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都会の変電所の地下。鋼谷は血まみれになりながらも必死に立ち上がろうとするが、足元が崩れるような感覚が体を襲った。目の前には霊一が悠然と立ち、勝利の笑みを浮かべていた。
「どうした?これが、お前の全力か?」
鋼谷は荒い息をつきながら、霊一を睨みつける。しかし、全身が酷く痛み、意識が途切れそうになる。彼の中で「異能を持たずに挑む」ことがいかに無謀であるかが、徐々に現実味を帯びてきていた。これまでに様々な強敵と戦い、どんなに苦しくても勝ち続けてきた彼にとって、今感じている感覚は初めてのものだった。
「くそ……まだ、終わっていない……!」
鋼谷は倒れたまま必死に拳を握りしめ、再び立ち上がろうとする。だが、その力はもはや残されていなかった。
霊一は嘲笑するように近づき、足元に倒れ込む鋼谷を見下ろす。その目には哀れみさえなく、冷たい無情さだけが浮かんでいた。
「お前は異能を持たずしてここまで来た。その根性は認めてやる。だが、異能の世界では力が全てだ。お前のような凡人が異能に立ち向かうなど、無謀の極みだ」
霊一は手をゆっくりと上げ、その爪が異様な光を放つ。そして、そのまま鋼谷にとどめを刺そうとする。
鋼谷はその瞬間、人生初めての敗北を実感した。これまでの努力も、戦いも、無力であることを目の当たりにして心が折れそうになる。しかし、彼の中にはまだ消えない何かがあった。
「負けたって…俺は、俺は、諦めねえ……!」
最後の力を振り絞り、鋼谷は立ち上がろうとするが、再び膝が崩れる。霊一は微笑を浮かべ、容赦なく鋼谷の体に強烈な一撃を与える。鋼谷の視界は暗転し、意識が遠のいていく。
気がつくと、鋼谷は静かな部屋の中で目を覚ました。身体中が激しく痛み、動くことすらままならない。初めての敗北の感覚が鋼谷の心に重くのしかかっていた。何もできなかった無力感、そして自分がいかに無謀だったかを痛感する。
「…俺は、ここで終わるのか…?」
その問いが鋼谷の胸に刺さり、彼は次第に自己の弱さを認めざるを得なくなる。しかし、この経験が彼に新たな覚悟を芽生えさせ、今後の戦いへの決意をより強固なものへと変えていく。