだからね。」
二歳くらいから、積木とかで家を再現したり物作りをお父さんとしてきた僕だから、僕はその言葉を聞いて嬉しくなった。
「うん!」
お母さんは、家事をしながら僕らの様子を見て、微笑ましげに居た。
僕の家庭は、幸せだった。
でも______。
______それが”理由“となり、僕が”超能力者“に目覚めてしまったことで、この運命が変わるなんて、思った事はなかった……。
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僕の名前は、ミア・クロスロード。
十七歳の男の子として生きている。
両親は___居ない。
二人共、僕が幼い時に居なくなってしまった。
それには理由はある。
お父さんは、元々の特病。
お母さんは___”僕のせい“だった。
僕は普通の人間のように見えて、”超能力者“である。
僕が超能力者なのに対して、お父さんとお母さんは、普通の人間だった。
僕が、超能力を持ってしまったから、街の人達に、僕のお母さんは魔女なんじゃないかと、疑われてしまった事が真相だ。
超能力を持った僕は、周りの人達に笑われた。
”頭で創造したものを実現出来る“という、”創造の能力“だったからだ。
だが創造出来るものに限りはあった。
周りは普通の人間。
僕は、超能力を持った人間。
友達が居なかった。
そんな僕にとって、お母さんは生きがいだった。
いつもそばに居てくれた。
いつも慰めてくれた。
いつも隣で笑顔で居てくれた。
それなのに、街の人は恐れて、僕の最愛のお母さんを殺してしまった。
酷く悲しい後悔と怒りが僕を襲った。
だが僕は、お父さんとお母さん譲りの優しさがあったのか、街の人達に復讐とかそんな事は出来なかった。
やがて、僕は街から出た。
此処には居場所がない。
それが理由だった。
僕は家出をしたようなものだ。
今は、その最中であった。
ある程度のお金や食料はあるから、別にそんな困る事ではなかったが、野宿生活の続きだった。
暫くの間、途方に暮れていた。
「今日は空模様が悪いなぁ。」
僕はしょんぼりとしながら、曇った空を見る。
少し自然が目立つような道を歩いていると、小雨が降り出した。
「わ、降ってきた……。」
折り畳み傘を持っていたからそれを開いて歩き続ける。
僕の居場所なんて、あるのだろうか。
そんな事を思いながら歩いていると、ザーッと雨が強く降り出した。
「ええぇ!?嘘!?なんでーっ!!!」
僕は急いで走り出して、雨宿り出来る所を探した。
運が良い事に不自然な所に洞窟があったから、その中に入って雨宿りをした。
「もー……服が少し濡れちゃったよ……。」
折り畳み傘を畳んで、カバンにしまう。
暫く振り続ける雨を眺めていると、洞窟の奥の方から何か光が見えた。
「眩しっ……え、なにこれ?」
小さな光が洞窟の奥にあった。
僕は少し好奇心旺盛な所があるのか、気になって見てみる事にした。
光に向かって歩いていると、洞窟の岩にゴツン、と額をぶつけた。
「痛っ!」
光は自分と同じような大きさをしてるのに、その光の方に手を当てると、岩みたいな感覚があった。
下の方を見ると小さな道のような感じに繋がっていた。
「これ……しゃがまないとかな。」
僕はしゃがんでその道のようなところに入ってみた。
光は続いている。
気になりながら歩いていると、突然、ふわっ、と浮遊したような感覚になった。
「……へ?」
さっきまで洞窟だった所が急に不思議な空間に包まれた。
「ぇ、ちょ、待っ……!?」
そしてついに僕は。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ……っ!!!???」
落下した。
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「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!……んげぇ!?」
僕は勢いよく、地面に尻餅ついた。
「いったぁぁぁぁい!!!」
暫く痛みで身体が動けなかったが、ようやく立てるくらいになって、僕はその場で立ち上がった。
さっきとは違って快晴で心地が良い気候だった。
目の前には、緑の草原で広がっていた。
「うわぁ……!」
思わず目を奪ってしまった。
さっきまでの痛みが一気に和らいだ気がした。
緑の草原の向こうには、少し雰囲気が暗い森があった。
「凄い所に来たなぁ。さっきまで洞窟に居たのに。……でも何だったんだろう、あの空間。」
僕は呟きながら森の方へ歩いていった。
見る度暗い感じが伝わってくるが、僕は冒険みたいで内心、ワクワクしていた。
何があるんだろう。
そんな想いで森の中へ入っていった。
”危険、近付くな、人間は立ち入り禁止“という、看板を見ずに……。
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僕は森の中を歩いていた。
薄暗かったが、そこまで怖くなかった。
「思わず来ちゃったけど、大丈夫かな。」
だが、その思いは一瞬にして。
カザカザ。
その思いは、消えた。
「……!?」
草むらが揺れる音がした。
風はなかった。
不自然な揺れ方だった。
「あれ、もしかして……大丈夫じゃ……ない奴……?」
と言った瞬間、熊より大きな化け物が、咆哮をあげて現れた。
「ぎええええええええぇ!!!???」
喉から心臓が飛び出そうなくらい僕は驚いて、走り出した。
こんな生き物初めて見たんですけどーっ!!!
心の声が本当に声に出てしまうんじゃないか、と思いながら必死に走ってた。
化け物は追いかけてくる。
もう、速く逃げたいぃぃぃ……っ!!!
そう思った時、急に足がふわりと浮かび上がって、雷が生じた。
「へ?ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ……っ!!!!!!」
その瞬間、足はまるで雷のように速くなったのだった。
速すぎて息が出来なかった。
止まれえええええええぇぇぇ……っ!!!
と思った瞬間、急に足が止まり、僕は派手に転んだ。
「痛っ!!!」
それでも化け物は追いかけてきていたから僕は急いで走った。
だが運が悪い事に、すぐに行き止まりに来てしまった。
「ひぇ!!!嘘!行き止まり……!!!???」
すると後ろから鳴き声が聞こえた。
さっきの化け物の鳴き声だった。
あ、もう、死ぬのかな。
そんな事をふと思ってしまった。
振り返ると、化け物が此方に襲いかかろうとしていた。
僕は怖くなって腕を顔の前に動かした時。
僕の視界に”一人の男の子“が空を飛んで此方に来ているのが見えた。
コメント
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ちょ、ま、ミア君……過去が。 孤独なの、一番悲しいですよね 気になる内容でした! 続き、楽しみにしてます( *´꒳`* )