この作品はいかがでしたか?
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「あら?帰ってきたのね。今日はちょっと長くなかったかしら?」
そう問いかけた相手は満足そうな笑顔を浮かべるラズリであった
「エヘヘ。今日サファイアおねーちゃんを倒したの!初めてだよ初めて!!」
「それは良かったじゃない。ほか2人は?」
「あとから来るよー」
二人の会話を他所にラピスはとある本に書いてある魔法を覚える手順を踏んで試している
「……。こうやって、こう?」
「違うみたいね?じゃあこうじゃない?」
「あれー?ラピスとダイヤねぇなにヘンテコな踊りしてるの?」
「踊ってない」
「魔法の唱え方を試行錯誤してるのよ」
「魔法なんかなくてもスキルで何とかならない?」
「使える技は増やした方が臨機応変に対応出来る」
「そんなもんなのかネ〜?」
「あ!分かったわよラピス!この魔法使う前に私たち自身に魔力という力が必要みたい!」
「それはどうやって手に入れるの?」
「えっと待ってね〜参照するページは…」
「楽しそうだなラピス……」
「久しぶりに見たかもこんな楽しそうなラピスの笑顔」
笑うラピスを見てラズリは過去を思い出す
ラピスとラズリは一般的な家系の元に生まれ落ちた二人は何不自由なく楽しんで生活を送っていたが、ある日の夜のこと両親の部屋からなにかもの音が聞こえ、目を覚ましたラピスとラズリは両親の元に向かう。部屋のドアが少し空いておりその隙間から灯りがこぼれ両親のことを思う心と、もしかするとなにか不吉なことがあるかもしれないという不安。その2つが渦巻くがやはり両親の安否を確認するため恐る恐るドアの隙間から部屋を除く。
するとそこには見知らぬ人が立っていた。
その何者かの前には両親が倒れている。何故かベッドからは深紅の液体がシーツを染め、ポタリポタリとその液が垂れていた。その液体は両親のものだと直ぐに理解した二人は即座にその部屋を離れ自分の部屋にと駆け込む。
ラピスはあの光景を見てから、一言も喋らなかった。ただ震え、ラズリにずっと寄り添っていた。
私はあの光景を知っている。以前夢で見たものにそっくりだった。いわゆる予知夢と言われるものだ。しかし、そんな不吉な夢を打ち明けることなどできず心の内に潜めた結果その予知夢は最悪の結果を招いてしまった。
現状両親が死んでしまったのなら次の標的は恐らく自分たちであるのは目に見えてる。だからこそラズリはラピスを守ろうと誓う。予知夢を見たのに打ち明けず、最悪の結果を招いたという責任感から幼いながらにして自分の身を呈してでもラピスを守ろうと誓ったのだ。
両親が殺され、部屋に隠れて翌日を待つ。朝を迎えられると、ラピスは直ぐに両親の元に駆け寄る。もう、息をしてないことはラピスも承知の上、それでも自分の親が殺されたという事実が受け入れられなく、その日のほとんどは父と母の近くで泣いてただ「パパ……ママ…」と名を呼んでいた。
その後、私が近所の人に報告し父と母の埋葬をしてもらい、私ら姉妹は親戚に引き取られるが生活に馴染めず、その上暴言暴力を幾度となく行われた。
それに限界を感じた私達は、その家を出て廃墟と化した自分の家にと住むことにした。
それから少し時間が経ち、知らない子が何名かやってきた。みんなワケあってこの家に訪れたと思われる。この家にはそんな哀しき運命を背負う子が訪れる不思議な縁のようなものがあるのだろうか?
やってきた者たちはやはりどこか元気が無い。
言い換えるのなら生気に満ちていないが適切だろう
しかし、彼女らに何があったのかを聞く気力もなくただ暗い部屋の中でうずくまって時が経つのを待つ
それから何日か経過した。私たちのお腹は限界を迎えていた。食料がなく、まともな思考を持ちえない。だんだんと視界がぼやけていくのがわかる。
幼いながらにしてこれが死ぬということなのか、と悟りを開いた。別に死ぬこと自体は怖くはなかった。だが、悔いはある。ラピスの心を壊した何者かを捕まえ殺したい。私にとってラピスは残されたたった1人の大切な家族なのだから。その家族を苦しめたヤツを世に解き放ったままなど許されてはならない。けれども、それはもう叶うことは無い。
意識が朦朧としてきて、眼が閉じようとしているのだ。何とか抵抗するも限界を迎え私は意識を失った
………………次に目を覚ますとそこには全く面識のない女の子が心配そうに私の顔を眺めていた。どうやら空腹のあまりに気を失ったみたいだ。
「あなた大丈夫?妹さんがとても心配してたよ」
そう話しかけてくれたのが今のダイヤお姉ちゃんだ
「ちょっとラズリ話聞いてる?」
「ん?あぁ、ごめんダイヤねぇボーっとしてた」
「じゃあもっかい話すからよく聞いてね」
「ラピスがついさっき魔法を覚えたの。で、その魔法をどうしても試したいって言うから誰かを同伴させて外で少しやってきてもいいって許可を出したのよ」
「ハイハイそれで?」
「その同伴はラズリに任せるってことと、ついでに周辺のパトロールもお願いしたいの」
「私らがパトロールなんてしてもいいの?」
「1人でも充分戦える力を得たからね。でも、ほんとに危ないと思ったらすぐ逃げること。わかった?」
「そうそうないと思うけどわかったよ」
「なら、外でもうラピスは待ってるわよ」
「それじゃちょっとブラブラしてくる」
「いやー、久しぶりの自由行動だなぁ」
「なんで……ラズリ………」
「それはダイヤねぇに文句言ってくれ」
「まぁ……いいや」
「私さっき魔法覚えたの」
「ダイヤねぇからその辺聞いたよ。魔法の威力試したいんでしょ?」
「うん…」
「たまにはラピスも………暴れたい」
「あ〜らら……思想がだいぶ危ないお人で…」
「私はラズリと違って……アクティブじゃない」
「だから動きたい欲は……人一倍溜まってる」
「なんにせよ付き合ってやるから安心しろって」
それから少し歩いて下級の魔物が蔓延っている場所までやってきた。
「この辺の奴らならちょうど良さげじゃないか?」
「まだ覚えたてっていうのもあって威力も出ないだろ?」
「わかんない……もしかすると私天才だから……」
「ありえない話をすんなっての…」
「とりあえずさっき覚えた魔法使う……」
右手を前に出し人差し指だけ突き出し、少し息を吸って魔法を唱える
「……水刃」
スっと息を吐くように唱えると構えた指先から水でできた刃がいくつか飛んでいきそのうちのひとつは獣の首をあっさりと切り落としていった
「おいおいまじかよ……」
「なかなかえげつない魔法じゃんそれ」
「何も無いところから水を作り出せた…」
「そのうえ刃になって……」
ラズリの少し引き気味の声は届くことはなく、ただこの一連の出来事を自分が起こしたと確認すると少しフフッと笑った。
「獣殺して笑うはサイコだな」
「別にそんなのじゃない……」
「これで私もダイヤねぇの手伝いができる……」
「そう思ったから……笑っただけ」
「別に魔法なくても私らには固有の……」
2人が話している時、先程まで獣達がいたところにあるひとりの人物が現れ、彼女らに向けてこう話す
「随分とでかくなったなぁ?」
「!?」
「私達に……何か?」
「おいおい忘れちまったのかよ俺の事」
「私らの記憶違いでなければ初対面のはずだ」
「なら、簡単に思い出させてやるよ」
「お前らの両親は刺殺だよなぁ?」
「な、何故それを!?」
「答えは簡単。犯人が俺だからだよ」
そういいマントを取ると確かに見覚えのあるナイフを持っていた。
コイツが私達の親を殺した犯人……
仇が目の前に現れ怒りと憎しみで煮えたぎる…
だが反対にラピスは硬直し小刻みに震えていた。
ラズリ視点ではそれは怯えているように見えた
だが、ラズリは忘れているがラピスは覚えている。
ラズリ以上にラピスはこの男に対して怒り憎しみそれらを含む負の感情が溢れかえっていた。
「そこの震えてるガキ」
「俺はおめぇのことをぜってぇ忘れないって決めててな…」
「お前に付けられたこの傷がお前のことを思い出す度に痛むんだよ……」
そう言って右腕をめくりその傷を見せる。それは幼い子が爪で引っ掻いたような、けれども傷の付き方はそれこそ幼い子が付けられるほど深い傷ではない
痕跡自体パッと見は可愛いものに見えるが細部をよく見ると明らかに一生モノの傷をおってる箇所がいくつか見える。その傷を見たラピスの脳裏にラズリが記憶の引き出しに鍵をかけた記憶が蘇る
時は両親が殺された現場を目撃したころ…
「あ…………ぱ…ぱ?………ま………ま…………?」
「なんで……なんでそんなところで………寝てるの?」
「なにやってんのよ!逃げないと私達まで殺されちゃうわよ!さぁ早く!!」
ラズリは身の危険を感じラピスを連れて自室に連れ帰ろうとする。
「嫌だ…………」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…」
「ママ!!パパ!!起きてよ!!!」
「あっ!?行くなって※※※!」
当時のラズリの話を聞くまもなくラピスは部屋に駆け込む
「んぁ?こいつら子供産んでたのか…」
「なんだぁ?どーちまちたかぁ?」
小馬鹿にするような話し方に神経を逆撫でする薄ら寒い笑いその全てがラピスは憎かった。
「お前が……ママを………パパを……殺したんだろ!!」
「はぁ……めんどくせぇガキだな」
「安心しろって…直ぐにお前も会えるだろうよ」
「もちろん……あの世でなぁ!?」
「※※※!逃げて!!」
少し遅れて入ったラズリはなんとかラピスを逃がそうと声をかけるが、それよりも早く男のナイフが少女に向け落とされる。しかし、それは少女に届くことは無かった。正確にはそのナイフは少女の体を指すことは無かったのだ。
寸前のところで男の手を掴みナイフを止めていた。あろうことか大の大人に少女が力で勝ったのだ。
「!?な、なんだよこの力!?」
「ガキにこんな力がある訳……うがぁぁぁ!!?」
「うっ……腕が……腕がァァァ!!?」
抑えるその力が強く持っていたナイフを落とす
「お前なんか……お前なんかを許してたまるもんか」
ギチギチと抑える力は強くなり遂には爪も入れる。その勢いのまま男の腕を引きちぎるかの如く力は入れられていく
「ガキが……ガキが調子に乗るなぁァ!!」
掴まれた腕を上げ少女ごと床に叩きつける。流石に耐えきれず抑えていた手を離し少女は気を失ってしまった。
「はぁ……はぁ………」
「くっ…この腕じゃあ捕まえることは………」
「※※※!大丈夫!?私が担いで逃げるから!」
騒ぎが大きくなることを恐れた男は子供らを捕まえることはせず直ぐにその場を後にした。
その後ラピスとラズリは自室に戻り朝を待つこととなった。
「あの時の男……。私が裁けなかった男。なら、もう一度……今回こそ確実に裁く………」
(あの空気感は……)
「ラピス!そのスキルは止めな!!それだけはダイヤねぇにむやみやたらに使うなって言われてるでしょ!?まだ、貴女じゃ制御出来ないから……」
「【鬼面 憤怒の仮面】」
その瞬間この場の空気が一気に変わった。
冷たく…そして重い……。心做しか息苦しいと感じるほどに……それはここにいてはいけないと生物の持つ野生の勘が、生命の危機を察知しているか如く
「俺だってそのくらい怒れるぜ?」
「なんせ、お前があんなことするから俺の人生はすべて狂っていったんだ……」
「あの時お前らが居なければ今頃俺はこんな生活を送る必要はなかったのによぉぉ!!」
「ゴメン……ナサイ………ラズリ。マタ…………メイワク…………カケチャウネ」
「ラピス……」
怒れるその顔からは想像のできない綺麗な雫が一滴頬を伝って落ちる。それは、地面に落ちると波紋を作るようにまるく広がり、地面を濡らした
「さぁ!互いの復讐劇と行こうじゃねぇか!」
「オマエニ………イキルナンテ……………シカクハナイ」
「ワタシガ………オマエカラ……【イキル】ヲ………ウバウ」
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