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▓▓ ▓【偽名:畠中 幸人】/2100年
テロから1週ほどがたった頃、僕らの高校の入学式が行われた。
これから僕こと〈梟〉は、高校一年生の畠中 幸人。という名の、勉強ができて軽く運動もできる男子生徒を演じる。
〈鴉〉は、高校一年生の畠中 日向。という名の、幸人の妹で、勉強ができる女子生徒を演じる。
〈百舌鳥〉は、高校一年生の畠中 優也。という名の幸人と日向の弟で、運動を得意としながら時々馬鹿っぽさが垣間見える男子生徒を演じる。
この3人とも養子であるため、顔は似ておらず性格も大きく違う。という設定でこれからの学校生活を送る。
僕の正確な妹である。畠中椿は、3年前まで僕らとともに学校生活を送っていた。が、3年前に事故で死亡している。
いろいろと調べたが、萩野さんが証拠隠滅をしたせいか、事件性は特に見つからなかった。
家から駅2つ離れた場所にある、この学校は幼稚園から大学まですべてそろっている学園である。金持ちたちは幼稚園や小学校から入らせたりする。
僕らは小学校4年生の時に編入し、小学校を卒業した時点で転校し東京に移った。そしてその後に椿がはねられて死亡。そして日向は組織をやめて、失踪。そして僕らは高校からこの学校に戻ってきたのである。たしかであるが、日向が失踪した期間はどっかのお嬢様学校に入っていたことになって埋められているのである。相変わらず、組織の力の強さには驚くばかりである。
入学式の看板を通った時点で小学校時代の友人に気づかれて、今度遊びに行く予定を勝手な約束をとりつけられた。
それから、日向は満点ではなくわざと1問間違えていたらしく、僕が新入生代表挨拶をしなくてはならなくなった。
「えーっと、ただいまご紹介にあずかりました、新入生を代表してご挨拶させていただきます、畠中です。 本日は、私たち新入生のために、このような素晴らしい入学式を挙行していただき、誠にありがとうございます。校長先生をはじめ諸先生方、来賓の皆様、そして温かく見守ってくださっている保護者の皆様に、新入生一同、心より感謝申し上げます。‥‥」
などとつらつらと言ってから席に戻ったが、はっきり言ってどうでもよすぎて、話した内容すら覚えていない。
新しい教室は、優也と日向と同じ1年C組だった。おそらく裏で萩野さんたちが介入していることだろう。
「剣道部に入らないか?」
部活紹介も自己紹介もまだだというのに、部活に勧誘するのをやめてほしい。そもそも、だれだよ。
「いえ、まだどこに入るかとか決めていなくて」
軽く頭をかきながら言うと、後ろから誰かに肩を組まれた。
「そうか、じゃぁ生徒会に入ろうか」
久しぶりに聞く軽く低めでありながら人懐っこさをにじませる声が聞こえる。
ひぇぇぇー風間先輩だぁぁ。彼は生徒会会長の風間先輩小学校の頃に生徒会に入った時にいろいろと教えてくれた先輩でもある。
「いえ、他の部活に入ろうかと‥‥それに、風間先輩は何でここにいるんですか?生徒会ですよね?片づけをしてください。」
「畠中君待っているからね」
さわやかに手を振って体育館へ向かう先輩に向かって、『ぜっったいに行きたくないです。』と今すぐ大声で言いたい。
「はい、このクラスの担任になりました飯田です。自己紹介は明日行います。はい、解散」
早いな。と心の中で思いながら。帰宅の準備をしたが、結構多くに人に話しかけられるため、そこまで早く帰れない。早く帰らないと風間先輩が校門の前で待ち伏せするからいやなんだよ。
「日向。帰ろ。」
「うん」
僕と日向は教室を出た。優也はもう他のクラスメイトと一緒に教室を出ているようだった。
下駄箱で靴を履いていた時に後ろからとてつもない嫌な予感がしたため僕は駅に向かって走り始めた。学校の並木道の途中で後ろを振り返ると風間先輩が追いかけてきていた。
ヒェッ。とても怖かったのでジョギング程の速度で走って逃げた。流石に全速力を出すと、世界記録を優に超えてしまうため、畠中幸人の状態ではジョギング程の速度までしか出さないように常日頃から心がけている。駅の階段を駆け降りついたホームでは目の前で電車のドアが閉まった。
——あぁ、最悪だなぁ。——
後ろからガシッと風間先輩につかまれた。この先輩は柔道をやっているそうで、体格は普通であるが結構力の使い方が上手であるため、少ない力で人を動かすのが得意なのである。まぁ、僕も柔道から始まりいろいろな格闘をやっているため、本気を出せば風間先輩など2秒もかからず殺せるが。
そんな風に引きずられながら駅から学校に連れ戻され、僕は生徒会室でガムテープで手を拘束された。
たぶん今の状態を訴えたら勝てると思う。まぁ、適当に何かいちゃもん付けて訴えても、裏の力が働いて、勝ててしまう気がするが。
「やぁ、遅れてすまないね。」
白衣姿のままの教師が中に入ってきた。そして、僕を見て何かを感じたような顔をした。
「あぁ、やっぱり畠中君か‥‥」
「そうです。畠中以外の適任者はそうそう、いないでしょう」
繊細そうな細いフレームの眼鏡。清潔感があるしわの無い白衣。長くもなく短くもなく、跳ねてない髪。ポケットにはいつもきちんと決められて入っているのだろう赤ペンと青ペンとホワイトボード専用のペン。相変わらず、見るからに几帳面そうな男性教師である。
「久しぶり。改めまして、この生徒会の顧問を務めている北上大輔です。」
すっと、北上先生は笑顔で手を出してきた。その手を握り返し、こちらも笑顔を向ける。
「お久しぶりです。生徒会に入る予定なのでよろしくお願いします。」
「よし、畠中。今の録音したからな。」
「学校内への録音することが可能な機器の持ち込みは禁止なはずでは?」
「生徒会の権力でもみつぶす」
「やばっ」
「風間。次からやるなよ」
きちんと北上先生が釘をさす。しかし、今回の事はきちんと見逃されている。
「そういえば、日向君は生徒会に入る気はなさそうかい?」
「えぇ、生徒会にはもうこりごりとか言ってましたから」
「そうか‥‥」
地味に残念そうな顔をしているが、小学校時代にこの人が散々仕事の量を増やしていたが原因だろう。できれば僕も入りたくなかった。
「よし、生徒会の仕事を片付けようか」
「あれ?今日何かありましたっけ?」
「入学式の片づけ。君を追いかけるために途中でほっぽって来た。」
「働け」
北上先生があきれたような目で風間先輩を見た。
風間先輩は何も言わず、僕の手のガムテープを外し、通学カバンの持ち手をつかみ、体育館の方へ行った。
体育館の片づけ状況はというと、半分も終わっていない状態だった。そんな中、3人が片づけをしていた。その3人は、小学校の時の生徒会のメンバーと変わっていなかった。
「あっ。幸人じゃん」
その言葉で残りの2人が反応する。
「かーざーまーせーんーぱーい。勝手にどこかに行かないでーくださーい。」
「はいはい。さぁせんでしたー。でも、ほら、それ以上の収穫があったじゃん。」
「ありましたけどー。次やったらー俺っちが先輩の隠している秘密をーお昼にー放送で流しますからねー」
田井中先輩がそういった。
「大丈夫。そしたらお前を生徒会長の権限で退学にするから」
「職権乱用は禁止ですよ。もし、それをやるなら卒業式で風間先輩が生徒会長としての立場を返還した後に先輩の秘密を暴露したらどうですか。彼の生徒会長として退学させる権利はなくなっていますから問題ないですよ。」
田井中先輩に軽くアドバイスしてみた。
「幸人。お前天才か?」
田井中先輩はそう言ってから、ニヤリと笑った。
「畠中君。考えついても言うな。こいつならやりかねないから。」
「善処します。そして片付けましょう。もうすぐ、昼飯の時間になりますよ。」
「はい」
30分ほどたって、やっと入学式の片付けが終わった。
「飯どーする?各自にするか、みんなでどこか食べに行くか」
「ユッキーの生徒会入会祝いでもやる?」
「どちらでもいいです。」
「よし。カッザーの金で飯食いに行こー」
田井中先輩がそういった。
「自腹に決まってるじゃないですか。風間先輩の金で飯食いに行ったら‥‥」
生徒会メンバーの風間先輩を除く全員が沈黙をすることとなってしまった。理由は決まっている。昔、風間先輩の驕りで食事に行った時、食った分の働きをしろとか言って、超重労働をさせられたことがあった。
そのせいで、次の日に生徒会の僕と風間先輩を除いては、全員筋肉痛で休まなければならなくなったことがあったのである。
「よし。自腹でいいです」
通常の語尾を忘れて田井中先輩はそういった。
その言葉に、風間先輩だけが納得がいかない顔をしていた。
「じゃぁ、家族に連絡しますね」
そう言って、胸ポケットからスマホを取り出し、日向に電話をかけた。
「もしもし」
『幸人。遅い。昼食作る人いないからお腹すいたんだけど。』
「優也は?」
『ほかの人とカラオケ行ってた』
「僕も、生徒会の人と飯食ってから帰るから。」
『どこに行くの?』
「わからん。わかったら伝えるわ」
電話を切った。
「なに?日向ちゃんが来るの?」
水城先輩が下からのぞき込んで聞いてきた。
「人の電話の内容は聞かない方が‥‥」
「みんなー。日向ちゃんがくるって。やったね」
「おい。人の話は最後まで聞け‥‥聞いてください。」
「あそこの焼き肉屋でいいかな?」
風間先輩が、スマホをいじりながらそう言った。それとほぼ同時に、スマホで日向に電話をかけた。
『もしもし』
「いつもの焼き肉屋」
『やっぱりあそこか。毎回思うけど、行く場所のバリエーション少なくない?』
「同感」
ピッと日向が電話を切った。
「伝えておきましたよ。」
「じゃぁ行きますか」
全員が荷物をまとめて外に出ると、3年前と変わらない風間先輩の家のでかい高級外車が外で待っていた。風間先輩はいつもこの車に乗って登校しているのである。
この学校にいる過半数の人の人たちがこのようなレベルの車を持っているため、毎日その生徒たちの車を学校の前に止められると結構邪魔なので、学校の前に車を止めていいのは生徒会長権限なのである。
当たり前のように風間先輩の家の車に乗り込みいつも通りの焼き肉屋に行く。
昼間からの焼き肉はちょっとばかしきついが、我慢しよう。
店内はいつも通りガラリと空いていた。注文をしてから、すぐに水が運んでこられる。
「じゃぁ、自己紹介お願いします。」
「要りますか?全員名前知ってるし。」
風間先輩が彼にとっての田井中先輩から冷静に突っ込まれる。
「はーい、じゃぁ、俺から年齢順でいいか。風間 辰巳。高3で現生徒会長だ。好きなことは食事とナンパだ。生徒会室にいかがわしいものがあったら没収する。そして俺の私物にする。」
「うぇーい。しょっぱなから最悪すぎる自己紹介ありがとーございまーす。」
付け足す点があるとすれば、風間辰巳はヤクザの家系の一族である。そして水城先輩に優しい。そして、今の趣味は大喜利っぽくするタイプの人なので、これは定番の冗句である。
「あー、次私ね。賀川 水城。同じにされたくないけど、風間と同じ高3の副会長ね。趣味は、読書と仕事。よろしく」
付け足す点があるとすれば、石油から水素に変わった第2次エネルギー革命で最も財を成した財閥の家系である。そして周りから風間先輩と付き合っているという噂があるが、それを否定している。
「次俺っちね、田井中 航。高2だよー。趣味は、朝寝 昼寝 夜寝と盗撮。特にユッキーの盗撮はばれるかばれないかがドキドキするから楽しいんだよー。」
「ありがとう。盗撮されてるってわかった瞬間に、君の今持ってる一眼レフ壊すね。」
付け足す点があるとしたら、彼の母親の家は、茶道の家系なので、親族からしゃべり方で嫌われている。そして、彼の父を屋は現首相である田井中 啓介である。そしてこの自己紹介の趣味などは、もちろん冗句だ。
「榎木園 飛鳥です。高校2年生です。趣味は勉強と睡眠と‥‥それだけです。」
付け足す点があるとすれば、この学校の理事長が彼女の父親である。そして極道の家系だが、母親が現当主の次女であり問題行動が多すぎて嫌われているが、孫の飛鳥先輩はとても気に入られている。
「僕ですね。畠中 幸人。高1です。今生徒会に入らされる予定です。趣味は読書と映画を見ることです。」
「はい。じゃぁ、新しい生徒会メンバーが増えたという事で、カンパーイ。」
「「「カンパーイ」」」
少しだけ水の入ったコップを持ち上げてぶつける。
「というか、今年あと高1の女子が1人入らないといけませんよ。」
「あー、それはね。特別措置でなし。」
「はぁ?」
「だから、君が生徒会に入った場合、日向君しか入らないようにしている。」
「いや、日向は生徒会に入りませんよ」
「うん。そうだよ。日向君が入らなかったら空席のまま。だから生徒会は5人だけ。」
「なんでですか?」
「新人研修めんどいから」
「「「はぁー」」」
風間先輩を除く全員がため息をつく。流石暴君。問題児。
「おい。なぜみんなしてため息をつく?」
「自分の胸に手を当てて考えなさいよ。」
水城先輩があきれた目で風間先輩を見た。
風間先輩は、胸に手を当てて、それから胸の辺りを見た。
「いや、俺は筋トレとかしてないから胸板はないけどさ。俺に胸の大きさを求めるなよ。」
「きっも。セクハラじゃん」
「幸人。心の声が駄々洩れだよ。確かにそう思うけどさ。」
水城先輩に止められた。流石は生徒会のブレーキ。
「文化祭、体育祭、風紀、庶務、部活の6つから1つ。それと高1と高2は会計、書記、広報、からも1つ。どれやりたい?」
コメント
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第10話、読み終えたよ〜。畠中三兄妹それぞれの「演じる」設定がしっかり引き継がれてて、潜入任務の緊張感が日常に溶け込んでる感じが好き。風間先輩のしつこさと生徒会の温かさのギャップが絶妙で、でも裏で芋づる式に絡んでくる組織の影がちょっと怖い…。北上先生の登場でまた物語が動き出した気がする。次が気になる!