謙太は何も知らせず来たけど、叔父さんと美濃里さんがいた時点で分かったみたい。
そして覚悟して告白してくれた。
自分は子供ができない体質であることと、その受診と治療のために夫婦の共同貯金からお金を出してこっそり病院に通っていたこと。
あ、今回は色々バタバタしててお金を抜き出すことはしてなかったけど変な薬を渡すような知り合いには頼まずちゃんとした不妊治療クリニックに通っていたらしい。
わずかな望みだけど可能性はあると言われ、これからの治療をどうするか悩んでいたらしい。
私は謙太の手を握って
「私も病院に行く」
と言うと梨花ちゃんには心配と心労をかけたくなかった、と泣き出した。
私は首を横に振った。
すると叔父さんが
「今は子供よりも……2人には適切な治療が他にもあるはずだ」
と告げる。それは美濃里さんにも、と。
「精神科の方にカウンセリングを受けたほうがいい。子供はできても……美濃里ちゃんはもういるけど……君たちは親になるんだ。親が不安定なままで、過去を癒されていない状態で子育てはできるのだろうか。心理カウンセラーを探そう」
……確かに。
私はあの親しか知らない。子供が産まれても私がされたような方法でしか子育てができないかもしれない。
謙太さんも? 美濃里さんは泣きながら頷いた。
それと他には隠していることはないかと聞くとお母さんのことも話してくれてそれに関しては叔父さんも話してくれて。
「梨花ちゃんも同じ悩みを抱えてるんだと。理解をしてくれると思った」
と。
……ケースは違えど……謙太も同じ悩みを抱えていたんだと思うと私はもっと話を聞きたいと思った。
「今話をしてもいいと思うがカウンセラーさんを挟むと良いのでは」
と叔父さんが話す。確かにそうよね。傷の舐め合いになってしまう。どうやらそれを分かってて叔父さんは前から謙太さんに私の話だけを聞いていて真面目な彼は実行していたようだ。
他には? と叔父さんが言うと謙太は
「鷲見さんという女性からアプローチされていた。でもぼくは断り続けていたけど彼女は妻子ある男性と交際していたのに捨てられて……仕事ができる子なのにそれで自暴自棄になってたから相談に乗っていた。2人きりの時もあったけど正真正銘、何も関係はない」
と私の目をしっかり見ていってくれた。
「その、鷲見さんのお相手の既婚者は誰か分かっているの?」
と聞くと
「……誰にも言わない?」
「言わないよ」
「君の会社の鈴原専務だ」
……やっぱりあの男だったのか。猪狩課長をもはめたあの男。
「最初鷲見さんも話してくれなかったけど何度か聞いて話してくれた。君の会社のお偉いさんだったとは。何か揺さぶってみることはできないかと思っているけど」
と謙太が言うのだが叔父が止めた。
「謙太、変なことに首を突っ込むんでない。今は自分の事を大事にしなさい。誰にでも優しくていい顔をすると自滅する」
「でも……」
叔父さんが謙太をじっと見ると謙太はわかったよ……と苦笑いした。
人が好過ぎるのよ。謙太。
美濃里さんはずっと泣いていた。謙太は目に涙を溜め、真っ赤になっている。我慢しなくていいのよ、謙太。
これから少しずつ、少しずつ……あなたの事も知っていく。
もうあなたを死なせたりしない。