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第十三話:第一号被験者・白銀美咲の「10分間」
「……本気なの? タカシくん」
放課後、人払いを済ませた部室。
白銀美咲は、紫色に揺らめく「人間化試薬」の試験管を握りしめ、上目遣いに俺を見つめていた。
「ああ。お前たちの『素の気持ち』を受け止めるって決めたんだ。……まずは白銀、お前からだ」
「……ふふ、後悔しないでね」
白銀さんは意を決すると、一気に薬を飲み干した。
直後、眩い光とともに背中の翼と角がすっと消えていく。人を狂わせる妖艶な魔力も、人を引きつける甘い香気も完全に打ち消され——そこに残ったのは、ただの「華奢な男子高校生(俺)と同い年の女の子」だった。
「……っ」
白銀さんは自分の手をじっと見つめ、ゆっくりと眼鏡を外した。
素顔になった彼女の頬は、夕日のせいだけではない鮮烈な朱色に染まっている。
「……すごいわね。サキュバスの本能が……欲望が全部消えてる。……なのに」
彼女はとてとてとぎこちない足取りで歩み寄ると、俺の制服の裾をキュッと小さく掴んだ。
魅了の力がないはずなのに、その震える指先と、潤んだ目元から目が離せない。
「なのに……胸が、苦しいくらいにドキドキするの。……タカシくんのことが好きっていう気持ちだけが、残ってる……」
「白銀……」
「10分しかないんでしょう……? だったら……」
白銀さんは背伸びをし、俺の耳元で小さく、消え入りそうな声で囁いた。
「サキュバスとしてじゃなく……『白銀美咲』としての私の初めて……受け取って、タカシくん」
瞳を閉じ、小さく震える彼女の唇が、俺の顔へと近づいてくる。
魅了に頼らない、純度100%の「一人の女の子の初恋」が、俺の心を強く揺さぶった。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第13話、すごく良かった……。白銀さんが人間化試薬を飲んで、サキュバスの力が全部消えたのに「好きっていう気持ちだけが残ってる」って言うシーン、胸がぎゅってなったよ。純度100%の「一人の女の子の初恋」って言葉が刺さりすぎて……やっぱり呪いとか種族とかじゃなくて、素の気持ちって一番重いし、美しいんだね。10分間の切なさがたまらない🌙
488
#ギャグ
梨本和広
6,467
桜咲かな
299
#学園