テラーノベル
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それでも、彼は罰せられた。彼女の代わりに、誰かが動いてくれた。
一度だけ現れた女性検察官が、彼を裁きの場に連れて行ってくれたという。
それを警察官から聞かされたとき、彼女は何も感じなかった。
「遅すぎた」とも、「ありがとう」とも思えなかった。
誰かが何をしても、彼女の時間は戻らなかったから。
すでに過ぎた痛みの上に、判決の音だけが乾いた音で落ちた。
ニュースに載る彼の名前を見ても、胸は動かなかった。
正しさはいつだって、遅れてやってくる。
そして、その頃にはもう、誰も正されたいとは思っていない。
だから彼女は、ただ静かに画面を閉じた。
一切の音を立てずに。
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